WEBENCH®の使い方-電源設計-応用(1)-Simulationが役立つ場面

WEBENCH® Power Designer(以下WEBENCH® )は、Texas Instruments社(以下TI社)が提供する電源製品向け回路設計・シミュレーションツールです。日頃、WEBENCH® をご使用のお客様から、電源製品におけるシミュレーションの活用方法について多数お問い合わせを頂きます。本記事では実際にお客様から頂いた質問と弊社エンジニアが回答した内容を元に、皆さまにも参考にして頂ける情報をQ&A形式でご紹介します。

シミュレーションの活用方法をみる前に...

題材としてTI社電源製品 "TPS54320" を選びました

シミュレーションの題材として、アプリケーションはACアダプターを想定し、一般的な仕様要件を満たすTI社電源製品TPS54320を選びました。TI社 WEBサイトのTPS54320製品ページより、例として、

入力電圧 = 12V、出力電圧 = 5V、負荷電流 = 2.5A

こちらの条件を入力し、「Open Design」をクリックするとWEBENCH® 画面が立ち上がります。

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TI社 オフィシャルサイト TPS54320製品ページ

シミュレーションって何ができるの?

と思われた方もいらっしゃいますよね。電源製品で実行できるシミュレーションは5つあり、SIMULATEページより選択できるようになっています。
メニューからいずれかを選択し、「START」をクリックします。
するとシミュレーションが開始され、暫くするとそれぞれのシミュレーション結果を確認できる状態になります。

ワンポイント:STARTを押してから反応までしばらく時間がかかる場合があります。
何度もSTARTを押すといくつもSIMULATEされてしまいますので、お気をつけ下さい。

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各シミュレーションの意味は、下記の通りです。

  • Bode Plot:ボード線図(周波数応答)
  • Input Transient:入力過渡応答
  • Load Transient:負荷過渡応答
  • Startup:起動特性
  • Steady State:定常特性


...と箇条書きで言われても、分かりづらいですよね。それでは実際にお客様がお困りの際に受けた質問と併せて、各シミュレーションの活用方法を見ていきましょう。

実際のQ&Aをみていきましょう!

Q:基板設計の前に、動作時の電圧・電流波形を確認する方法はありますか?

A:"Steady State" で通常動作時の波形を確認できます

メニューから「Steady State」を選択し、「START」をクリック。すると、出力電圧の波形が出力されます。

各端子の波形を確認するには、「ADD WAVEFORMS」をクリックすると、各端子ごとにチェックマークがありますので、選択すれば波形が追加されます。

下図は一例として、インダクター電流とスイッチ電圧を表示させています。

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ワンポイント:波形のスケールや波形の色を変更するには、縦軸/横軸でクリックすると「EDIT」から変更ができます。

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Q:基板設計の前に、動作時の電圧・電流波形を確認する方法はありますか?

A:"Bode Plot" で電源ICの伝達特性(安定度)を確認できます

"Bode Plot" とは、ゲインの絶対値(dB)とその位相(degrees)を縦軸に取り、周波数(Hz)を横軸に取ったグラフのことを指します。電源ICの伝達特性を図示する手法のひとつで、電源ICの安定度を確認する指標となります。

メニューから「Bode Plot」を選択し、「START」をクリックすると、Bode Plot図が表示されます。
左側縦軸(赤字)のゲインの絶対値=0dBのときの、右側縦軸(青字)の位相の値を読み取る事で位相余裕を確認できます。これにより伝達特性、安定度を確認することができます。

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ワンポイント:波形上部の「Show Marker」にチェックマークを入れるとより詳細な数値が容易に確認することができます。

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Q:基板設計の前に、電源起動時の動作を確認する方法はありますか?

A:"Startup" で動作波形を確認できます

"Startup" とは、起動特性のことを指し、電源ICを起動する際の動作波形を確認することができます。

メニューから「Startup」を選択し「START」をクリック。入力電圧(VIN)、出力電圧(VOUT)が安定するまでの時間と波形がグラフで表示されます。

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ワンポイント:「Schematic」にある、回路図の“Vin”をクリックしたときのポップアップ画面で実際の使用条件を入れて頂くことで、実機環境に近いシミュレーションが可能です。

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Q:入力電圧が変動した際のIC動作をシミュレーションできますか?

A:"Input transient" で変動時の動作波形を確認できます

"Input Transient" とは、入力過渡応答のことを指し、入力電圧が変動した際の電源ICの動作を波形で表示することができます。

本波形では変動が無いほうが、動作として安定しているといえます。下図の波形でも "Vout" と "Vin" が重なり、何の変化もない波形となっていますが、間違いではありません。

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Q:負荷が変動した際の波形を確認したいですが、何か方法はありますか?

A:"Load Transient" で負荷変動に応じた動作状況を確認できます

"LoadTransient" とは、負荷過渡応答のことを指し、負荷変動に応じた電源ICの動作状況を波形として確認できます。

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ワンポイント:実負荷に近い条件にしたい場合は、以下をお試し下さい。

  • "Iout" のアイコンをクリックしたときに現れるポップアップ画面で、Minimum Load Current(最少出力電流)、Initial Load Current(通常動作時の電流値)を設定頂く事で最小出力電流から通常動作電流値への変動状況を設定できます。
  • 電流自体のRise Time(立ち上がり時間)とFall Time(立下り時間)、Pulse Width(パルス幅)も設定できます。
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まずは、WEBENCH®を使ってみよう

様々なシミュレーション機能をご紹介しましたが、参考になりましたでしょうか。

TI社の電源製品をご検討、ご設計のお客様は、ほとんどの方々がWEBENCH® をお使いで、様々な用途でご活用頂いています。ぜひ記事をご覧の皆さまもご自身の用途に合わせた使い方をマスターしてみてください。

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