「A2B」で通信を簡素化・低コスト化
この記事ではアナログ・デバイセズがリリースした新トランシーバー「A2B」を紹介します。
A2Bとは「オートモーティブ・オーディオ・バス」の略称で、その名の通り、電装化が進む車載インフォテインメントのオーディオ用ハーネスの軽量化(低燃費化)・低コスト化を目的に開発された新技術です。米フォード・モーター社のほかにも、日米欧の複数メーカーで量産車への採用が予定されており、近い将来カーオーディオ業界の標準的な通信バスになると期待が寄せられています。
今回は「A2B」の持つ3つの大きな特長と、電子機器・産業機器において期待できるメリットを紹介します。
1. 50Mbps通信、50μsecの低遅延でI2C/I2S信号を伝送
2. 安価なUTPで最大40mのデータ通信を実現
3. 簡素な設計システム
1. 50Mbps通信、50μsecの低遅延でI2C/I2S信号を伝送
A2Bの大きな特徴として、シンプルなケーブルでデータレート50Mbpsの通信が可能なことに加え、スレーブ側のソフトウェアスタック介在が不要なため、デイジーチェーン接続した場合でもノード間全体で50μsecの遅延しか発生しない点があげられます。
多様な既存通信規格の中で、I2Cは下図のポジションに位置しますが、A2Bを使用することでI2Cのユーザビリティーを拡張し、またEthernetの補完的な役割を果たします。
2. 安価なUTPで最大40mのデータ通信を実現
通信に必要なケーブルは一対のUTP(アンシールド・ツイスト・ペア)のみです。特別なケーブルは必要ないので、基板間の配線削減やシステムの簡素化・低コスト化が期待できます。
通信距離はノード間で最大15m、ノードをつなぎ合わせることで、システム最大40mの通信が可能です。デバイスはマスター/スレーブごとに分かれており、接続数は最大で10チャネルです。
A2B型番 | マスター AD2428 |
スレーブ AD2427 |
末端専用スレーブ AD2426 |
低コストマスター AD2429 |
末端専用低コストスレーブ AD2420 |
---|---|---|---|---|---|
TRX機能ブロック | A + B | A + B | A | B | A |
I2S/TDM対応 | 〇 | × | 〇 | 〇 | × |
PDMマイク入力数 | 4 | 4 | 4 | 4 | 2 |
スレーブ最大接続数 | 10 | × | × | 2 | × |
ノード間最大ケーブル長 | 15m | 15m | 15m | 5m |
5m |
A2B型番ごとの機能比較表
3. 簡素な設計システム
A2Bは、各ノードのソフトウェアスタックや格納メモリーが不要で、接続するプロセッサー側の処理負担がかからないため、設計を最大限簡素化しながらI2C、I2Sの通信を拡張することができます。
物理層はノイズに強いLVDS(小振幅差動信号)であり、信号の他にもクロックや+5V/300mAのDC電圧を供給できるため、センサーやマイクのバスパワー給電が可能です。
デバイスの設定も、SigmaStudio®グラフィカル・ソフトウェア・ツールを使用して視覚的に作業することができます。
A2B に関するケーブル・コネクターの選定や、設計に関する質問は、こちらからお気軽にお問い合わせください。
性能・EMC評価用の基板もご用意
スピーディーな性能評価に移れるよう、Analog Devices社は複数の評価基板を用意しています。
A2B評価基板は、以下に示す4種類が基本となります。
また、マクニカでは、A2Bコネクター部分をRosenberger社製に交換し、EMC検証に特化された基板も用意しておりますので、ページ下部のお問い合わせボタンからお気軽にご相談ください。
Order Number | EVAL-AD2428WD1BZ | EVAL-AD2428WB1BZ | EVAL-AD2428WC1BZ | EVAL-AD2428WG1BZ |
---|---|---|---|---|
Master/Slave | Master | Slave Only | Slave Only | Slave Only |
電源 | Local Powered | PPS: Phantom Powered Slave | PPS: Phantom Powered Slave | LPS: Phantom Powered Slave |
Audio in/out | 3.5mm mini jack and Optical-SPDIF | 3.5mm mini jack | - none - | 3.5mm mini jack |
PDM mic | 2 -ch | 2 -ch | 4 -ch | - none - |
Photo-image |
A2B評価ボード比較表
実際の大きさを比較すると以下の通りとなります。
A2Bデモ動画はこちら
当デモではスピーカー付きマスターボードに、センサーや操作スティックなどの機能が備わったスレーブボードをUTPケーブルで接続し、マスターボードの電源のみで音声やセンサーを伝送しています。(途中から音がでますのでご注意ください。)
A2B マスター用デバイス "AD2428" の主な機能
A2B バス機能
・ライン・トポロジー
- 単一マスタ、複数スレーブ
- ノード間は最大15m、ケーブル全長は最大40m
・遠距離通信
- 同期データ
・マルチチャンネルI2S/TDM - I2S/TDM
・クロック同期、すべてのノードで位相をアライン
・低遅延スレーブ間通信
- 制御およびステータス情報I2C - I2C
- 遠距離GPIO
・バス電源またはローカル電源スレーブ・ノード
・SigmaStudio®グラフィカル・ソフトウェア・ツールを使用して設定可能
A2B トランシーバー機能
・A2Bバス・マスター(最大10個のスレーブをサポート)またはスレーブとして設定可能
・I2Cインターフェース
・8ビット~32ビット・マルチチャンネルI2S/TDMインターフェース
- プログラマブルI2S/TDMデータ・レート
- 最大32個のアップストリームおよび32個のダウンストリーム・チャンネル
・PDMインターフェース
- 4個の高ダイナミック・レンジ・マイクロフォン入力
- プログラマブル・サンプリング・レート
- 24ビットPCM復調を実行
・最大4個のPDMマイクロフォンを使用したノードでのI2Sデータの受信をサポート
・トランシーバーごとに一意のIDレジスタ
・クロスオーバーまたは直線ケーブルのサポート
・EMC性能を最適化するプログラマブル設定
アプリケーション例
・会議システム
・コールセンター
・大型装置
お問い合わせ / お見積り
本記事でご紹介をさせていただきました製品につきまして、ご不明点がある場合、また詳細のご紹介をご希望される場合は、以下からお気軽にお問い合わせください。
また、本記事に関連した「ノイズキャンセルなどシステム・レベルでのコスト削減を実現できるA2B技術とは?」というセミナーを過去に開催しました。もし開催したセミナー資料をご希望の方がいましたら、問い合わせ内容に ”ノイズキャンセルなどシステム・レベルでのコスト削減を実現できるA2B技術とは?セミナー資料希望"と記載のうえ、お問い合わせください。
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