電圧検出に最適化された絶縁アンプ「ADuM4195-1」

これから電圧検出回路を設計する方は、「高電圧の絶縁測定にはどの絶縁アンプが良いのか知りたい」「差動出力とシングルエンド出力なら、どちらにメリットがあるのか知りたい」と情報を探しているのではないでしょうか。

今回は、電圧検出に最適化された絶縁アンプ「ADuM4195-1」について、その特長と、電圧検出に適している理由を紹介します。ぜひ参考にしてください。

ADuM4195-1

電圧検出用の絶縁アンプに求められる性能とは?

電圧検出用の絶縁アンプは、高電圧測定の精度向上を図るために使用されます。その目的の達成には、どのような特性を持つ絶縁アンプが適しているのでしょうか。電圧検出用の絶縁アンプの主な用途と、それぞれが絶縁アンプに求める要件を挙げてみましょう。

■電圧検出用の絶縁アンプの用途と要件

 ●産業機器における絶縁測定(電力変換装置、シグナルコンディショナーなど)

   ・過酷な温度環境でも、高い精度で測定できること
   ・部品削減によって、信頼性を向上できること
   ・堅牢性があり、長期間の使用に耐えうること


 ●再生可能エネルギーインフラにおける絶縁測定(インバーターなど)
   
・高電圧環境でも、安全性を確保できること


 ●EVにおける絶縁測定(パワートレイン、充電装置、バッテリー管理システムなど)
   
・限られた実装スペースに合わせて、回路を小型化できること
   ・過酷なノイズ環境でも正確な測定によって、航続距離の延伸を実現できること


今回ご紹介するアナログ・デバイセズ社の絶縁アンプ「ADuM4195-1」は、こうした要件を満たすのに最適な製品です。

絶縁アンプ「ADuM4195-1」とは

ADuM4195-1には、どのような特長があるのでしょうか。ADuM4195-1は、固定ゲイン、シングルエンド出力の絶縁アンプです。主な特長として以下の点があり、高精度な電圧検出回路の実現に貢献します。

ADuM4195-1の回路ブロック図
ADuM4195-1の回路ブロック図

■高い絶縁性能を備えたコンパクトなパッケージ

 ・沿面距離を増加させた8ピンのワイドボディーSOIC

■高精度出力

 ・出力電圧範囲:0.25V~4.3V (typ.)

 ・出力オフセット電圧:±5mV (max.)

 ・出力ゲインエラー:±0.5% (max.)


■低消費電力

 ・4.9mA (max.) primary

 ・7.3mA (max.) secondary

とりわけ、ADuM4195-1が高電圧測定に最適な理由として挙げられるのが、「シングルエンド出力」「広い入出力電圧範囲 (0.25V~4.3V) 」「高入力インピーダンス (1GΩ (typ.)) 」という3つの特性です。これにより、部品点数の削減、省スペース化、精度や信頼性の向上が可能になります。詳しく紹介していきましょう。

シングルエンド出力、広入出力電圧範囲によるメリット

まず、シングルエンド出力であることは、電圧検出回路にどのようなメリットをもたらすのでしょうか。一般的な差動出力の絶縁アンプを使った場合とADuM4195-1を使った場合、それぞれの回路構成を考えてみましょう。下の図は、両者を比較したイメージ図です。

シングルエンド出力の絶縁アンプで部品点数を削減し、信頼性を向上
シングルエンド出力で部品点数を削減し、信頼性を向上

 

通常、電圧検出回路では、絶縁アンプからの信号をマイコン内蔵のADコンバーターに送ります。差動出力の絶縁アンプの場合、2つの端子から出力された差動信号をシングルエンド信号に変換したうえで、ADコンバーターに入力しなくてはなりません。また従来の絶縁アンプの入出力電圧範囲は2V程度のものが多く、ADコンバーターに適した電圧範囲に調整するために、増幅とレベルシフトが必要になります。

 

これらの信号調整には複数のオペアンプなど外付け回路が必要のため、部品点数が増え、さまざまな誤差要因が増加します。例えば、オペアンプのオフセット電圧やゲインエラー、抵抗部品の温度特性などが誤差の要因となります。回路の面積が拡大した上に、キャリブレーション工程が必要になる場合もあります。

 

一方、ADuM4195-1はシングルエンド出力のため、ADコンバーターの前段における差動シングル変換が必要ありません。また、入出力電圧範囲が広いため、増幅回路も不要です。そのため、部品点数を削減し、省スペースかつ信頼性の高い回路を実現できます。設計や評価も容易です。

高入力インピーダンスによるメリット

次に、入力インピーダンスが高いことは、どのようなメリットをもたらすのでしょうか。

下図を見てみましょう。ADuM4195-1と一般的な差動出力の絶縁アンプのそれぞれについて、信号源から直接VINへ入力する場合 (CASE1) と、抵抗分圧を介してVINへ入力する場合 (CASE2) における誤差をグラフ化したものです。このグラフを見ることで、それぞれの抵抗分圧の有無による誤差の違いがわかります。

ADuM4195-1の入力インピーダンスが高く、システムの誤差要因を最小化できる
高入力インピーダンスにより、システムの誤差要因を最小化できる

  

ADuM4195-1を用いた回路では、CASE1CASE2でほぼ同じ結果が得られます。抵抗分圧の有無にかかわらず一致した結果が得られるのは、ADuM4195-1の高い入力インピーダンスによるものです。ADuM4195-11GΩという高い入力インピーダンスを持つため、抵抗分圧を介して入力した場合にも、バイアス電流による誤差を抑えることができます。また、ADuM4195-1ADコンバーターの前段の外付け回路を必要としません。入力段の誤差要因となるバイアス電流がなく、出力段の誤差要因となる外付け回路もないため、回路全体の誤差を最小化できます。

これに対して、入力インピーダンスの低い絶縁アンプを用いた回路では、CASE1CASE2で発生する誤差が異なっています。抵抗分圧を介して入力した場合にバイアス電流が誤差に大きく影響してしまうためです。前項のとおり、差動出力のアンプでは外付け回路を追加することによって誤差要因が増加します。入力インピーダンスも低いと入出力の両方に誤差要因があるため、回路全体の誤差の増加や変動が起こります。

実際のアプリケーションでは抵抗分圧を介して入力するケースが中心となるため、ADuM4195-1の高い入力インピーダンスは大きなメリットになります。ADuM4195-1を使用することで、高い精度と信頼性を持ち、省スペースな電圧検出回路を容易に実現できます。

今回は、電圧検出に最適化された、アナログ・デバイセズの絶縁アンプADuM4195-1を紹介しました。評価ボードがありますので、ぜひお試しください。

 

評価ボード EVAL-ADUM4195-1
EVAL-ADUM4195-1

 
 
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アプリケーション例

  • EVのバッテリー電圧検出
  • 再生可能エネルギー用インバーター

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