工業用イーサネットの物理層(PHY)に必要な特性とは
イーサネットは1970年代の登場から大きく進化を遂げるとともに、オフィスネットワークを中心に広く普及されています。近年加速するインダストリー4.0において、日々増加する情報の通信を支えている技術が工業用イーサネットです。
工業用イーサネットは、高温、振動、騒音、ノイズといった過酷な工業環境においても特定のデータを正確かつ確実に送受信するため、オフィスなどで使われる標準的なイーサネットよりも高い堅牢性が必要です。
アナログ・デバイセズ社が提供する産業用・工業用イーサネットPHY ADIN1200とADIN1300は以下の3つの特長で、より正確・確実な工業用イーサネット通信を実現します。
・業界をリードする優れた遅延性能
・工業用途に対応した動作温度範囲とEMC特性
・気密性の高い環境に適した低消費電力
業界をリードする優れた遅延性能
ADIN1200/ADIN1300は、業界をリードする低い遅延性能を備えています。
これにより、ネットワークサイクルタイムを短縮、ネットワークリフレッシュ時間を改善しより多くのデバイスのネットワーク接続を可能にすることで工業用イーサネットに必要な要件となる、動作制御と安全の確保性を高めます。
ADIN1200/ADIN1300それぞれの遅延性能は以下の通り規定されており、他メーカーと比較して約20%以上遅延が低減されています。
ADIN1200
伝送方式 |
Min |
Typ |
Max |
|
100BASE-TX MII |
TX Latency |
52ns |
||
RX Latency |
248ns |
|||
Total Latency |
300ns |
|||
100BASE-TX RGMII(1) |
TX Latency |
84ns |
88ns |
92ns |
RX Latency |
250ns |
|||
Total Latency |
334ns |
338ns |
342ns |
|
100BASE-TX RGMII(2) |
TX Latency |
84ns |
104ns |
124ns |
RX Latency |
250ns |
|||
Total Latency |
334ns |
354ns |
374ns |
|
100BASE-TX RMII |
TX Latency |
72ns |
92ns |
|
RX Latency |
328ns |
348ns |
368ns |
|
Total Latency |
400ns |
430ns |
460ns |
(1):Tx FIFOが同期動作用にプログラムされている場合
(2):MAC送信クロックがADIN1200基準クロックおよびTx FIFOと同期する必要がない場合
ADIN1200の低い遅延性能(出典:ADIN1200 データシートより抜粋)
ADIN1300
伝送方式 |
Min |
Typ |
Max |
|
1000BASE-T RGMII |
TX Latency |
60ns |
64ns |
68ns |
RX Latency |
226ns |
|||
Total Latency |
286ns |
290ns |
294ns |
|
100BASE-TX MII |
TX Latency |
52ns |
||
RX Latency |
248ns |
|||
Total Latency |
300ns |
|||
100BASE-TX RGMII(1) |
TX Latency |
84ns |
88ns |
92ns |
RX Latency |
250ns |
|||
Total Latency |
334ns |
338ns |
342ns |
|
100BASE-TX RGMII(2) |
TX Latency |
84ns |
104ns |
124ns |
RX Latency |
250ns |
|||
Total Latency |
334ns |
354ns |
374ns |
|
100BASE-TX RMII |
TX Latency |
72ns |
92ns |
|
RX Latency |
328ns |
348ns |
368ns |
|
Total Latency |
400ns |
430ns |
460ns |
(1):Tx FIFOが同期動作用にプログラムされている場合
(2):MAC送信クロックがADIN1300基準クロックおよびTx FIFOと同期する必要がない場合
ADIN1300の低い遅延性能(出典:ADIN1300 データシートより抜粋)
工業用途に対応した動作温度範囲とEMC特性
ADIN1200/ADIN1300は広い温度範囲での動作が保証されています。
また、さまざまなEMI/EMC/ESD規格にも準拠しているので、工場内などの過酷な環境下においても堅牢な性能を発揮します。
ADIN1200 |
ADIN1300 |
|
通信速度 |
10BASE-T 100BASE-TX IEEE® 802.3™ |
10BASE-Te 100BASE-TX 1000BASE-T IEEE® 802.3™ |
MAC Interface |
MII/RMII/RGMII |
MII/RMII/RGMII |
パッケージ |
32-lead LFCSP |
40-lead LFCSP |
動作温度範囲 |
–40°C to +105°C |
–40°C to +105°C |
EMCテスト準拠規格 |
