基板の配線パターンは、表面層(または外層)と中間層(内層)とに大別されます。表面層は寸法のパラメータが少ないので、比較的簡単に寸法を決めることができます。

表面層の寸法のパラメータ

典型的な表面層の断面図を 図1(a)(『基板の断面寸法の決め方』の 図2(a) と同じ)に示します。パターン厚 t は、『基板の製造プロセス』で述べたように 18 um の銅箔に 25 um のめっきがプラスされて、公称 40 um などの厚さになります。この 40 um の厚さは、電気的にも、たぶん製造的にもあまり好ましくありません。このことについては、また別の機会に触れることにします。

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図1 表面層の断面

パターン幅 W は、『基板の断面寸法の決め方』で述べたように、上底が小さい台形となります。この銅のパターンの表面には、はんだブリッジを避けるためにソルダレジストを施します。実際には、図1(b) のように銅パターンの表面を銅箔に沿って覆っています。図1(a) と (b) では、特性が若干異なります。いずれにしても、基板メーカがプロセス条件まで含めてきちんと解析するので、回路設計者やボード設計者はそこまで厳密に計算する必要はないと考えます。

パラメータ決定の手順

特性に影響するパラメータは、図1(a) のパターン幅 W、パターン厚 t、パターン間ギャップ G(S = スペースということもあります)、GND からの高さ h が支配的で、その他に、レジスト厚 SR、基板の比誘電率 εr1、レジストの比誘電率 εr2 も多少影響します。レジスト厚と比誘電率は、特殊な仕様以外は基板メーカによって決まるので、予めその値に設定しておきます。ここでは、SR = 10 um、εr1 = εr2 = 4.7 とします。パターンの断面は前述のように台形ですが、パラメータを変化させる場合には、簡単のために長方形とします。

(ε:ギリシャ文字小文字のイプシロン)

(1) 目標値

ここでは、例として、Z0 = 50 Ω、ξ = 0.15 を考えます。

(ξ:ギリシャ文字小文字のクサイ)

(2) 最小パターン幅 W

基板メーカからコストアップにならない範囲で、最小の W を提示してもらいます。ここごは、W = 0.1 mm とします。

(3) h の決定

解析ソフトを使って h を決めます。h は使用するプリプレグの厚さで決まり、その標準値は基板メーカが準備しています。自由に連続には決められません。プリプレグ 1枚の厚さは、例えば、40 um とか 50 um なので、h はこれらの倍数になります。レジスト厚は、例えば 10 um にします。

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図2 hに対する特性インピーダンスZ0

図2 は、h に対する特性インピーダンス Z0 を解析した結果です。h = 84 um のときに Z0 = 50 Ω となります。プリプレグが 40 um の倍数ならば 80 um を選びます。このとき、Z0 = 48.7 Ω、50 um の倍数なら 100 um を選び、Z0 = 54.7 Ω になります。いずれの場合も、50 Ω 系と考えてよい値です。

(4) G の決定

G によって、クロストーク係数 ξ を決定します。

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図3 Gに対する クロストーク係数ξ

図3 は、h に対するクロストーク係数 ξ を解析した結果です。h = 80 um のときに、目標の ξ = 0.15 に対して、G = 135 um、h = 100 um のときには、G = 162 um になります。1本のパターンが占有する幅は、W + G で、面積で考えるとこの 2乗になります。h = 80 um なら、(W + G)^2 = 55231、h = 100 um なら (W + G)^2 = 68729 となり、24 % 程度の占有率の違いがあります。基板メーカと、h = 80 um が実現できないかを協議する意味が十分にあります。

なお、設計者が h について要望を出さないと、基板メーカが適当に選んでしまう例を多く見かけます。例えば、h = 200 um なら、Z0 = 50 Ω にするには、W = 300 um になってしまいます。是非十分に協議することをお薦めします。

今後は、差動伝送の場合について述べ、さらに実装密度を上げるアイデアについて紹介いたします。続きは、『基板の表面層の断面寸法~その2』をご覧ください。

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