新人エンジニアの赤面ブログ

こんにちは、3月まで大学で化学を学び、オームの法則すら存在を忘れていた山のフドウです。

私はマクニカに技術職として入社し、実習形式でライントレースカーを作りながら電気電子基礎を学ぶ製作実習をおこないました。

この製作実習を通して学んだことや経験したことを共有できるような内容で計4回連載していきますので、温かい目で見ていただきますよう、よろしくお願いいたします。
本ブログは、電源から作るライントレースカー(DC/DCコンバーター仕様検討編)の続きとなります。

前回までのあらすじ

マクニカに技術職として入社した私は、新人の登竜門として伝統的に受け継がれている製作実習にて、電気電子について学びました。今回作ったライントレースカー完成図はこちらです。

図1:完成図
図1:完成図

前回のブログでは目的のライントレースカーの心臓部、DC/DCコンバーターの仕様検討をおこないました。ちょっとした振り返りになりますが、このライントレースカーの仕様は、図2のように9V電池を電源として、DC/DCコンバーターを通して6Vに降圧する流れになっています。そして、はんだ付けをするのでパッケージは図3のような形(足が生えている)がいいですね!

図2:ライントレースカーの仕様

図2:ライントレースカーの仕様

図3:半導体IC

図3:半導体IC


さあ、これを踏まえて大事なDC/DCコンバーターのICを探しに森の奥へ向かいます。

選定作業

探してみよう

まずはアナログ・デバイセズ社の降圧DC/DCコンバーターのセレクションテーブルを見てみましょう。なんということでしょう。あまりにも多い製品数ですね!私はこの中から選定してみましょうと聞き、初めは固まってしまいましたよ。名前も形も全部同じにみえるので、本当にジャングルに迷い込んだように目を凝らしていました。

図4:違いがわからないイメージ(自作)
図4:違いがわからないイメージ(自作)

このまあどれもこれも同じに見えるセレクションテーブルなのですが、アナログ・デバイセズ社のDC/DCコンバーターはたっくさんの種類がありながらもそれぞれが違った特徴を持っています。電源っていっても電池だけじゃないのはもちろん、電子機器を設計する際に、設計者の望む仕様に合ったDC/DCコンバーターを選定するわけですね。だからこんなたくさんの種類があるわけです。1つずつ見ていくと夜が明けてしまうので、図5のようにフィルターを使って絞っていきます。

図5
図5

赤線で囲った部分を自分が欲しいものにカスタマイズしていくことで求めるICにたどり着くことができます。

例えば、赤丸の部分から必要なパラメーターを自分で出したり隠したりして、調節します。そして赤四角のようにパラメーターの数字を変更して、製品を絞っていきます。ただ、今回ははんだ付けをするということで、図2のようなICがほしいので、パッケージのフィルターから 8-Lead SOICっていうのを選びました。 (先輩に教えてもらっただけ)

図6のように選ぶとLT1765というのが出てきました。

図6
図6

ほうほう、LT1765のステータスを見る限り今回の仕様は満たせそうですな。
という形で私はこのICを選びました。(LT1765)

実際にはデータシートをちゃんと読んでしっかり確認する必要があるわけですが、まずは、入出力電圧と出力電流が規定範囲内かどうかの確認や、温度上昇の計算は確実に見ておきたいですね。もちろんですが、LT1765を1つ繋げばDC/DCコンバーターとして動くわけではありません(正直最初は動くと思ってた)。LT1765だけでもいろんな使い方ができるので、自分がやりたい使い方にICの外側で調整していく必要があるのです。

回路を作ってみる

LT1765を使って回路を作っていく作業に入ります。
といっても回路なんて作ったことのない人間が最初に作るのがDC/DCコンバーターの回路というのは、動作のイメージすらできなかったので、先輩に教えてもらいながら1個1個のICの周りのインダクターやコンデンサー、抵抗の値を決めていく必要がありました。ただ、やはり1から回路を作っていくのは至難の業なので、図7のようにLT1765のページ下部にある評価キットを参考にすることにしました。

図7

図7

この評価キットというのは、このICが実際にどのように動くのか、自分の仕様で問題ないかなど、大量に発注する前に技術者が評価するためものです。これにはIC以外の部品や回路情報など多く載っています。私はこのページを参考にしながら、まずはLT1765の評価ボードをそのまま自分の回路に転用しました。インダクターとフィードバック抵抗の定数はデータシートのアプリケーション情報をよーーく見ながら計算して、それで完成したのがライントレースカー用の回路です。(図8)

また、弊社ホームページにて計算について詳しくまとめられた記事もあります。
降圧型DC/DCコンバーターの定数計算と注意事項

今考えると図8はとても基礎的で忠実な回路ですが、その時の自分にはいっぱいいっぱいで完成した回路でしたね。(すごい時間かかりました)

図8:回路図
図8:回路図

次は、この回路を用いてライントレースカーの心臓となるDC/DCコンバーターを現実に落としていく準備に移ります。

実装計画

図8のように作った回路はその回路の通りにユニバーサル基板にはんだ付けをしないと今回のライントレースカーはスタート地点に立てません!

ここからがライントレースカーづくりというわけです。
とはいってもはんだ付けなんて中学技術の授業でしかやったことないし。なんなら勉強していく中で回路の面積は小さい方がいいと知って、細かいはんだ付けはすごい不安でした。そう、回路の通りにといってもDC/DCコンバーターは実装のやり方次第で良くも悪くもなるのです。例えば配線1本が長すぎるとそれだけでインダクタンスにも抵抗にもなってしまいます。回路上では必要ないところにそんなものがあると困ってしまいますね。

図9:イメージ画像 - 道のり(配線)が長いと困ってしまいますね

図9:イメージ画像 - 道のり(配線)が長いと困ってしまいますね


電源のレイアウトはすごい奥が深いです。素人は必ずや失敗するような関門と先輩から教わったので、事前勉強はかなり入念におこないました。
私は以下のサイトをかなり読み込みました。
電源レイアウトとEMI
 - ホットループはちーさくちーさく
 - グラウンドはべったりと広く

これらを意識して図10のように何度もメモに設計図を書き起こしました。

図10
図10

図10のように、メモ帳のマス目を基板の穴と見立てて何度も試行錯誤をしました。どの組み合わせが電源レイアウトの条件を満たしているか、一番コンパクトにまとまっているかなど、この作業に3日を有しました。

なんといっても失敗したくないという思いが強かったので、慎重に慎重に設計図を書き起こしていました、、、、

誰に合格をもらったわけでもなく、動かしてみないとわからない以上、自分で納得できるまで突き詰めたので図10を用いてはんだ付けをおこなうことにしました。

細かい細かいはんだ付け作業は次回作にて!

次回

次回は、今回設計したDC/DCコンバーターとその周辺回路を、実際にはんだ付けをおこなったあと、動かしていきます!そのあとライントレースカーを作るべくその他部品を乗せていく作業に移ります!

製作実習ではここからの手を動かしていく作業が一番楽しかった思い出です。読んでいただいていた方もなにか作りたくなるような話が書きたいところです^0^

以上、新米エンジニア山のフドウの記念すべき2話目でした。

電源から作るライントレースカー記事一覧

DC/DCコンバーター仕様検討編

・DC/DCコンバーター実装準備編