ADuCM3029はアナログ・デバイセズ社のマイコン製品です。ADIは、DSPをはじめ、さまざまなタイプのプロセッサー製品をリリースしています。
超低消費電力で高評価
さて、ADuCM3029の最大の魅力は、"超低消費電力" であることが挙げられます。これを裏付ける根拠として、第三者機関であるEEMBCのULPBenchにて "245.5" という高得点を獲得しています。
ADuCM3029は、超低消費電力を実現しながら高精度なアナログ・ブロックを内蔵し、精密な制御と計測を可能にしています。また、IoTをはじめとするさまざまなアプリケーションにご使用いただけるマイコンとなっています。
M0よりM3の方が低消費電力
ADuCM3029のコアは、Arm® Cortex® -M3を採用しています。低消費電力マイコンというと、M0/M0+をイメージされますが、最近の傾向としては、M3/M4Fのコアが主流になっています。
IoTをイメージしたとき、計測データを全てホスト/クラウド側に送信するのではなく、センサノード側で演算処理/解析をおこなった後、結果だけを送信する要求が高まっています。処理内容にもよりますが、一般的に同じ演算をM0とM3でおこなったとき、M3の方が演算時間を短くすることができると言われています。プロセッサーパワーによりコアの稼働時間を短くし、トータル的にM3の方が低消費電力にすることができます。
そのため、最近では、M3/M4Fのコアを採用した低消費電力マイコンが増えており、その中のひとつがADuCM3029となります。
DC-DCの外付けが不要
ADuCM3029は、超低消費電力を実現するために、電源管理機構として、電源効率を高める降圧コンバーターを内蔵し、電源監視機能も内蔵しています。そのため、電源管理システムが充実しているので、DC-DCの外付けが不要です。
さらに、単に低消費電力を求めただけでなく、セキュリティ機能(H/W暗号化アクセラレーター、乱数発生器など)を搭載し、ユーザコードを保護する機構もサポート。内蔵メモリーにはECC /パリティー機能を持たせ、システムの安全性を実現しています。
ADuCM3029の特長
- 超低消費電力 Arm® Cortex® -M3 マイコン
- 最大動作周波数:26MHz
- 柔軟な4つの動作モードサポート(詳細は 低消費電力を実現する4つの動作モード をご参照ください)
- 単一のコインセルに対応(例:CR2032)
- 電源範囲 (VBAT):1.74 ~ 3.6V
- 強力な電源管理システム搭載
- 1.2V LDO内蔵
- 低消費電力を実現する高効率Buckコンバーター内蔵
- リーク電流低減のためのパワーゲーティング
- 電源電圧モニター内蔵 (VBAT、VREG)
- 内蔵メモリー
- ECC機能付きFlashメモリー:256KB
- キャッシュメモリー:4KB
- Parity機能付きSRAM:64KB
- 充実した安全性能とセキュリティ機能(詳細は 安全性とセキュリティ機能の実現 をご参照ください)
- 豊富なペリフェラルとDMAエンジン搭載
- SPI x 3、I2C、UART、SPORT(シリアルポート)、GP Timer x 3、WDT、RTC x 3、ビープ音発生器、乱数発生器、GPIO x 44 (Max)
- 25ch DMA(ペリフェラル-メモリー、メモリー - メモリー間)
- 動作モードに合わせたシステムクロックを選択
- 26MHz
- 内部発振器 (HFOSC)、外部水晶発振器 (HFXTAL):26MHz or 16MHz
- GPIOクロック入力可能 (SYS_CLK_IN)
- 32.768KHz
- 内部発振器 (LFOSC)、外部水晶発振器 / 外部クロック入力 (LFXTAL)
- PLL内蔵
- 16MHzから26MHzを生成
- プログラマブル分周器も搭載 (24MHz、20MHz ・・・)
- 26MHz
低消費電力を実現する4つの動作モード
ADuCM3029には、以下の4つのモードが準備されており、システム要因に合わせ動作モードを組み合わせることができます。
1. Activeモード: < 30uA/MHz
- 全ての機能を有効にしてフル稼働(Flash/SRAMから命令を実行)
- 省電力化オプションも準備
- 動的クロックスケーリングにより、動作クロックを下げ消費電力を低減
- 無効なペリフェラルに対し、自動的にClock gatingを適用 など
2. FLEXモード:< 300uA
- コアのみを停止(コアに対するClock gating)、ペリフェラルは使用可能
- ペリフェラルとメモリー間はDMAを使用し、バックグランドでデータ転送可能
3. Hibernateモード: < 750nA
