「値段が安い」という理由で振動子を選んでいませんか?
「基板設計のための部品選定の際に、セラミック振動子や水晶振動子を選んでいる」という方はこの記事を読まれている方の中にも多くいらっしゃるかと思います。
振動子を選定する理由をお客様に伺うと、MCU側で振動子を指定されているケースや、過去から使い慣れているから、といった理由を耳にします。
ただし「値段が安価だから」という理由の場合は、もちろん間違いではないのですが…少しだけ注意が必要です。
振動子と発振器の基本的な違いは、簡単ですが こちらの記事にて触れておりますので、是非ご覧になってください。
ここからは、クロックの部品選定時に“振動子”を普段選定している方にも「発振器」という選択肢を持っていただくと何が良いのか?を
「マッチング評価にかかるコスト」 「EMI対策にかかるコスト」 「信頼性」といった3つの観点で深掘って解説していきます。
クロックの部品選定時に抑えておきたい3つのポイント
① 振動子のマッチング評価にかかるコスト
早速ですが、振動子(左:Crystal) と 発振器(右:Oscillator)の周辺回路は、以下図で示すような違いがあります。

参考資料(出典:SiTime Corporation)
まず、“振動子”ですが、SoCやMCU内の発振回路と接続し電圧を加えることで任意の周波数で振動します。
そのため、システムのタイミングを設計する際には、面倒な “マッチング評価が不可欠”となります。
メーカーに対応してもらっている方も多いかと思いますが、「汎用品なのにこれだけ時間が必要なのはなぜだろう?」と、ふと疑問に思った方も多いのではないでしょうか。
エンジニアの方が「マッチング評価に数時間や数日といった時間を使うのは非常にもったいない」と思いませんか?
とあるお客様では、ミスマッチが起こった際、そのトラブルシューティングのために40時間を要しました。以下がその工数計算例となります。
エンジニア工数(1時間あたり\10,000と仮定)
・ 40時間(0.25人月) × \10,000 = \400,000
⇒ 部品単価の単純比較だけでは分からないリスク…
量産台数が5,000units だとすると…
\400,000 ÷ 5,000units = 1units あたり \80 > 平均的な振動子と発振器の価格差 \35
※ DigiKeyなどの一般的なweb 価格参照
対して、“発振器”の場合、ワンパッケージでモジュール化されているため、“マッチング評価は不要”です。
部品単価の単純比較では見えてこない、「エンジニア工数やコスト」といった部分まで、検討の判断材料とすることが、お客様にとってのメリットになるのがおわかりいただけたでしょうか?
② EMI対策にかかるコスト
多くのエンジニアの方がEMI(電磁干渉)ノイズの対策のために様々な工夫を施して設計をされていると思います。
クロックが原因となるケースも例外ではありません。
“振動子”は受動部品が故に、オンデバイスでこういった対策をすることはできません。
シールドを使用したり、スペクトラム拡散機能の付いたクロックジェネレーターを採用するなど、様々な対策が必要です。
これらの対策も、もちろん工数がかかりますし、プロトタイプの試作や評価が遅延すると、試験設備費用なども発生します。
製品リリースが遅れ、機会損失も生みかねません。
その点SiTimeがリリースする発振器は、発振器そのものにスペクトラム拡散機能が付いている製品がラインナップされています。(ラインナップ)
また、ほとんどの汎用シリーズで信号の立ち上がりと立ち下がりの時間を調整することが可能です。
これはSiTimeのプログラマブル発振器ならではの機能となります。
国内のほとんどの楽器・音響メーカーに採用される理由がここにあります。
同じ製品シリーズで、異なる出力ドライブ/エッジレートの型番を数個ずつサンプルで取り寄せて載せ替えて評価していただくことが可能です。
マクニカでは、製品への書き込みツールをご用意しております。いつでもサンプルのご相談をいただければと思います。
③ 信頼性
SiTimeのMEMS発振器のDPPMは1以下、MTBF は20億時間以上です。
これは一般的な水晶振動子や水晶発振器に比べて数10倍優れた値となります。
※DPPM: 100万個出荷中の故障数(Defective Parts Per Million)
※MTBF:平均故障間隔(Mean Time Between Failures)
恐らく一度ご経験されたことがある方はご存知だと思いますが、振動や衝撃にも水晶デバイスは非常にデリケートです。
周辺部品も、当然不具合のリスクとなります。
水晶振動子の信頼性に起因した、解析に要するリソース(多くの場合同じ社内でも関係者が増える)、コスト、時間は、
単純に表面的な部品単価だけで選ぶべきではない理由の一つとなります。
最後に
今回は、クロック生成のために、"振動子だけではなくMEMS発振器も"という新たな選択肢をご提案させていただきました。
以上解説したような理由から、「MEMS発振器」という新たな選択肢を取り入れていただけることのメリットを感じていただけたのではないでしょうか。
部品選定にお困りの際はお気軽にお問い合わせください。代替製品のご提案など、すぐさま対応いたします。
また、汎用的に用途でお使いいただける売れ筋製品を以下に記載しますので、ご興味ありましたらぜひご覧ください。
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