はじめに

Qualcomm社のIPQ Platformでは、SDK(Software Development Kit)の SPF.11 リリースにて IEEE 802.11mc に対応いたしました。IEEE 802.11mc は Wi-Fiアクセスポイントとクライアント距離を Wi-Fi電波を利用して計測するもので、GPS の届かない屋内における位置測定方法として利用可能です。位置が分かっている 802.11mc 対応のアクセスポイントが3つ以上アクセス可能であれば、それらとの距離を測定することによりクライアントの位置を特定することが可能になります。

距離計測のしくみ

WLAN Round Trip Time を利用した距離計測としては、以下の方法があります。
・1-Sided Round Trip Time
 アクセスポイントは、NULL フレームに対して ACK を送信するだけです。

・2-Sided Round Trip Time
 アクセスポイントは、802.11mc にて定義されたプロトコルを使用してタイムスタンプを利用した通信をおこないます。

1-Sided Round Trip Time


距離は、送信されたパケットとそれに対する ACK間の時間によって計算します。応答に必要な時間が一定ではないため、1-Sided Round Trip Time による測定は絶対距離の推定には適しません。

2-Sided Round Trip Time


プロトコルは、IEEE 802.11mc 標準を利用します。イニシエーター(スマホなどのステーション)および レスポンダー(アクセスポイント)の両方が、 802.11mc に対応している必要があります。レスポンダーの応答時間を考慮する必要がないため、より正確な距離測定が可能です。

IEEE 802.11mc の利用

IEEE 802.11mc の機能の利用するためには、レスポンダーとイニシエーターの両方が IEEE 802.11mc に対応している必要があります。

対応レスポンダー

SPF.11 以降を導入した、Qualcomm社製 Networking Proシリーズの評価ボードが利用可能です。今回は、IPQ8074A を搭載した評価ボード(AP.HK01)を利用します。IEEE 802.11mc を有効にするには、コマンド・リファレンスの LOWI (LOcation Wireless Interface) コマンドに関する設定関連資料 および プログラマー・ガイドを参照して LOWI 機能を有効にしてください。

AP.HK01

対応イニシエーター

Qualcom社製 Networking Proシリーズの評価ボードは、イニシエーターとしても動作します。しかしながら、コンセントから電源を得る評価ボードでは動き回って距離を計測するには不便です。Android 9(APIレベル 28) 以降では IEEE 802.11mc に対応していますので、IEEE 802.11mc が利用できる Android端末を利用するのが便利です。

また、テスト用に WifiRttScan というアプリが Google社より提供されているため、IEEE 802.11mc が利用できる Android 端末であれば簡単に動作を確認できます。

IEEE 802.11mc に対応した Android端末のリストは、以下に示す Android デベロッパーサイトのページにあります。

実際の動作

2-Sided Round Trip Time でご紹介した図において、

① FTM 要求

③ FTM 1

⑤ FTM 2

のパケットは以下の通りとなっており、動作していることが確認できます。

① FTM 要求

③ FTM 1

⑤ FTM 2

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