【従来の課題】コロナ禍への対応が帯域の逼迫を招くネットワーク環境の抜本的な見直しを決断

ヨックモックは1969年8月に設立。以来、真心がこもった手作りのおいしさを真髄として、「シガール」を代表とした数々の洋菓子を生み出し、全国の百貨店や直営店、オンラインショップなどを通じて販売を行っている。中元や歳暮などの贈答品ギフトの市場で不動の地位を築いている同社だが、近年は“クッキーで彩るわたしの時間”をコンセプトに、人気の定番クッキーを食べきりサイズの紙箱パッケージにした新シリーズ「MY YOKUMOKU」などもラインアップ。特に若年層から好評を得ている。

さて同社では、これまで自社のWAN回線に通信キャリアが提供する専用線サービスを利用してきた。工場やグループ会社など各拠点からの通信は、閉域接続によりデータセンター（DC）を経由し社内ネットワークにつながる集中管理型の構成をとっていたのだが、2020年のコロナ禍を機に問題が表面化したという。情報システムグループグループ長の八重澤哲也氏は「コロナ禍へ対応するため、当社もリモートワークやWeb会議を推進することになりました。そこでMicrosoft 365を導入し、Teamsの全社的な利用が始まったのですが、帯域が逼迫。Web会議に支障をきたしたりと、トラブルが頻発したのです」と当時を振り返る。

特にWeb会議の問題は深刻だった。会議の最中に音声が途切れるなどして進行が滞り、ユーザーからクレームを受けることもしばしばだったという。
「社内で済む話であればトラブルが起きても何とかなりますが、広報など社外に向けた発表の場でそうした事態が起これば、業務に大きな影響を及ぼしてしまいます。そこで、この問題は何としても解決しなければと考えました」（八重澤氏）

当初、同社は回線の増強などでこれに対応していた。しかし拠点の回線を増強しても、回線が集中するDCとの接続がボトルネックになり、根本的な解決には至らなかったという。「加えて既存の専用線サービスは、拠点を増設する際も回線の開通までにかなりの時間を要し、スピード感ある対応が困難でした。コロナ禍の前後で人々の働き方は大きく変わりましたが、当社もただ従来型のオフィスを維持するのではなく、より小規模な拠点を迅速かつフレキシブルに展開する可能性を視野に入れています。そこで、柔軟性あるネットワーク環境が必要と考え、抜本的な見直しを行うことにしたのです」（八重澤氏）

【製品の選定】SD-WANとセキュリティが一体化され統合管理も可能なCatoを採用

ヨックモックは当初、既存の通信キャリアに相談したが、出てきた提案が専用線サービスの延長線上に留まっていたことから、他の方法も検討することになった。
「私たちが求めていたのは、ビジネスの変化などに応じて柔軟かつ迅速に構成できる仕組みであり、単なる回線の変更ではありません。また、オンプレミスの構成では自分達でファイアウォール（FW）やプロキシサーバーを用意し管理する必要がありますが、そういった手間は省きたいと考えました」（八重澤氏）

従来のようにDCへ集約するかたちのネットワークでは、ボトルネックを回避するため回線を強化する必要があり、そこにもコストが発生する。そこで、分散型でありながら統合管理が可能な、SD-WANという選択肢が浮上することになった。
「今回は複数社から提案を受けたのですが、そのうちSD- WANの提案は日本オフィス・システム（NOS）ともう1社からありました。しかし、もう1社の提案はセキュリティが別扱いであり、ネットワークとセキュリティをそれぞれ別に管理運用する必要がありました。一方、NOSが提案してくれたCatoは、SD-WANとセキュリティが一体化したサービスで、自社による統合管理が可能な点は大きなメリットでした」（八重澤氏）

同社は百貨店等に多くの売り場を展開しているが、その際、店舗からネットワークへモバイル回線経由でアクセスしている。しかし従来のサービスでは、モバイル回線の通信キャリアが限定されており、店舗によっては回線が繋がりにくいケースもあった。
「Catoモバイルクライアントでは通信キャリアを自由に選択できるため、安定性やコストを優先して通信キャリアを選べるのが有り難いですね」（八重澤氏）

同社は2022年夏にCatoの採用を決定。検証等を行ったのち、2023年3月より本格的な導入作業をスタートさせた。

【導入の効果】Catoの導入により業務が統合され速度も向上リアルタイムな状況確認が可能に

2023年4月、店舗や工場など9拠点への導入が完了。続いて店舗等での切り替えを実施し、6月末にリプレースを終わらせた。既存のネットワークを並行稼働させながら作業であったが、トラブルは特に起きなかったという。

今回、ヨックモックがネットワークをCatoに一本化したことで、まず効果として挙げられるのが業務の統合だ。「これまで百貨店など出店先での受発注は、iPadを配布しブラウザ上の入力で処理できるよう、並行で進めていました。その通信もCatoを利用することで、セキュリティが保たれ、最適な回線を選択できるようになりました。また、従来は出店先の施設によって通信環境が左右されることもありましたが、それも解消しました」（八重澤氏）

さらに、以前は人数の少ない拠点ではある程度帯域を絞っていたが、Catoへ切り替えたことで、ユーザーからはとても速くなったという声が上がっている。情報システムグループ リーダーの佐藤尚也氏は「特にTeamsの品質が向上しました。また、当社ではファイル共有にSharePointを利用していますが、画像などの大きなファイルを共有する際にも支障がなくなったと好評です」と語る。

また、これまでモバイルユーザーはセキュリティの関係から社内経由でSaaSなどのサービスにアクセスしていたが、今では直接アクセスが可能になり、スピードアップの恩恵を受けられるようになった。先日ある役員が海外へ出張した際にも、移動先からiPadを使って自動でCato経由で社内ネットワークにアクセスし、決裁などの承認作業が行え、その利便性の良さが好評だったという。

運用面の効果で言えば、リアルタイムで状況確認できる点が大きなメリットだ。Teamsの品質や利用状況についても、拠点やユーザー単位で把握できるようになっている。
「つながりが悪い、つながらないといったケースでも、いつから問題が発生しているかがわかるため、原因の究明においてどこを確認すればよいのかが明確で、迅速な対応が可能になりました。以前は想像を働かせて手探りで対応していましたから、時間や労力の大幅な削減につながっています」（佐藤氏）

従来に比べて、端末の設定作業も楽になった。情報システムグループ　主任の三輪義人氏は「人の異動が多いときなど、キッティング作業の手間が大きく削減されました。また、管理が必要な対象自体も減っています」と評価する。

【今後の展開】CASBにより各クラウドサービスの管理・制御を目指すマクニカには適切なアドバイスを期待

Catoの導入により、社内外の区別なく高レベルのセキュリティを確立した上で、快適なネットワーク環境を実現したヨックモック。今後については、CASBにより各クラウドサービスの利用状況の可視化を進め、適切な管理・制御を実現していく方針だ。「まだ私たちも十分にCatoを使い込めているとはいえないので、マクニカとNOSにセキュリティや各パラメータの設定、アプリ単位での適切な対応などについてアドバイスしていただき、全社展開を進めていきたいと考えています」（八重澤氏）

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