新人エンジニアの赤面ブログ

こんにちは。新人FAEのトンパです。

私は新卒でマクニカに入社し、製作実習でモノづくりを体験しながら回路設計や実装について学んできました。学生時代は有機化学を専攻しており、電気電子の知識が全くない状態からのスタートだったので、度々苦労しました。

そこで本記事では、私が製作実習でモノづくりを体験しながら回路設計や実装について学んだことを紹介しています。前回は、DC/DCコンバーターの種類について紹介しましたが、今回は、DC/DCコンバーターと周辺部品であるインダクターの選定方法について紹介します。

DC/DCコンバーターの選定ミス

突然ですが、私はDC/DCコンバーターの選定に一度失敗しています。
私は、以下の仕様を満たす降圧型DC/DCコンバーターとしてLTC1877を選定しました。


■仕様

入力電圧:6V
出力電圧:3V
負荷電流:560mA


■LTC1877のスペック

入力電圧:2.65 ~ 10V
出力電圧:0.8 ~ 10V
最大出力電流:約750mA (Vin:6V、Vout:3.3V)

選定した部品を実際に実装してみると、後続のモーターの回転が遅すぎることに気づきました。原因探索をしていると、モーターの負荷電流が予想以上に大きく (瞬間的には1A以上も負荷を引いていました) 、LTC1877では十分な供給ができていないことが分かりました。

この一つのミスで選定・実装をすべてやり直すことになってしまいました。。。

そこで念には念をと、余裕を持って3A出力が可能なLT1765を再選定して実装すると、無事モーターが高速で回転することを確認できました。この経験から、デバイス選定をおこなう際には、仕様の値に対してマージンを見積もることが大切であると学びました。

選定時のポイント

ここからは、私がDC/DCコンバーターを選定する際に、特に確認したポイントを3つ紹介したいと思います。

ポイント1:入出力の電圧、最大出力電流

当然ですが、DC/DCコンバーターの選定をおこなう際には、入力・出力の電圧、最大出力電流を確認し、仕様に合ったICを選定する必要があります。

私は、最初にこの3つのパロメーターを設定して使用できるデバイスの調査を始めました。弊社取り扱いのアナログ・デバイセズ社のホームページでは、図1のように各値を設定してICを絞り込むことができます。

図 1:アナログ・デバイセズ社の製品検索ページ
図1:アナログ・デバイセズ社の製品検索ページ

しかし、これは簡易的な調査のため、実際に検討を進める際には、データシートを読んで特性を確認する必要があります。特に、出力電流に関しては、同じICでも入出力の電圧値によって出力できる電流値が異なるので注意深く見る必要があります。

図2は、LTC1877の入力電圧と出力電流の関係を示したグラフです。データシートには、このようなグラフが掲載されていることが多いので、ぜひ確認してください。

図 2:LTC1877の入力電圧と出力電圧の関係

図 2:LTC1877の入力電圧と出力電圧の関係

ポイント2:最大デューティー比

電圧に関しても同様にデータシートで確認する必要があります。その際に注意しないといけないのがデューティー比です。降圧型DC/DCコンバーターのデューティー比は、Vout/Vinで表すことができ、ICによって最大デューティー比が決まっています。その最大デューティー比を超えるような電圧は出力できません。

例として、最大デューティー比が80%、入力電圧が5Vの降圧型DC/DCコンバーターでは、4Vより高い電圧は出力できません。つまり、入出力の電圧が仕様の範囲内に収まっていても、条件によっては使用できないことがあるので注意が必要です。

ポイント3:パッケージ

ICの選定においてパッケージを確認することも重要です。性能として仕様を満たしていても、実装することができなかったら、使用することはできません。

私は、ユニバーサル基板への実装が目的だったので、電極が外に出ているSOPパッケージのICを選定し、Dip変換基板上に半田付けをしました (QFNパッケージのようにICの背面に電極があるタイプでは、半田付けが難しいため)。このように、IC選定時には性能だけではなく、どのようなパッケージになっているかを確認することも必要です。また、スイッチ素子内蔵のDC/DCコンバーターはデバイス自身も発熱することから熱抵抗値も考慮する必要があります。

図 3:パッケージの種類 (a) SOP、(b) QFN、(c) Dip変換基板
図 3:パッケージの種類 (a) SOP、(b) QFN、(c) Dip変換基板

インダクターの選定

DC/DCコンバーターの選定後は、周辺部品の選定もおこなわないといけません。コントローラータイプのICでは、FETの選定がとても重要になりますが、私は、FET内蔵型のICを選定しましたので、今回は割愛させて頂きます。FETの選定について知りたい方は、以下記事をご参照ください。
第四回 DC/DCコンバーター回路でのMOS-FETの選定方法 (前編)

その他の周辺部品の中では、DC/DCコンバーターの性能に大きく影響を与えるインダクタの選定が重要だと感じたので、ここからはインダクタの選定方法について紹介します。インダクターの選定をおこなうためには、必要なインダクタンス値を計算する必要があります。

今回は、降圧型DC/DCコンバーターにおいてのインダクタンス値の算出方法を紹介します。

\[ L_{(H)} = \frac{(V_{in} - V_{out}) x V_{out}}{V_{in} x f_{sw} x ΔI_{L}} \]

fsw = スイッチング周波数

ΔIL = インダクターのリップル電流

上記の式で必要なインダクタンス値を求めることができます。

この式より、ΔILを許容すると小さなインダクターが使用可能であることが分かります。しかし、下の式の様にΔILが大きくなるとリップル電圧も大きくなってしまいます。

\[ ΔV_{out} = ESR x ΔI_{L} \]

ESR = 出力コンデンサーの等価直列抵抗

そこで、一般的にはΔILを最大出力電流の約40%に設定して必要なインダクタンス値を計算することが多いですが、データシートの記載事項も合わせて確認してください。インダクタンス値の計算にはとても苦労したので、今回紹介した計算方法は、ぜひ覚えて頂ければと思います。

また、インダクター選定時にはインダクタス値だけではなく、インダクターの定格電流にも気を付けて選定する必要があるので注意してください。

まとめ

今回は、DC/DCコンバーターおよびインダクターの選定について紹介しました。

本来確認するポイントはもっとたくさんあると思いますが、今回紹介したことが少しでもお役に立てれば幸いです。また、私と同じ失敗をしないためにも、マージンを持った選定をおこなって頂ければと思います。

次回はついに基板設計についてです。お楽しみに。

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・DC/DCコンバーターの選定

DC/DCコンバーターの基板設計

DC/DCコンバーターの実装

DC/DCコンバーターの評価

おまけ編