インダクター、コンデンサーは電子回路を作るうえでなくてはならない部品です。その動作の基本的な役割を解説します。
今回の内容は、Part10”コンデンサーの電気的特性”になります。
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概要
コンデンサーには静電容量などデータシートに規定されている電気的特性があります。
今回はWurth Elektronik社電解コンデンサーWCAP-ASLUシリーズの865090449009を例として規定されている主な電気的特性について説明します。

図1:865090449009電気的特性
静電容量
コンデンサーの最も重要な特性は静電容量です。記号はCです。静電容量は、ある電圧が印加された場合に電気エネルギーを蓄えることができるコンデンサーの特性を表し、単位はファラドです。ファラドはイギリスの著名な実験物理学者であるマイケル・ファラデーにちなんで命名されました。
静電容量、電圧、電流及び時間は以下の関係が適用されます。

今回の例の100μF/25Vのコンデンサーに1Aで充電すると2.5msで25Vになります。
定格電圧
定格電圧は直流電圧で定義されており、コンデンサーに連続的に印加できる最大電圧です。データシートに記載されている定格電圧は、コンデンサーの規定されている下限から上限温度まで適用されます。定格電圧は、直流電圧にリップル電圧等のAC成分が加わった場合のピーク値でこの値を超えない条件で使用する必要があります。
サージ電圧
定格電圧とは異なり、異常時における過電圧の規定です。今回の例では定格電圧の1.15倍で規定されており温度やサイクル条件が規定されている点に注意が必要です。
条件は製品データシート865090449009のGeneral Informationに記載されており、1000cycles @ 20℃でありcycleは充電時間30秒, 放電時間は5分30秒となっています。
リーク電流
電圧印加時にコンデンサーに流れる電流を指します。図2のコンデンサーの容量、電圧、温度、あるいは電圧印加後の時間などで変わるため、今回の例では電圧を印加した2分後 @ 20℃の値を規定しています。図2はリーク電流の時間変化の参考例です。

図2:リーク電流の時間変化
Wurth Elektronik社 SN019より
誘電正接
DF(Dissipation Factor)やtanδと定義されるケースがありますが同じ意味になります。コンデンサーは位相シフトを持ち、理想的には電流は電圧に対してのちょうど90°先の位相角となります。実際のコンデンサーの場合ESLとESR成分があるため位相のずれが発生します。
理想的な位相角である90°との差δを損失角と呼びます。損失角δの正接を誘導正接tanδで表し、これが小さいほど損失が小さいコンデンサーとなります。図3はこの関係を示しています。

図3:損失角の正接
今回の例ではDissipation Factor(DF)と表記されていますが、tanδ=DFの関係になります。
tanδとESR、容量性リアクタンスXcは以下のように算出されます。

リップル電流
定格リップル電流として規定されています。今回の例では120Hz @ 85℃での値が規定されています。低インピーダンス品などでは100kHzで規定されているものもあります。
リップル電流とESRによって発熱が発生するため定格リップル電流が定められており、コンデンサーの消費電力と各パラメータの関係は以下のように算出できます

P:コンデンサーの消費電力
Ir:リップル電流
V:印加電圧
IL:リーク電流
また定格リップル電流は周波数によって変わるため、データシートで規定されている周波数以外で使用する場合補正する必要があります。
今回の例では下記のような補正テーブルが示されています。

図4:リップル電流の周波数補正
このコンデンサーを10kHzの条件で使用する場合は1.5倍のリップル電流が許容されることがわかります。
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