IEC 61000-4-5サージ(±3kV) IEC 61000-4-4電気高速トランジェント(EFT)(±4kV) IEC 61000-4-2 ESD(±6kVの接触放電) IEC 61000-4-6伝導耐性(10V) EN55032放射妨害波(クラスA) EN55032伝導放射(クラスA) |
IEC 61000-4-5サージ(±3kV) IEC 61000-4-4電気高速トランジェント(EFT)(±4kV) IEC 61000-4-2 ESD(±6kVの接触放電) IEC 61000-4-6伝導耐性(10V) EN55032放射妨害波(クラスA) EN55032伝導放射(クラスA) |
ADIN1200/ADIN1300の動作温度範囲とパッケージ、準拠規格一覧
気密性の高い環境に適した低消費電力
多くの工業用アプリケーションは、埃・塵や湿気・水などから内部のデバイスを守るために密封されています。
そのため、デバイスの熱を逃がすエアフローがないことから、消費電力を考慮した設計が必要です。
とくに周囲の環境温度が高い工業用アプリケーションにおいては、広い動作温度範囲の他に、低消費電力が重要な要素となります。
ADIN1200/ADIN1300の消費電力は以下の通り規定されており、他社製品と比較して約30%以上もの消費電力が低減されています。
伝送方式(RGMII) |
消費電力(typ) |
I/O電源電圧 |
|
ADIN1200 |
100BASE-TX |
175mW |
3.3V |
155mW |
2.5V |
||
139mW |
1.8V |
||
ADIN1300 |
1000BASE-T |
425mW |
3.3V |
370mW |
2.5V |
||
332mW |
1.8V |
||
100BASE-TX |
159mW |
3.3V |
|
148mW |
2.5V |
||
140mW |
1.8V |
ADIN1200/1300の低い消費電力(出典:ADIN1200/ADIN1300 データシートより抜粋)
ADIN1200/ADIN1300の主要な機能を簡単に評価できる評価ボード
ADIN1200/ADIN1300には、主要な機能を簡単に評価できる5V単電源の評価ボードが用意されています。
評価ボードには、MACインターフェースおよびMDIOコントロール用のマスターFPGAシステムへの接続用に、FMCが用意されています。
また、同梱のADuCM3029が搭載されたオプションのMDIOインターフェース・ドングルにより、MDIOを制御することもできます。
超低消費電力でIoTアプリケーションに最適なADuCM3029の特徴は、以下の記事でご確認いただけます。
ADIN1200/ADIN1300の主な機能は以下になります。
・10BASE-Te/100BASE-TX IEEE® 802.3™準拠MII、RMIIおよびRGMII MACインターフェース(ADIN1200)
・10BASE-Te/100BASE-TX/1000BASE-T IEEE® 802.3™準拠MII、RMIIおよびRGMII MACインターフェース(ADIN1300)
・100BASE-TX RGMII遅延:TX < 124ns、RX < 250ns(ADIN1200)
・100BASE-TX MII遅延:TX < 52ns、RX < 248ns(ADIN1200)
・1000BASE-T RGMII遅延:TX < 68ns、RX < 226ns(ADIN1300)
・100BASE-TX MII遅延:TX < 52ns、RX < 248ns(ADIN1300)
・EMC試験規格:
IEC 61000-4-5サージ(±3kV)
IEC 61000-4-4電気高速トランジェント(EFT)(±4kV)
IEC 61000-4-2 ESD(±6kVの接触放電)
IEC 61000-4-6伝導耐性(10V)
EN55022放射妨害波(クラスA)
EN55022伝導放射(クラスB)
・マルチレベル・ピン・ストラップを使用した非管理構成
・IEEE 802.3az準拠のEnergy Efficient Ethernet(EEE)
・IEEE 1588 Start-of-Frame検出
・設定可能LED
・水晶発振器/25MHzクロック入力(RMII用は50MHz)
・25MHz/125MHz同期クロック出力
・小型パッケージと広い動作温度範囲
32ピン(5mm x 5mm)LFCSP(ADIN1200)
40ピン(6mm x 6mm)LFCSP(ADIN1300)
-40°C~+105°Cの周辺温度で動作仕様規定
・低消費電力
139mW(100BASE-TX) 3.3V/2.5V/1.8V MACインターフェースVDDIO電源(ADIN1200)
単電源動作:3.3V VDDIO(ADIN1200)
332mW(1000BASE-T)(ADIN1300)
140mW(100BASE-TX)(ADIN1300)
3.3V/2.5V/1.8V MACインターフェースVDDIO電源(ADIN1300)
電源モニタとPORを内蔵
工業用イーサネットPHYのデモ動画
産業・工業用アプリケーションに最適なイーサネットPHY「ADIN1200/1300」の評価ボードを使ったデモ動画をご覧ください。製品の特長をご紹介後、各機能紹介のデモをお見せしていますので、イーサネットPHYの実際の動作をご確認いただくことができます。
アプリケーション例
・ファクトリーオートメーション
・産業用ロボティクス
・ビルディング・オートメーション
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