前回の記事では原理検討用の簡易水位センサの最適化を行いましたので、今回の記事では最適化した結果を説明します。加えて、簡易水位センサで水位計測を行った結果、見えてきた技術課題を紹介します。もちろん、IoT/M2M展には、技術課題への対策を実施したものを出展しています。
第1回 水位センサの試作方法
第2回 検出原理を解説
第3回 最適化するには?
第4回 最適化した水位センサ
最適化された共振振幅
実際にCH0の差動信号をオシロスコープで観測してみると、水位が0cmの時は約316kHz、水位が19cmの時は約308kHzでそれぞれ発振しています。水位の上昇と共にセンサの容量値が増加することで、共振周波数が若干低下しています。
一方、 水位が0cmの時に共振振幅は1.42Vpp程度で、水位が19cmになると、共振振幅は1.26Vpp程度となり、共振振幅の推奨範囲内に収まっています。必要に応じてセンサ・ドライブ電流の設定値を高くすることにより共振振幅を大きくすることも可能です。但し、消費電流は増加します。
最適化前後の容量値比較
共振振幅を最適化した結果、水位が0cmの時に3730pFとなり、水位が19cmの時に3910pFになりました。
水位が0cmの時からどれだけ容量値が変化したのかをプロットし、同じ土俵で最適化前後の結果を比較しました。最適化後は水位変化に伴う容量値の変化量が180pFとなり、同一のセンサを使用していますが、デフォルト設定の時と比較すると、変化量は約2倍になりました。また、水位が低い時(0cm~4cm)の容量検出感度が向上しています。
最適化前の場合、共振振幅が推奨範囲外であり、且つ入力グリッチ・フィルタの設定が不適切だったことが要因と思われます。このように同じセンサを使用してもLC共振回路の定数やGUIの設定よって特性が大きく変わります。
さらに見えてきた7つの技術課題
原理検討用の簡易水位センサで水位計測を行った結果、見えて来た技術課題は以下の通りです。
1. センサ背面からの感度
FDC2214は1fFレベルの検出感度を持っており、アクリルケースの外側からセンサ設置面を手で触れるだけで容量値が変化し、あたかも水位が変化したかのように見えてしまいます。センサ背面に対してシールドを適応するなどの対策が必要です。
2. センサとの接続に使用した被覆付き銅線の感度
センサとFDC2214を繋ぐ被覆付き銅線に触れると、容量値が変化し、あたかも水位が変化したかのように見えてしまいます。シールド付きのケーブルに変更するなどの対策が必要です。
3. センサ・パターンの形状と水位変化に対する感度
今回ご紹介したシンプルなセンサ・パターンだけでなく、異なるセンサ・パターンについても水位変化に対する感度を調査致しました。詳細内容を記載することは出来ませんが、計測精度とセンサにかかるコストを考慮してセンサ・パターンを決定する必要があります。
4. 環境変化への対応
環境変化によって検出した容量値が変化します。例えば、環境温度の変化を捉え、自動的にキャリブレーションするような機能が必要になります。
5. 対象物による容量値の変化の差異
今回の原理検討では水道水を対象にして計測を行いましたが、水道水を緑茶に変更するだけで容量値の変化量が変わります。対象物が決まっていれば、不純物として検出することが出来ますが、対象物が多種多様な場合には物質自体の検出が必要になります。
6. 防水性能
防水にはカバーフィルムを用いましたが、防水性能や汚水への対応が必要になります。防水対策として使用する素材や厚みによってはセンサの感度に影響を与えます。
7. 水位変換アルゴリズム
水位変化に対する容量値の変化を計測しましたが、実用途としては容量値から水位へ変換するアルゴリズムが必要になります。IoT/M2M展に出展した水位計測のアルゴリズムの詳細を記載することは出来ませんが、簡易的な手法を用い、取得した容量値から水位へ変換しています。
最後に
全4回でお送りした記事はいかがでしたでしょうか。実際に自分の手を動かしてやってみないと気付けないことがたくさんありましたね。
IoT/M2M展での展示風景は IoT PoV 検証モデル展示コーナー 水位計測事例 でご紹介しておりますので、是非ご覧ください!
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※本掲載記事は当時の製品ステータスを元に執筆されております。製品をご検討の際は、最新の情報をメーカー若しくは代理店へご確認の上進めて頂けますようお願い申し上げます。
関連情報
静電容量式の水位センサを作ろう
第1回 水位センサの試作方法
第2回 検出原理を解説
第3回 最適化するには?
第4回 最適化した水位センサ