光トランシーバーモジュール(以下、光トランシーバー)は、電気信号と光信号の相互変換を行うもので、光通信システムには欠かせない重要なコンポーネントです。万一、光通信システムで障害が発生した場合には、光トランシーバーの性能に問題がないかを確認する必要がでてきます。
その場合・・・
・光トランシーバーには電気信号を外部に取り出すためのコネクタ端子がないので、測定器の接続方法がわからない
・そもそも光トランシーバーの何を測定すればよいのかわからない
と迷う方も多いのではないでしょうか。そこで本記事ではこれらの疑問を解決し、障害に備えるための基礎知識を下記の2つのポイントに触れながらご紹介します。
①専用の評価基板を使って、測定器と同軸ケーブルで接続する
②代表的な性能として、BER(Bit Error Rate)と信号波形をチェックする
測定器の種類と測定内容
まずは光トランシーバーの性能を測定するために必要となる、具体的な機材や測定方法について説明します。
必要となるボードや機材
光モジュールコンプライアンスボード
光モジュールコンプライアンスボード(Module Compliance Board、以下MCB)は、光トランシーバーの電気信号を外部機器とやりとりするための同軸ポートを備えている治具ボードです。SFP用、QSFP用、CFP用など、各フォームファクターに合わせたボード製品があります。
ボードの手前にはQSFP28の光トランシーバーを挿入するポート、ボードの反対側には電気信号の入出力を行うための同軸コネクター群があります。
ビットエラーレートテスター
ビットエラーレートテスター(Bit Error Rate Tester、以下BERT)は、ランダムビットパターンを送出するパルスパターンジェネレーターと、ビットエラーを検出するエラーディテクターで構成される測定器です。自分が送出した0または1のランダムパターンを再度受信し、伝送中にビット化けがどのくらい起こっているかを測定し、エラーの確率がBit Error Rate(以下、BER)で表現されます。BERは、どのくらいの割合で正しく伝送されているかを知ることができる、ベーシックな性能の1つです。例えば、1012個のデータを送ってエラーが1個発生した場合、Bit Error Rate = 10-12のように表現します。
デジタルサンプリングオシロスコープ
デジタルサンプリングオシロスコープ(Digital Sampling Oscilloscope、以下DSO)は、高速デジタル信号の波形を表示するオシロスコープです。一般的にはEYEパターンと言う、0または1が連なるランダムパターンを重ね書きして、どのくらい波形がキレイなのか、乱れていないのか、を観測します。EYEパターンは、どのくらい波形がキレイに伝送されているかを知ることができる、ベーシックな性能の1つです。
具体的にはこのような波形となります。
具体的な測定方法
では、光トランシーバーのビットエラーレートやアイパターンを測定する具体的な方法を見てみましょう。
光トランシーバーのビットエラーレート
光トランシーバーのビットエラーレートは、BERTとMCBを使って測定することができます。
光トランシーバーの光信号をどう扱うかで、2つの方法があります。
・そのまま折り返し(ループバック)して測定する
・光減衰器を使って光パワーを調整しながら測定する
次の測定方法で説明します。
光トランシーバーの受信感度
光減衰器を使うと、光トランシーバーの受信感度測定も合わせて行うことが可能です。ATT(Attenuator、光の減衰器)を使って、光パワーに応じてBERがどのように変化するかをチェックできます。
光トランシーバーの光波形
光トランシーバーの光波形(アイパターン)は、BERTとMCB、DSOを使って測定することができます。
光トランシーバーの電気波形
MCBからの電気信号を観測することで、電気波形のアイパターンを測定することも可能です。(この場合は、電気信号用のDSOが必要となります。)
システム障害に備えて、測定環境を整えておくことが大事
今回は、光トランシーバーのBERとEYEパターンの測定方法を、測定器のご紹介も交えて紹介しました。
光トランシーバー単体だと、外部の測定器を接続するのが難しいですが、マルチレーン社のボードや測定器を活用すると簡単に接続して評価できるこがお分かりいただけたかと思います。
光トランシーバーを用いたインフラネットワーク構築には、これらの測定環境を整えておくことでシステム障害をより早く解決することができます。
マルチレーン社の測定器にご興味をお持ちの方は是非お気軽にお問い合わせください。