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鈴与商事株式会社の挑戦
~汚泥処理の社会課題に対して資源循環による社会貢献と大幅なコスト削減を両立させた
CSV経営を静岡から世界へ発信~

USER PROFILE
■企業情報:鈴与商事株式会社

■事業内容:
1801年に回漕業として創業した、鈴与グループの流れを汲む企業。1990年に鈴与株式会社の販売部門を継承し、分社独立。「共生(ともいき)」の理念のもと、石油・LPG・電力などのエネルギー供給を柱に、産業燃料、建設資材、化学品、FAソリューションなど多角的な事業を展開。近年はバイオ燃料の導入や再生可能エネルギーの活用、CO2排出量の可視化など脱炭素社会の実現に向けた取り組みを進め、地域社会と企業の持続可能な発展に貢献。

■インタビュー対象者:
バイオガス事業部 菊川バイオガス事業所長 前田 洋幸 様
バイオガス事業部 バイオガス企画課    小林 聡 様

(写真左から)鈴与商事株式会社 小林様、前田様、株式会社マクニカ 担当

サマリー

背景

総合商社の知見を活かして挑む、地域資源循環

課題

運営コストの半分を占める発酵残渣の処理費用、再資源化への高い壁

選定

周辺地域への配慮と、余剰エネルギー利活用の実現

現状運用

大幅なコスト削減と資源循環が両立

今後

自治体や近隣企業との連携を深め、地域を支える「循環のハブ」へ

背景

地域とグループを結ぶ「資源循環」への挑戦

小林様: 弊社のルーツは200年以上続く物流・倉庫業にありますが、現在はその商流を担う総合商社として、石油、ガス、建材など多角的な販売事業を展開しています。その中で2016年、新たな挑戦として立ち上げたのが、この鈴与菊川バイオガスプラントによるバイオガス事業でした。長年培ってきたエネルギーの取り扱いや、グループの祖業である「物を適切に扱う」というノウハウを、メタン発酵という新たなエネルギー循環に活かせないだろうかと考えたのが始まりです。

前田様:このバイオガス事業の最大の特徴は、ほとんどが鈴与グループ内で完結する循環構造にあります。例えば、鈴与グループで食品製造を手がけるSSKフーズ株式会社からは、メタン発酵の主原料となる食品残渣が安定的に供給されます。また、処理に必要な薬剤なども自社の化学品部門から調達可能など、商社ならではのシナジーも事業の安定性を支える大きな要因となっています。

小林様:プラント建設の具体的なきっかけは、地域が抱えていたゴミ問題でした。当時、弊社の隣接地で農業生産を行うベルファーム株式会社では、トマトの生産拡大に伴って茎や葉といった農業残渣が急増し、地域の焼却施設の処理能力が限界に近づいていました。
さらに、食品工場から出る汚泥は含水率が非常に高く、燃やすためには膨大なエネルギーを消費してしまいます。そこで、「未利用の資源を無駄にせず、エネルギーとして再活用したい」という強い思いから、水分量が多くても効率よくエネルギーを取り出せる湿式メタン発酵という方式を選択しました。

前田様:菊川バイオガスプラントでは単に電気を作るだけでなく、発電時の排気ガスから CO2を精製して農場の光合成促進に利用したり、発酵過程で生じる消化液を農地に還元したりといった、一歩進んだ地域循環型農業の実現にも取り組んでいます。

▲鈴与グループにおけるバイオガス利活用の取り組み事業概要

▲鈴与菊川バイオガスプラントの外観。大きく見える建物が処理棟で、左のほうに見えるタンクのようなものが発酵槽です。

課題

メタン発酵の宿命とも言える発酵残渣処理と、膨大なコストの壁

前田様:バイオガスプラントの運用で避けて通れない課題になるのが、発酵残渣※の処理です。弊社では独自の技術で脂質分解を効率化しているため、一般的なプラントよりも発酵残渣の排出量を抑えられています。しかし、メタン発酵の仕組み上、どうしても一定量の発酵残渣は残ってしまいます。
これをいかに適切に扱いつつ、どのように付加価値をもたせて処理するかが難しいところでした。

※本記事では、メタン発酵時に発生する消化液・汚泥を総称して「発酵残渣」と表現しています。

▲メタン発酵後、脱水機で処理をした発酵残渣。脱水機の処理だけでは十分に水分を飛ばせず、触ると湿り気を感じます。

小林様:この課題はプラントを開設してから約10年間ずっと続いており、人件費などを除いたプラントの運営コストのうち、実に半分近くをこの発酵残渣の処理費用が占めていたのです。経営面で見ても、非常に莫大なコスト負担になっていました。

前田様:また、弊社が掲げる「ゼロエミッション化の実現」というビジョンの観点からも、発酵残渣の処理は重要なテーマでした。地域のゴミを受け入れてエネルギーに変えても、最後にまたゴミとして外部へ排出してしまっては、真の循環とは言えません。これまでは脱水機で含水率を80%程度まで落とした脱水汚泥として、外部の業者に堆肥化や燃料化を依頼していましたが、「自社でさらに踏み込んだ手を打ちたい」と考えていました。

小林様:当初は、含水率80%の脱水汚泥のまま肥料として農家さんに使ってもらう道も模索しましたが、現実は甘くありませんでした。未処理の状態ではかなりの重量がありますし、ハンドリングも困難で、肥料としての付加価値が高まりません。広く一般に流通させ、有効に再利用してもらうためには、さらに乾燥させて付加価値を高め、誰でも扱いやすい形に加工することが不可欠だったのです。

選定

地域との共生を叶える「無臭化」と、「余剰エネルギー利活用」の実現が決め手に

前田様:現場としては、正直なところ「乾燥処理は無理だろう」と諦めていた部分もありました。通常、乾燥機を導入すればどうしても匂いのリスクは付きまといますし、すでに完成しているプラント内に新たな設備を後付けするスペースの余裕も限られていたからです。

