ドライバの負荷容量』で 50 pF もの容量負荷は存在しない、と述べました。とは言っても、IC の入力容量はゼロではないし、信号の立ち上がり時間も速くなったので、数 pF の容量でも何らかの影響はあるはずです。今回は、

1. 反射係数

(1) 反射係数

反射の程度は、反射係数によって表されます。図1 は特性インピーダンス Z1 の線路(線路1)に、特性インピーダンス Z2 の線路(線路2)を縦続に接続した場合の電圧と電流とを示します。線路1 に電圧 v1 が入射した場合、特性インピーダンスが Z1 なので、i1 = v1 / Z1 の電流が電圧と組になって伝搬します。これが 2つの線路の接続点に差しかかると、一部が反射して、残りは線路2 に伝わります。ここで、反射係数を r とすると、v1 の r倍、すなわち、反射波は r × v1 となり、電流は r × i1 となります。接続点において、電圧は加算、電流は向きを考えて加算、すなわち減算となるので、図1 に示す式により反射係数が求まります。

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図1 反射の原理 反射係数

(2) 特別な条件における反射係数

反射係数の式から、Z2 が無限大、すなわち開放の場合は反射係数は 1 となり、短絡の場合には -1 になることがわかります。Z1 と Z2 とが等しい場合には、反射係数は 0(ゼロ)となって、反射は生じません。反射係数が 0 のことをインピーダンス整合といいます。

(3) キャパシタが存在するときの反射係数

キャパシタは信号が加わった瞬間は短絡で、しばらく時間が経過すると最終的に開放となります。すなわち、反射係数が -1 から +1 まで変化します。

2. キャパシタによる波形

以下は、容量の影響を強調するために少し大きなキャパシタの例を示していますが、実際はせいぜい 1 pF 程度なので、影響はこれほど大きくはありません。なお、ここでは、12 mA ドライバと特性インピーダンス 50 Ω の 10 cm の線路を想定しています。12 mA ドライバ出力抵抗は 22 Ω で、10 cm の線路の遅延時間は、およそ 0.7 ns です。

(1) 遠端の容量による反射

図2 は、遠端に容量が存在するときの近端の波形です。遠端で瞬間的に反射係数が -1 になるために、逆相の反射が生じます。それが、1往復後の凹状の反射です。いったん凹んだ波形は次第に反射係数が +1 になるので、容量がないときのおよそ 3.7 V あたりに近づいていきます。途中でさらに容量反射が重なるので、2往復付近で少し凹みが生じます。

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図2 遠端容量反射の近端波形

図3 は、遠端の波形です。遠端は近端のような波形の凹みはみられず、単なる波形のなまり程度です。

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図3 遠端容量反射の遠端波形

(2) 近端の容量による反射

図4 は、同様に近端容量による遠端の波形を示します。C = 0 のときでも、ドライバの出力抵抗の 22 Ω による反射係数が、(22 - 50) / (22 + 50) = -0.39 なので、1往復半の付近に逆相の反射が生じます。キャパシタにより、さらにこの反射係数の絶対値が大きくなり、逆相の反射が大きくなっていることがわかります。なお、近端の波形は、容量による変化はほとんどありません。

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図4 近端容量の遠端波形

3. ドライバの駆動能力と遠端容量による影響

図5 は、遠端容量が 5 pF のときにドライバの駆動能力を変化させたときの遠端波形です。反射の様子は大きく変化しますが、遅延時間を決定するスレッショールド電圧付近は、ほとんど遅延時間に変化がないことに着目してください。高速動作を期待して、駆動能力の高い(大きい)ドライバを用いることが無意味であることがわかります。

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図5 遠端容量とドライバの駆動能力

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