電気回路の電源は、ベタ・パターンを用いて電源のインピーダンスを低くし電圧ドロップが発生しないように注意して基板設計を行うことが基本的なルールです。
モジュールをシステムに組み込む場合
基板設計では、電源はベタ・パターンによって低インピーダンスで供給することが可能です。
しかし、筐体に入っているシステム電源やFAカメラ、モーターなどを組み合わせて作る最終製品やシステムは、電源をケーブルで接続して供給しています。
この時、どうしても長いケーブル(配線)になってしまうことがあり、電源のインピーダンスが高くなってしまったり、インダクタンスが大きくなったりしてしまいます。
長いケーブルのインダクタンスの影響
電源が不安定(発振)
細くて長いケーブルや配線は、インダクタンス成分が大きくなります。
電源供給のケーブルに大きなインダクタンスが発生している状態では、電源が不安定な状態(発振)になる可能性があり注意が必要です。
詳細は、[電源コラム] 第1回 DC/DCコンバータから音がする!を参照してください。
過電圧破壊の可能性
インダクタンスが大きくなると、電源が不安定になる以外に電源投入時に過電圧が発生しシステム(ボード上)の電源を過電圧で壊してしまう可能性があるので注意が必要です。頻繁に電源ON/OFFするシステム(例:始業時に電源のONを行い、就業時に電源をOFFする)では、十分注意してください。
過電圧で破壊する詳細は、[電源コラム] 第2回 犯人は長い配線? を参照してください。
長いケーブルのインピーダンスの影響
システム設置する際の煩雑さ
例えば、セキュリティーカメラなどは、大元のシステムから離れた場所に長いケーブルでカメラを設置したりする場合があると思います。
また、工場内の製造ラインの構築で、システム同士を組み合わせる場合に制御システム部と駆動部が長いケーブルで接続する場合などがあると思います。
その場合、長いケーブルで電源を供給する際は、設置の際にボリュームなどを使用して供給する電源電圧の微調整を行っている場合が多いと思います。電源の品質は、設置するオペレータの経験に頼ることになります。
環境変化や経年劣化
設置の時に微調整した、電源電圧値は当然環境変化(温度変化)や経年劣化などにより変動する可能性があります。
当然、その分を見越して初期値の設定やメンテナンス時に確認を行っていると思いますが、正しい設定かメンテナンスの頻度が適当であるか不安が残る作業になります。
設定電圧の自動調整ソリューション
アナログ・デバイセズ社 にパワー・システム・マネージメント(PSM)と言う製品があります。
こちらの製品を使うことで、電圧精度をダイナミックに設定電圧の±0.5%以内に調整することが可能です。
3.3V出力設定してあるDC/DCコンバータの①VOUTが、3.23Vを出力したとします。
PSM(LTC2977)は、①VOUT値を②VSENSEラインで3.23Vと読み取ります。
DC/DCコンバータの出力が0.07V低くなっている為、PSMから③VDACラインに調整用の電圧を出力しDC/DCコンバータの出力を3.3Vに調整します。
④VFBラインに調整用の電圧が印加されることで、DC/DCコンバータの出力①VOUTが3.299Vとなります。
このPSMを搭載したシステムの場合、接続された負荷によって出力電圧が変動した場合自動的に調整されます。
また、ケーブルドロップ分の補正を行うことに特化した製品、LT6110と言う製品があります。
次の回路図の様に、DC/DCコンバータ(LT3976)と負荷が20 フィート長の 18 AWG 銅線を介して接続されている場合などに有効です。
LT6110を使用することで、劇的にロードレギュレーションの特性が向上します。
詳細は、デザインノートDN529を参照してください。
これらの製品を使うことで、従来オペレータの方がマニュアルで電圧調整したり、定期点検で電圧値の調整を行っていたことが、全て自動で実施することが可能になります。
これにより、オペレータの工数削減とシステムの安全性能を高めることが可能です。