しかし、メルトキングIoTはパッケージ化された既製品として非常にコンパクトで、限られたスペースにもスマートに収まるサイズ感でした。「このスペックであれば、地域との調和を守りつつ、私たちが長年抱えていた発酵残渣の課題をクリアできる」と確信しました。

小林様:メルトキングIoT※の導入にあたって、私たちは「匂い」の問題も重視しました。ご覧の通り、弊社のプラント周辺には静岡を象徴する広大な茶畑が広がっています。農家の方々は、匂いにとても敏感です。

廃棄物処理という事業の性格上、地域の方々に「匂いが出る迷惑施設」という印象を与えては、共生は成り立ちません。マクニカ本社ビルがある、新横浜駅付近で稼働していても匂いがまったく気にならないという実績は、非常に大きな魅力でした。

前田様:現場としては、正直なところ「乾燥処理は無理だろう」と諦めていた部分もありました。通常、乾燥機を導入すればどうしても匂いのリスクは付きまといますし、すでに完成しているプラント内に新たな設備を後付けするスペースの余裕も限られていたからです。

しかし、メルトキングIoTはパッケージ化された既製品として非常にコンパクトで、限られたスペースにもスマートに収まるサイズ感でした。「このスペックであれば、地域との調和を守りつつ、私たちが長年抱えていた発酵残渣の課題をクリアできる」と確信しました。

▲メルトキングIoTで乾燥させた発酵残渣はほとんどの水分を失い、体積が大幅に減少。運搬などをしやすくなります。

小林様:もうひとつの大きな決め手となったのが、熱源のカスタマイズ性です。弊社のプラントは脂質分解の効率が非常に高いがゆえに、当初の設計以上、約1.2倍のバイオガスが発生していました。発電機をフル稼働させても使いきれない余剰ガスは、これまではやむを得ず燃焼処分していたのですが、私たちは「これをメルトキングIoTの熱源として再利用できないだろうか」と考えました。

前田様:本来、メルトキングIoTは都市ガスやLPガスを熱源とする仕様ですが、理論上はバイオガスでも対応可能です。そのため、マクニカさんと協力してこの「バイオガスでの安定供給」にチャレンジできたことは、大きな意義がありました。

捨てていた余剰エネルギーを乾燥の熱源に回すことで、ランニングコストを大幅に抑えつつ、発酵残渣の付加価値を高める。まさに弊社の強みと課題が、メルトキングIoTによって、ひとつの円として繋がった瞬間でした。

現状運用

▲メルトキングIoT導入前

▲メルトキングIoT導入後

地元企業との連携をも深めた、「捨てる」から「創る」への変革

前田様:導入による最も直接的な成果は、やはり長年の懸案事項であった処理コストを大幅に削減できたことです。それと同時に、単なる廃棄物処理に留まらない資源循環のループを生み出せたことには、弊社にとって非常に大きな意義があります。

メタン発酵がこれまで社会に広く普及してこなかった最大の理由は、この残渣処理にボトルネックがあったからです。しかし今回、メルトキングIoTの導入によって出口戦略が明確になり、肥料メーカーやボイラー会社との確固たる協力体制を構築できたことは、今後の大きな資産になるでしょう。

小林様:これまで多大なコストをかけて処分していた発酵残渣は、メルトキングIoTを通じて燃料や肥料という価値ある資源に生まれ変わりました。また、地域の学校給食から出た廃棄物を発酵・乾燥させて肥料にし、それをまた地域へ還元する。

こうした「資源の地産地消」の実証モデルが確立できれば、脱炭素社会の実現に向けて大きな一歩を踏み出せます。輸入燃料の価格高騰や供給不安が懸念される昨今、自社で安定的にエネルギーを調達できる仕組みを持てることは、安全保障の観点からも極めて重要だと考えています。

この成功モデルが及ぼす影響は、単なる自社設備の改善に留まりません。今後、同様の課題を抱える自治体や企業様へ、実体験に基づいたコンサルティングや横展開を行う際の「生きた実績」となるからです。ゴミを資源に変え、地域のエネルギーとして循環させる仕組みを自社で完結させていること。それ自体が、他社にはない圧倒的な優位性に繋がると確信しています。

今後

実証モデルをベースに、循環のハブの成長を目指して

前田様:今回の取り組みで確立したメルトキングIoT活用の成功モデルを、今後はさらに広く横展開していきたいと考えています。メタン発酵の普及を阻んできた発酵残渣処理という大きな課題に対し、自社での実証に基づいた具体的な解決策を提示できるようになったことは、弊社の大きな強みになります。

小林様:現在、地域とのさらなる連携強化も視野に入れています。例えば、自治体や地元の農家の方々と協力し、市内にある農場や緑地での肥料活用に向けた協議などを検討しているところです。子どもたちが口にする学校給食の残渣を肥料に変え、それをまた地域の野菜づくりに役立てるという食の循環を形にできれば、地域教育への貢献にも繋がります。

前田様:自治体だけでなく、社員食堂を持つ近隣企業様との連携も構想のひとつです。食堂から出る廃棄物を肥料として再生し、その企業の敷地内にある緑地のメンテナンスに活用していただく。さらに、その食堂でベルファームのトマトを食材としてご利用いただければ、企業内で完結する循環ループの構築も可能です。

小林様:私たちはこのプラントを、地域社会や企業のサステナビリティを支える「循環のハブ」へと成長させたいと願っています。未利用の資源が価値あるものへと変わり、巡り巡って地域に豊かさを還元していく。メルトキングIoTという確かな解決策を得た今、このビジョンの実現に向けて歩みを加速させていきたいですね。

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