TI モータ・ドライバの選び方/おすすめ評価ボード5選

製品に動きを与える「モータ」はロボットやプリンタ等、多岐にわたるアプリケーションに使用されています。
そのモータを陰で支えるデバイス、「モータ・ドライバ」には様々な種類・機能があります。

前半はモータを使った製品開発を始めるにあたり、「モータ・ドライバをどのように選べばよいの?」という疑問をお持ちの方に向けて、選び方のポイントをご紹介します。
また後半では、弊社エンジニアが厳選した、Texas Instruments社(以下TI社)の比較的新しいおすすめモータ・ドライバ評価ボードをご紹介します。

そもそもモータ・ドライバとは?

モータ・ドライバとは、モータを駆動・制御するデバイスで、モータに流す電流量・方向・タイミング等を制御し、異常発生時にデバイスを保護します。

モータの種類は大きく分けて、

  • ACモータ
  • DCモータ(ブラシ付き/ブラシレス)
  • ステッピングモータ


に分類されます。

各モータの種類により駆動方法や回路が異なるため、モータに合ったモータ・ドライバを選ぶ必要があります。

モータ・ドライバの選び方

ではモータ・ドライバを選ぶには、まず何から検討すればよいでしょうか。
まず開発アプリケーション・仕様が決定すると、モータの種類、モータ・ドライバの種類が確定します。そこからモータ・ドライバの詳細な仕様条件を選んでいくと最適なデバイスを選定することができます。

モータ・ドライバ選定の流れ
モータ・ドライバ選定の流れ

モータ種類とモータ・ドライバ種類の決定

アプリケーションの仕様が決まると、3つの質問に答えるだけで簡単にモータ、モータ・ドライバの種類を決めることができます。

アプリケーション例
アプリケーション例
モータ、モータ・ドライバを決定する流れ
モータ、モータ・ドライバを決定する流れ

ACモータ
構造が簡単で丈夫なので、耐久性が必要とされる大型の装置に向いており、エレベータやポンプなどのアプリケーションに使われています。高電圧で動作するためモータ制御はモータ・ドライバではなく絶縁ゲートドライバー+高耐圧FET(IGBT)、またはデジタルアイソレータ+高耐圧IPMの組み合わせを使用します。今回はモータ・ドライバの選び方についてご紹介するので、以後ACモータは割愛します。

DCモータ
低電圧で動作するため小型の装置に向いており、低価格という利点があり、最も多く使われています。ただしブラシや整流子の部品が含まれるため、ノイズや回転のムラ、メカ的な劣化の問題があります。DCブラシレスモータはブラシ付DCモータと比較して起動(加速動作が必要)、速度可変(周波数+電圧制御)、正転/逆転方法(制御順番等)は煩雑です。構造的に、ブラシと整流子の部品を含まないため、寿命・メンテナンス性・静音に優れています。

ステッピングモータ
モータに入力するパルス信号で容易に制御できるため、プリンタのヘッドやエアコンの風向き調整の部分などで使用されています。また位置情報などのフィードバック回路が不要で比較的設計も簡易です。一方、モータ停止時に励磁をしているため、発熱しやすいというデメリットもあります。

ここまででモータの種類が決まり、自動的にモータ・ドライバの種類が決まりました。

モータ・ドライバ詳細スペックの決定

実際にモータ・ドライバを選定するにあたり、どういったスペックを考慮すべきでしょうか。例えば電圧/電流の基本スペックから保護機能等、多岐にわたる項目がありますので、各モータの種類毎に以下の表に沿って確認してください。

表1. 共通項目
動作電圧範囲 ______ [V] ~ ______ [V]
出力電流 ピーク値 ______ [A]、平均値 ______ [A]
FET 内蔵  or  外付け
内部FETオン抵抗値 ______ [mΩ]  ※FET内蔵の場合のみ
PWM周波数 ______ [Hz]  ※PWM IFを使用する場合のみ
保護機能 過電流保護機能(OCP)/ サーマルシャットダウン機能(TSD)/ 低電圧ロック機能(UVLO)
パッケージ タイプ・サイズ・ピン数

表2. モータ別項目
DCブラシ付き
モータ・ドライバ
DCブラシレス
モータ・ドライバ
ステッピング
モータ・ドライバDC
マイコンとの接続IF
PWM / PH・EN / I2C
マイコンとの接続IF
PWM / SPI / Analog
マイコンとの接続IF
PWM / PH・EN /SPI / INDEXER
Hブリッジ数
______ [個]
ホールセンサフィードバック端子
有 or 無
ステップ数(Full~1/256)
_______ [Step]
- カレントセンスアンプ
内蔵 or 外付け
モータ種類
バイポーラ or ユニポーラ
- 通電角制御
有 or 無
-

 

上記の項目は「共通項目」と「モータ別項目」に分かれています。「モータ別項目」には各モータ・ドライバ固有の仕様条件が書かれています。全ての項目を漏れなく選んで頂くと、開発アプリケーション・仕様に最適なモータ・ドライバを選定できます。