- コアとデジタルペリフェラルの電源停止
- 設定したSRAM領域、GPIOピンの内容保持
- 外部からのWakeUp割り込みにて復帰、有効なRTCのみ使用可能
4. Shutdownモード: < 60nA
- 全てのデジタルとアナログ回路の電源停止(SRAMの保持なし:復帰後PORを実行)
- RTCおよびWakeUp割り込みのみ動作
安全性とセキュリティ機能の実現
IoTにて要求されるセンサーノードの性能として、低消費電力性能の他に "セキュリティ性能" "安全性" も重要な要素になっています。これは、いくつかの側面があり、
- ユーザーコードの保護
- 悪意のあるアクセスからの保護
- センサーからクラウドまでのデータセキュリティ
- コードの安全実行
などが考えられ、IoTのセンサーノードとして重要なファクターになっています。
AES-128の処理比較
仮にユーザーコードを保護する目的で共通鍵による暗号化を実現しようとします。
AES-128をソフトウェアで処理した場合、これは1,728サイクルも消費してしまいます。ここでコアの消費サイクルが大きく掛かってしまい、せっかく低消費電力でシステム構築しても、台無しになってしまいます。
ADuCM3029の場合、暗号化ユニットをハードウェアで実装しています。全ての暗号命令をハードウェアで実行させるため、コアを介することなく、AES-128処理を約40サイクル程度で高速処理することができます。そのため、低消費電力とセキュリティ機能を両立させることができます。
ADuCM3029のセキュリティ / 安全性の特長
- ハードウェア・アクセラレーターによる暗号化機能
- AES-128、AES-256、SHA-256 サポート
- 真性乱数発生器 (TRNG) 内蔵
- メモリーエラー検出機能によるロバストネス
- 内蔵Flash:ECC機能による1bitのエラー訂正と2bitのエラー検出が可能
- 内蔵SRAM:パリティーエラー検出を実装
- プログラマブルな32bit CRCエンジンをハードウェアで実装
- ウォッチドッグタイマー (WDT) による監視
- ソフトウェアによる攻撃を避けるための仕組みを提供
- リード保護、インサーキット・ライト保護 など
センサーの同期サンプリングを低消費電力で実現する SensorStrobe™ 機能
アナログ・デバイセズ社のセンサー製品には、同期したサンプリング・ポイントによるデータ計測ができる機能をもつ製品があります。これは、加速度サンプリングを外部トリガー信号に同期させる機能になります。センサー側に内蔵されているFIFOおよびADuCM3029のSensorStrobe™ 機能を使うことによって、低消費電力で同期サンプリングが可能になります。
SensorStrobe™ 機能の仕組み
このSensorStrobe™ 機能は、ADuCM3029がHibernateモード中にセンサーに連続してデータ計測を実行させる仕組みとなります。以下のような動作となります。
- ADuCM3029のRTCの出力をSensorStrobe™ に割当てをおこない、定期的にトリガー信号を出力
- ADuCM3029はHibernateモードへ遷移
- ADXL3xxのFIFOがフルになったとき、WakeUp
- SPIなどにてFIFO内のデータを取込む
上記のようなSensorStrobe™ およびFIFOを有効活用すると、1/10以下の低消費電力化を実現することが可能です。
SensorStrobe™ に対応している各種デバイス(2017年12月現在)
- 光測定フロント・エンド
- ADPD103
- ADPD105
- ADPD107
- 3軸加速度センサー
- ADXL345
- ADXL346
- ADXL350
- 超低消費電力3軸加速度センサー
- ADXL362
- ADXL363
- 無線トランシーバー
- ADF7030-1
- 低ノイズ3軸加速度センサー
- ADXL355
- ADXL357
- 高g 3軸加速度センサー
- ADXL372
- ADXL373
ADuCM3029の開発環境と評価ボードのご紹介
- ソフトウェア開発ツール
- IAR社 EWARM v7.60.2 以降
- Keil社 uVision v5.23 以降
- ADI社 CCES 2.6.0 以降
- エミュレーター
- IAR / Keil:J-Link Lite
- CCES:J-Link Lite or ICE-1000 / 2000
※J-Link Liteは、EZLite評価ボードに付属
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