ノイズを嫌うアプリケーションでは、スイッチング・レギュレータを使用できないため、リニアレギュレータを使用します。その際、電位差が大きい場合や負荷の電流値が大きくなった場合、リニア・レギュレータの発熱が問題となります。

従来の方法

ヒートシンクや筐体に熱を逃がす

大きな筐体で設計する際などは、TO-220のパッケージのリニアレギュレータを使用して、発熱に関しては筐体に逃がしたり、図1の様な形で大きなヒートシンクをネジ止めで取り付けて効率的に放熱を行っていました。

最近は、筐体・基板の小型化が必要となり、ヒートシンクを利用できない場合などは、アプリケーション的に消費電力を抑える様に設計し、QFNパッケージなどを用いてボードへの放熱を行うことが多くなっています。

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図1: TO-220パッケージとヒートシンク

発熱を抑える方法

スイッチング・レギュレータと低ドロップLDO構成

FPGAのコア電圧などの様に、ボード上にスイッチング・レギュレータを用いても良いが、PLL用の電源はローノイズにしたい場合もあります。

そのような場合には、一旦、スイッチング・レギュレータで5Vや3.3Vなどの低い電圧に落として、PLL用の電源としては低ドロップタイプのLDOを用いることで発熱を抑えることが可能です。

アナログ・デバイセズ社のLT3070-1は、ドロップ・アウト電圧(入力-出力の電圧差)が 85mVあれば、リニア・レギュレータとして正常に動作します。図2の様に、前段でLTC3415により1.3Vを作り、LT3070-1にて1.0V / 5Aの出力を作る電源回路を構成することが可能です。

3.3Vから直接1.0Vを作った場合には、パワーロス(Pd)は、11.5W [ (3.3V-1.0V)x5A ] となります。
LTC3415を介して、1.3Vから1.0Vを作った場合、パワーロス(Pd)は、1.5Wとなり10W電力損失を低減することにより、LT3070-1の発熱を抑えることが可能です。

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図2: LT3070-1 回路例

リニアレギュレータの並列接続による構成

スイッチング・レギュレータを同一ボード上で使用できない様なシステムにおいては、先程のLT3070-1の様な回路構成は使用できません。

そのような場合は、リニア・レギュレータの並列接続による構成を考える必要があります。
並列接続を行うためには、並列接続したリニア・レギュレータの出力電流のバランスをとることが問題となります。出力電流のバランスを取るには、リニア・レギュレータの出力に「バラスト抵抗」を使用する方法があります。一般的にバランスを良くするには、バラスト抵抗を大きくする必要がありますが、逆にロードレギュレーションが悪くなる副作用が有ります。このトレードオフの関係が、並列接続の設計の難易度をあげてしまいます。

バラスト抵抗内蔵のLT3080-1

アナログ・デバイセズ社のLT3080-1は、並列接続可能なリニア・レギュレータです。
図3に示すように、25mΩのバラスト抵抗が内蔵されており、均等な電流分担が可能な設計になっています。
図3は、2つの並列接続で2A出力となっていますが、並列接続を増やすことで更に出力電流を大きくすることが可能です。また、2Aの負荷電流が必要な回路に対して、LT3080-1を2個→4個並列に増やした場合は、1個当たりの負荷電流の負担が500mAと少なくなる為、発熱少なくなり放熱設計が楽になります。

リニア・レギュレータしか使えず、放熱設計に苦労されている方に最適なリニア・レギュレータです。

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図3: LT3080-1のパラレル接続

 

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