絶縁規格の移行
絶縁規格は、デバイスの進化や適用範囲の拡大に合わせて改訂が行われてきました。
VDE 0884-10は、磁気結合型および容量結合型アイソレーター向けの絶縁性能評価規格として広く採用されていましたが、後継規格であるVDE 0884-11が発行され、その後の移行期間を経て適用終了となりました。
現在では、アイソレーター向け絶縁性能評価の国際規格としてIEC 60747-17への移行が進んでいます。
Skyworksのアイソレーター製品についても、従来取得していたVDE 0884-10認証からIEC 60747-17認証へ移行しており、現在はIEC 60747-17に基づいた絶縁性能評価が行われています。
絶縁性能は何を評価しているのか
絶縁デバイスの性能は、大きく分けると次の3つの観点から評価されます。
・通常動作時に絶縁性能を維持できること
・雷サージなどの一時的な過電圧に耐えられること
・長期間使用しても絶縁性能が劣化しないこと
これらを評価するために、耐電圧試験やサージ試験、長期信頼性試験などが実施されます。
IEC 60747-17で規定されている代表的な評価パラメーターは以下の通りです。
|
パラメーター |
内容 |
備考 |
|
VIORM |
最大繰り返し絶縁電圧 |
TDDBによる寿命評価に基づいて 規定されるピーク電圧 |
|
VIOWM |
最大動作絶縁電圧 |
TDDBによる寿命評価に基づいて 規定される動作電圧 |
|
VIOSM |
最大サージ絶縁電圧 |
サージ試験で評価される |
|
VIOTM |
最大過渡絶縁電圧 |
一時的な過渡電圧に対する耐量 |
|
VIMP |
最大インパルス電圧 |
空気中のインパルス電圧に対する耐量 |
VDE 0884-10とIEC 60747-17の違い
IEC 60747-17では、従来のVDE 0884-10と比較して、アイソレーターの絶縁性能に対する評価項目や評価基準が見直されています。
代表的な変更点の一つがサージ試験です。VDE 0884-10では10kVユニポーラサージ試験による評価が行われていましたが、IEC 60747-17では10kVバイポーラサージ試験(正極性・負極性の両方向)へ変更されており、サージ耐性に対する評価条件が強化されています。
また、TDDB(Time Dependent Dielectric Breakdown)に基づく長期信頼性評価も追加されており、瞬間的な耐電圧性能だけでなく、長期間にわたって絶縁性能を維持できるかどうかも評価対象となります。
基礎絶縁と強化絶縁の違い @ IEC 60747-17
IEC 60747-17では、絶縁性能を
基礎絶縁(Basic Insulation)、強化絶縁(Reinforced Insulation)
の2つに分類しています。
評価項目は共通ですが、強化絶縁ではより厳しい要件が課せられています。
一例として、IEC 60747-17での基礎絶縁と強化絶縁要求の主な差分を以下にまとめます。
IEC 60747-17の主な要求比較
|
項目 |
基礎絶縁 |
強化絶縁 |
|
VIOWM(最大動作絶縁電圧) |
TDDB評価に基づく |
TDDB評価に基づく |
|
VIOSM(最大サージ絶縁電圧) |
1.3 x VIMP |
1.6 x VIMPまたは10 kV以上 |
|
最低寿命 |
20年 x 1.2 |
20年 x 1.5 |
|
故障率 |
1000ppm |
1ppm |
表からも分かるように、強化絶縁ではサージ耐量、寿命要求、故障率に対して厳しい基準が設定されています。
注意点
VDE 0884-10でも強化絶縁の認証区分は存在していましたが、IEC 60747-17への移行に伴う評価基準の見直しにより、IEC 60747-17では基礎絶縁として評価される場合があります。
ただし、これは製品の絶縁性能が低下したことを意味するものではなく、評価基準の変更によるものです。従来製品の実績や絶縁性能が失われたわけではなく、新規格ではより厳しい条件で再評価されていると捉えることができます。
最新規格IEC 60747-17の強化絶縁に準拠するSkyworks製品ページ
最後に...
絶縁規格の基本的な考え方は共通していますが、規格ごとに評価方法や要求事項が異なるため、基礎絶縁や強化絶縁など認定結果が変わる場合があります。これは必ずしも製品の安全性が低下したことを意味するものではありません。
また、従来規格で強化絶縁として認証されていた製品についても、お客様システムの使用条件や要求仕様によっては引き続き強化絶縁として使用できる場合があります。最終的には、製品に要求される絶縁性能、使用電圧、過電圧条件および適用規格を含めたシステム全体の設計評価に基づいて判断いただく必要があります。
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