また、TI社WEBサイトにて各モータ・ドライバ製品の上記スペックが一覧表で見れて瞬時に該当デバイスを選定する機能があります。こちらも是非ご活用ください。

DCブラシ付きモータ・ドライバ一覧
DCブラシレスモータ・ドライバ一覧
ステッピングモータ・ドライバ一覧

TI社WEBサイト:ブラシ付きDCモータ・ドライバ一覧
TI社WEBサイト:ブラシ付きDCモータ・ドライバ一覧

TI社 おすすめモータ・ドライバ評価ボード5選

では、ここからおすすめモータ・ドライバの評価ボードをご紹介します。モータ・ドライバの種類毎に掲載しており、製品の特長が一目で分かるキャッチコピーを付けておりますので、ご興味のあるものを是非ご覧ください。

DCブラシ付きモータ・ドライバ

1. DRV8870EVM:小型で高効率、かつ入力電圧範囲の大きいDCブラシ付きモータ・ドライバ

DRV8870EVM
DRV8870EVM
  • 幅広い入力電圧範囲:6.5~45[V]
  • 小型パッケージ:SOP-8 4.9[mm] x 6.0[mm]
  • 大電流:3.6[A](ピーク値、FET内蔵)
  • 保護機能対応:OCP、TSD、UVLO
  • 使用アプリケーション例:プリンタ、トイレ開閉弁、その他産機機器

参考記事
すぐにブラシ付きDCモータを評価できる モータ・ドライバ評価モジュール「DRV8870EVM」

2. DRV8837EVM:超小型で高効率、2電源供給可能なDCブラシ付きモータ・ドライバ

DRV8837EVM
DRV8837EVM
  • 電池駆動可能な低電圧範囲:Vcc=1.8~7 [V]、VM=0~11 [V]
  • 超小型PKG:WSON-8 2.0 [mm] x 2.0 [mm]
  • 高効率:スリープモード時、100nAの消費電流
  • 大電流:1.6 [A](ピーク値、FET内蔵)
  • 保護機能対応:OCP、TSD、UVLO
  • 使用アプリケーション例:カメラ、DSLRレンズ、玩具

DCブラシレスモータ・ドライバ

BOOSTXL-DRV8323RH
BOOSTXL-DRV8323RH
  • 幅広い入力電圧範囲:6~60[V]
  • 100%Duty可能:自励式チャージポンプ内蔵
  • 保護機能対応:OCP、TSD、UVLOに加え、チャージポンプ電圧監視機能(CPUV)、各ゲートドライバー故障検知(GDF)
  • 0.8~60V/600mA出力可能な電源内蔵:各制御用のDCDC内蔵
  • カレントセンスアンプ内蔵
  • 使用アプリケーション例:ファン/ポンプモータ、コードレス掃除機、ロボット

※本製品の開発/評価を行うには別途MSP-EXP430F5529LPが必要です。購入はこちら

ステッピングモータ・ドライバ

4. DRV8711EVM:1/256マイクロステップ対応、入力電圧範囲の大きいステッピングモータ・プリドライバ

DRV8711EVM
DRV8711EVM
  • 幅広い入力電圧範囲:8~55 [V]
  • マイクロステップ:Fullstep~1/256stepまでの設定が可能
  • 保護機能対応:OCP、TSD、UVLOに加え、脱調検知機能(STALL)
  • マイコンによる簡単制御:INDEXERでの動作可で、PWMとの切り替えも可。AutoTuneによる簡単な電流制御、Decay制御
  • 5V/10mA電源内蔵:制御用電源5VのLDO内蔵
  • 使用アプリケーション例:コンベア、プリンタ、 ロボット

5. DRV8884EVM:1/16マイクロステップ対応、カレントセンス内蔵ステッピングモータ・ドライバ

DRV8884EVM
DRV8884EVM
  • 幅広い入力電圧範囲:8~37 [V]
  • マイクロステップ:Fullstep~1/16stepまでの設定が可能
  • 大電流:1.0 [A](ピーク値、FET内蔵)
  • 保護機能対応:OCP、TSD、UVLOに加え、チャージポンプ電圧監視機能(CPUV)
  • 小型PKG:HTSSOP(24)7.8 [mm] x 4.4 [mm]、カレントセンス抵抗内蔵
  • マイコンによる簡単制御:INDEXERでの動作可で、PWMとの切り替えも可
  • 使用アプリケーション例:スキャナー、プリンタ、セキュリティーカメラ

最適なモータ・ドライバで今すぐ設計開始

いかがでしたでしょうか。今後モータを使用するアプリケーションをご開発される際には、最適なモータ・ドライバ選びに本記事の内容をご活用いただければ幸いです。
また、おすすめ評価ボードの購入をご検討の方は、TI社サイトでボードのユーザガイドをご用意しております。それらを参考に、ボードで評価をされてみてはいかがでしょうか。

 

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本記事でご紹介したTI社モータ・ドライバ製品について詳細な情報をお求めの方は、是非こちらからお問い合わせください。

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