【受動部品(LC)の基礎講座シリーズ】LCの基本 ~Part3 インダクターの特性~

インダクター、コンデンサーは電子回路を作るうえでなくてはならない部品です。その動作の基本的な役割を解説します。
今回の内容は、Part3 "インダクターの特性"になります。

他の記事もご覧になりたい方はまとめページがありますので、そちらをご覧ください。

インダクターの特性

理想的なインダクターは必要なインダクタンス成分のみで構成され入力信号の制限や損失ゼロであるようなものですが、実際は異なります。

実際のインダクターの特性をWurth Elektronik社WE-MAPIシリーズの74438313010を使って解説します。

図1:74438313010電気的特性

・Inductance:インダクターのインダクタンス値。Test conditionsにおける条件の時に1μH±30%となる。

 公差や電流値等の条件によって値が変化することに考慮が必要です。

・Rated Current:温度上昇に基づく定格電流。1.4A流した場合⊿T=40℃typとなる。

図2:74438313010温度上昇カーブ

図3:74438313010インダクタンス直流重畳特性

図2が特性カーブになります。

損失はP=RI2[W]ですので、半分の電流で使用した場合の⊿Tは計算値で1/4の10℃になります。

ACで動作する場合はAC損失も考慮が必要となります。

・Saturation Current:インダクタンス変化値に基づく定格電流。3.4A流した場合、初期値に対して約20%インダクタンス値が減少する。

 

図3が特性カーブになります。

これより大きな電流を流すとさらにインダクタンスが低下し磁気飽和に近づいていきます。

磁気飽和を避けるためにこの値に対してマージンをもった設計が望ましいと言えます。

・DC Resistance:インダクターの直流抵抗値。@20℃におけるtyp値とmax値。

 温度係数を持つため、高温動作時はこの値は大きくなります。

・Self Resonant Frequency:自己共振周波数の値

 動作周波数はこの値に対して十分低い必要があります。

次項のインダクターの等価回路で自己共振周波数について解説します。

インダクターの等価回路

インダクターの等価回路は一般的に図4のように表されます。

図4:インダクターの等価回路

RsはDC Resistance(以下DCR)成分で主に電圧降下や発熱の要因に、Cpは浮遊容量成分でこれにより自己共振現象が発生し使用できる周波数に制限がかかります。

インダクターの自己共振周波数(以下SRF)はこのように算出できます。

 

 

インダクターの特性で示した74438313010ではSRFは111MHzであるので、L=1[μH]を代入するとこのインダクターCpは約2pFと算出できます。

これらをLTspiceでシミュレーションした結果を図6で示します。約111MHzが共振点でインピーダンスが最大値をとり、そこから減少していることがわかります。

図5:74438313010等価回路

図6:74438313010周波数特性

理想インダクターであればCp=0であるため周波数が高くなるにつれインピーダンスが増加します。

関連記事の “LCの基本 ~Part2 インダクターの動作~” も参照してください。

この内容をまとめると下記になります。

・インダクターはDCR成分と浮遊容量成分を持っている

・SRFまではインピーダンスが増加し、誘導性特性を持つ

・SRF以降はインピーダンスが減少し、容量性特性となりインダクターとして機能を失う

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