回路規模が大きなFPGAを使用する際は、FPGAが電源に要求する電流量が増えます。
その結果、電源回路に求められる電流量も多くなります。
スイッチング・レギュレータの並列接続
FPGAが要求する電力が増加すると、大元の12V電源の電流値が1つのスイッチング・レギュレータ回路やモジュールでは容量が足りなくなる場合が発生します。
そのような場合、使用しているスイッチング・レギュレータを変更して大容量の出力が可能な回路を検討する必要が出てきます。
新しい電源回路を検討することも解決策の一つですが、採用実績のある電源回路を並列運転することで電流容量をカバーすることも解決策の一つです。
ここで注意すべき点は、並列運転可能な電源回路であるか確認することです。
図1のように単純に出力を繋いで電源回路の並列運転を行った場合、図1のようにスイッチング・レギュレータ(A)の出力が12.2V、(b)の出力が11.8Vだった場合、出力を接続して負荷を引いていくと途中でスイッチング・レギュレータ(B)が電流を引き込んで負荷として動作してしまう可能性があり非常に危険です。
このような事が発生しないよう、並列運転可能なスイッチング・レギュレータの選定が重要です。
ダイオードOR接続
「並列接続可能なスイッチング・レギュレータではなくても、図2のようにダイオードORの回路構成にすることで並列接続できますよね?」 と、考える方もいらっしゃると思います。
このOR回路は、片側の電源が壊れた際の冗長性を考えるさいに使用するのが一般的です。仮に片側のスイッチングレギュレータ(A)が壊れた場合でもスイッチング・レギュレータ(B)が電源を供給し続けるように考えられています。従って、片側のレギュレータが壊れた場合、1つのレギュレータで100%負荷を供給できるように設計するので、それぞれのスイッチング・レギュレータは最大50%負荷までに抑えて使います。従って、並列接続しても電源回路としての出力容量は倍にはなりません。
冗長性を考えずに、最大の出力を出すように考える場合は、安全性を考え、片側の電源が壊れた場合にシステムをオフするようなOn/Off機能を外部の回路で組む必要がでるので注意が必要です。
更に、大電力を供給する場合、このOR回路に使っているダイオードの損失分による発熱が大きくなるため、熱設計も加味しダイオオードの形状も大きくすることを考えた設計が必要です。
電流バランス制御用ICを使う
ダイオードの損失を気にすることもなく、面倒な電流バランス回路設計が不要な制御ICがあります。
アナログ・デバイセズ社製品LTC4370(電流バランス制御付きダイオードOR回路用IC)を使用することでスイッチングレギュレータの並列接続が可能となります。
LTC4370は、逆流防止用のダイオードの代わりにFETを使用することが出来るので、電力損失も非常に小さくすることが可能となります。また、ダイオード使用時と同じように逆流防止もFETで行います。
図3のような回路構成で、VINAとVINBにスイッチング・レギュレータ出力の12V/5Aを接続することで、トータルの出力を12V/10Aを得ることが可能になります。
並列接続可能なスイッチング・レギュレータを使う
アナログ・デバイセズ社の多くのスイッチング・レギュレータは、並列接続可能となっています。今回は、並列接続して大電力供給におすすめのμModule製品の紹介です。大電力供給の際は、基板のレイアウト起因よる誤動作が発生する可能性が高い為モジュール製品をお勧めしています。
LTM4650-1は、25A出力2チャンネルがワンパッケージ化された製品です。こちらの製品は、2チャンネルの出力を纏めると1チャネルで50A出力が可能となります。図4は、更に2つのモジュールを並列接続して100A出力可能な構成となっています。
LTM4650-1は、最大6個のモジュールを並列接続して出力電流を300Aにすることが可能です。