新人エンジニアの赤面ブログ

こんにちは。新人FAEのトンパです。

私は新卒でマクニカに入社し、製作実習でモノづくりを体験しながら回路設計や実装について学んできました。学生時代は有機化学を専攻しており、電気電子の知識が全くない状態からのスタートだったので、度々苦労しました。

そこで本記事では、私が製作実習でモノづくりを体験しながら回路設計や実装について学んだことを紹介しています。前回は、DC/DCコンバーターの選定について紹介しましたが、今回は、DC/DCコンバーターの基板設計について紹介します。

はじめに

使用する部品を決定した私は、ついに基板設計の工程に入りました。
実際に設計をおこなう前はそこまで苦労しないだろうと思っていましたが、こんなにも気にする点があるのかと設計の難しさをひしひしと感じました。

図 1:作製した回路図
図1:作製した回路図

データシートの推奨回路図を参考にして回路図を作製した私は「よし、後はこれを実装するだけだ。」と思っていました。しかし、先輩から基板に実装する際のレイアウトも考えないといけないことを教えて頂きました。レイアウトと言っても基板上で部品と部品を繋げるだけだろうと思って始めたのですが、全くそういう訳ではありませんでした。

ここからは、基板のレイアウトを考える際に学んだことについて紹介します。

ホットループ

DC/DCコンバーターのレイアウトを考える際にはホットループに気を付ける必要があります。ホットループとは、スイッチングによって電流が不連続で流れる部分のことであり、DC/DCコンバーターのEMIノイズの発生に大きく影響を及ぼします。

降圧型DC/DCコンバーターのホットループは図2の赤枠で囲った部分になります。

図 2:降圧型DC/DCコンバーターのホットループ
図 2:降圧型DC/DCコンバーターのホットループ

それでは、どのようにホットループを意識すればいいのしょうか。

それは、ホットループをできるだけ小さくする (配線を短くする) ことです。配線が長くなってしまうと寄生インダクタンスが大きくなり、より大きなEMIノイズが発生してしまいます。図2 (右) の様にスイッチング素子を内蔵しているICでは、入力コンデンサーの配置が重要であり、ICの入力ピンの直近に設置しできるだけ太い配線で接続することを意識してください。

また、昇圧型DC/DCコンバーターではホットループの場所が異なります (図3の赤枠部分)。したがって、昇圧型DC/DCコンバーターの場合では、出力コンデンサーの配置に注意が必要です。

図 3:昇圧型DC/DCコンバーターのホットループ
図 3:昇圧型DC/DCコンバーターのホットループ

当然他の部品配置や配線も重要ですが、最も注意したのはホットループのレイアウトです。ちなみに私は、レイアウトを完成させるまでに2日以上かかってしまいました。

GND

DC/DCコンバーターのみに関わらず基板設計においてGNDの取り方はとても重要です。GNDはその回路の電圧の基準となるので、安定したGNDになる様な設計をする必要があります。

それでは、私がGND設計の際に注意したことを3つ紹介します。

1. 広いGNDプレーン

やはり電位を安定させるためにはGNDをできるだけ広く取ることが望ましいです。私の場合、部品周辺で広いGNDを取ることが難しかったため、基板の1部に大きなGNDプレーンを設けることを意識して設計しました。

2. すべてのGNDを繋げる

設計をする際には複数のGNDを設けると思いますが、これら全てのGNDはどこかで統一する必要があります。これは最初にも記しましたが、GNDは回路内の電圧の基準となるため回路内のGNDは全て同電位にする必要があるからです。もしGND間が未接続で、そのGND間に電位差が生じている場合、同じ信号でも電圧が異なってしまいます。

図 4:GND間の電位差
図 4:GND間の電位差

3. GNDの分離

先ほどはGNDを全て繋げろと言って次は分離?と思われる方がいるかもしれません。安心してください、分離と言っても最終的には一つのGNDに接続します。プリント基板の場合ですと、1層目ではパワーGNDとシグナルGNDを分離し、2層目で共通のGNDにそれぞれ接続するというイメージです。

なぜGNDを分離する必要があるのか、簡潔に言うとノイズによる悪影響を抑えるためです。回路内の電流は一定で流れる事は無く、その変化する電流と回路内の抵抗成分によって電圧としてノイズが発生します。GNDが共通になっていると、ある回路で発生したノイズが流れ込み、他の回路に悪影響を及ぼす可能性があります。特に大電流が流れるパワー系GNDと検出系GNDが共通の場合は、大電流によるノイズが制御系回路に流れ込み誤作動を引き起こす恐れがあります。

したがって、ノイズに敏感な回路や電流変動が大きな回路のGNDは分離しなければならない場合があります。また、GNDに接続する配線を可能な限り短く・太くすることによってもノイズ軽減が可能です。基板設計においてGNDの取り方は最も重要で難しいと言っても過言ではないと思います。

弊社ホームページにて、パワーGND・シグナルGNDにフォーカスした記事がありますので、こちらも合わせてご参照ください。
レギュレーターにおける高いスイッチング周波数を取り扱うためのPCBレイアウト (3)

まとめ

今回は、私がDC/DCコンバーターの基板設計において学んだホットループとGNDについて紹介しました。基板設計は回路図を作製するまでと思っていましたが、レイアウトを考えることの重要さを学ぶことができました。

次回は基板の実装編です。どのような基板になっているのかお楽しみにしてください。

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