電圧レギュレータとは?

最近の電子回路は、電源電圧の精度をある程度必要とする場合が多いので、整流後に平滑するだけで使用することは少なくなってきました。
電圧の精度を必要とする場合には、電圧レギュレータを用います。

電圧レギュレータの種類(分類)

電圧レギュレータとは、安定化される前の直流電源を安定な電源に制御して出力するものです。図1 に電圧レギュレータの分類を示します。

制御方式は、リニア(またはアナログ)方式とスイッチング方式とに大別されます。リニアとスイッチングとは用語として対をなしていないので、連続式と離散式といった方が良いかも知れません。基本的には、リニア方式は電圧(振幅)軸で制御し、スイッチング方式は時間軸で制御します。

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図1 電圧レギュレータの分類

リニア方式

リニア方式は目的とする電圧(例えば 5 V)に対して、それよりもやや高い(変動があっても構わない)電圧(例えば 8 ~ 9 V)を入力とします。この両者の差(3 ~ 4 V)を出力が一定になるように、アナログ的に制御するものです。

図2 はリニア方式の原理です。図2(a) はシリーズドロップ型で、出力が一定電圧になるように直列に入った抵抗(実際にはトランジスタ)を変化させます。
図2(b) は負荷に並列に挿入した抵抗(実際にはトランジスタ)を変化させて、トータルの負荷電流を一定になるように制御して、出力電圧を一定にします。

両方式とも抵抗に電力を消費させるため、電力の利用効率が低く、大電力の回路にはあまり用いられません。シリーズドロップ型の代表的な例は、3端子レギュレータです。図2(a) の入力端、出力端とグラウンドの 3端子で構成されるのでこのような名前で呼ばれます。IC のパッケージもトランジスタと同じものを用います。

シリーズドロップ型は、可変抵抗と負荷とで電圧(すなわち電力)を分圧します。したがって、負荷電流が多く(負荷が重く)なると電力の利用効率が低く(悪く)なります。
シャント型は入力からみた電流を一定にするように制御するので、全体の電力は一定です。したがって、負荷が軽いほど電力の利用効率が悪くなります。シャント型は基準電圧を構成する場合などに多用されます。
ツェナーダイオードは、最も簡単なシャント型レギュレータといえます。

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図2 リニア方式

スイッチング方式

スイッチング方式は、インダクタ(コイル)とスイッチング素子を用いて、インダクタに蓄えられたエネルギーを利用して所望の電圧を得ます。基本は、図3 の降圧(ステップダウン)型、図4 の昇圧(ステップアップ)型および 図5 の反転型です。いずれの方式も、S1 と S2 のスイッチは、片方が導通のとき他方は切断のように動作します。



まず、図3 の降圧型はS1が導通したときにはS2が切断なので、L を経てキャパシタ C と負荷 R とに電流が流れます。次に、S1 が切断、S2 が導通になると、L を流れる電流は S2 を経由して流れ続けようとします。



この S1 が導通する時間(デューティ比)を大きくすると、入力電圧に近づき、小さくするとデューティ比に比例して出力電圧は低くなることは容易に理解できることと思います。所望の電圧を得るために、出力電圧を基準電圧と比較して、出力電圧が低い場合にはデューティ比を大きくするように、逆に、出力電圧が高い場合にはデューティ比を小さくするようにスイッチを制御します。



実際の回路は、スイッチ S1 には MOS トランジスタを、S2 にはダイオードを用います。リニア方式に比べて、損失はスイッチとダイオードだけなので、低損失化が可能です。



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図3 降圧型の基本回路

図4 の昇圧型は少し理解が難しいですが、スイッチ S1 が導通することによって、インダクタにエネルギーを蓄え、次に S1 が開放となって、そのエネルギーを S2 を経由して負荷側に伝えて、入力電圧より高い電圧を得ることができます。

出力電圧は、1周期の時間をスイッチ S1 が切断する時間で割った商に比例します(脚注1)。実際の回路は、S1は MOS トランジスタを、S2 はダイオードを用います。出力から入力への帰還は、降圧型と同様です。

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図4 昇圧型の基本回路

図5 の反転型は S1 を導通して L に電流を流し、次に S1 を切断、S2 を導通すると、L の電流が負荷から L に向かって継続して流れ、出力電圧は入力に対して反転します。出力電圧は、S1 が導通する時間を切断する時間との比で決まります。S1 の導通するデューティ比を 0.4 とすると出力は入力の -2/3 倍に、デューティ比を 0.5 とすると -1 倍になります。

上記、昇圧型と反転型はリニア方式では実現できません。

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図5 反転型の基本回路

脚注1
周期を 1 として、S1 が導通する時間の比率(デューティ比)を 1/3 とすると、切断する時間の比率は 2/3 となり、出力電圧は入力電圧の 3/2、すなわち、1.5倍となります。S1 が導通する時間の比を 0.5 とすると、出力電圧は入力電圧の 2倍となり、3倍の電圧を得るためには S1 のデューティ比を2/3 にすれば良いことがわかります。

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