iPassives® 技術を使用した高精度アナログ回路用A/Dコンバーター

この記事では、アナログ・デバイセズ社のiPassives® 技術を使用した高精度アナログ回路用A/DコンバーターADAQ23875を紹介します。

最近は、アナログ回路用デバイスも周辺の受動素子を内部に取込むことで、回路の簡略化が進んでいます。これにより部品コスト・管理費が削減でき、設計工数の削減などが期待できます。

これらのメリットも大きいですが、技術的なメリットが実は最も大きいと言えます。具体的には、内蔵することが難しい高耐圧の受動部品などをIC内部に取り込むことで、ノイズ減となるPCB基板上の配線が削減され、アナログの安定的な信号品質が保たれます。

このことにより、市場のトレンド要求に対する小型の高精度計測が可能なシステム開発に対して、アナログ・デバイセズ社のiPassives®技術を使用したアナログICが重要な役割を担うことができます。

小型化を実現するためのiPassives® 技術

アナログ・デバイセズ社製品の大きな特徴として、独自プロセス技術であるiPassives® 技術により、受動部品であるR,L,Cだけでなく、トランス・ショットキーダイオード(耐圧200V以上)や過電圧保護、ESD保護素子を小型パッケージに集積することが可能です。

一般的な集積半導体に使われる受動素子との違いとしては、回路内のすべての構成要素が同じ条件下で同時に製造されるため、高い精度で整合性を得る事が可能となります。例えば、 OPアンプの増幅回路をiPassives® 技術で製造した場合、Gain誤差:0.005%FS以下、Gain誤差ドリフト:±1 ppm/°C以下という高性能が実現できます。また、絶対精度も高いため時定数が重要である高精度アナログ・フィルター回路についても集積可能です。

図1:iPassives® 技術

iPassives®技術によって、調整無しでの精度を非常に高く実現できるため、外部およびソフトウェアによるトリムが不要になります。

例えば、ADAQ28375の無調整、ノートリム、キャリブレーション無しのイニシャル性能は次の通りです。

Gain誤差

50ppm・FS

Gain誤差ドリフト

0.05ppm/℃

オフセット誤差

1.5mV max.

オフセット誤差ドリフト

0.25ppm/℃

                                                                表1:Gain誤差とオフセット誤差


イニシャルのエラーが小さく、ソフトウェアキャリブレーションの際に犠牲になる入力レンジ・分解能が抑えられます。A/Dコンバーターとアンプ間のAnti-Aliasing Filter (AAF) 回路では、高精度で長期安定の回路構成が可能です。

高精度A/DコンバーターADAQ23875

ADAQ23875は、16ビット15MSPSの逐次比較型 (SAR: Successive-Approximation Register) A/Dコンバーターをコアとした、高精度、高速のμModule® データ・アクイジション・ソリューションです。

アナログ・デバイセズ社のiPassives® 技術を採用しており、優れたマッチングおよびドリフト特性を備えた受動部品を内蔵しています。これにより、温度に依存する誤差を最小限に抑え、最適な性能を実現します。

その機能および性能の特徴は以下の通りです。

ADAQ23875の主な機能/概要

図2:ADAQ23875

■ 16ビット、15MSPSのデータ・アクイジション・ソリューション

■ 高精度のアナログ信号スケーリング回路を内蔵

■ 広い動作王入力電圧範囲 (-1~+4V) と96dBの高CMRRを実現

■ フットプリントをディスクリート部品の構成に比べ約25%に縮小

■ AC性能  TDH : -115dB@1KHz / -90dB@1MHz

         SNR : 88.5dB@100KHz

■ DC特製  INL : ±0.6LSB [Typ.]

        DNL : ±0.25LSB [Typ.]

        Gain誤差 : 0.005%FS [Typ.]

        Gain誤差ドリフト : ±1ppm/℃ [Max.]

■ トランジェント応答 : 52ns (Full-Scale step)

■ 消費電力 : 143mW@15MSPS

■ I/F : Serial LVDS

■ 動作温度範囲 : -40 ~ +85℃

■ パッケージ : 9mmx 9mm , 0.8mm ピッチ 100-Ball CSP BGA

図3 : ADAQ23875ブロック図

ADAQ23875の設計/開発ツール

ドキュメントとして、データシートを準備しているほか、次のような情報も用意しています。
 ・ 成分分析表
 ・ 信頼性データ
 ・ CAD用フットプリント/シンボルデータ

また、評価ボードや制御ソフトウェアなど、設計/開発に必要なツールが準備されています。
 ・ EVAL-ADAQ23875FMCZ(評価ボード)
 ・ EVAL-SDP-CH1Z(評価ボードコントローラーボード:評価ボード制御に必要です)
 ・ 評価セットユーザーガイド(UG1896)
 ・ Analysis Control Evaluation (ACE) Softreware

図4 : ADAQ23875評価ボード
図5 : Analysis Control Evaluation (ACE) Softreware GUI画面

ADAQシリーズについて

iPassives® 技術を用いた製品がアナログ・デバイセズ社の高分解能・高精度データ・アクイジション・システムICには、iPassives® 技術を用いた製品がいくつかリリースされています。ADAQ23875は、産業用と向けに開発された比較的高速な高分解能逐次比較型ADCをコアとしたSiPです。iPassives® 技術を用いた製品シリーズとして、ADAQ798XとADAQ40XXシリーズがあります。大きな違いは変換スループットです。それぞれの概要的な特徴は、以下の通りです。
 
 ■  ADAQ238XX:高速 (10MSPS以上) 16/18ビットADCコア、 高速信号のキャプチャー
 ■  ADAQ40XX:中速 (2MSPS) 16/18/20ビットADCコア、 超高精度
 ■  ADAQ798X:低速 (1MSPS) 16ビットADCコア、 汎用/低コスト

同じADAQシリーズであるADAQ7768は、他のモデルと少し回路構成が異なり、24ビットのシグマデルタADコンバーターをコアとしたシステムICです。デジタルリッチな素子で、デジタルフィルターなどのポスト処理がプログラマブルになっています。アナログ入力側にiPassives® 技術が使用され、Anti-Aliasing Filter (AAF) や可変ゲイン・ブロックなどが構成されています。データレートは256kSPSと高速で、内部のリニア位相応答フィルターと合わせて、広ダイナミック・レンジのAC信号解析に向いています。

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