MOSFETの選定方法

はじめに

MOSFETを選定するうえで、検討しなければならない主なポイントは以下の6点です。

何 V 耐圧が必要か?
何 V でゲート駆動するか?
オン抵抗は何 mΩ に設定するか?
スイッチング周波数は何 Hz で駆動するか?
ドレイン電流は何 A がどれくらいの期間流れるか?
ピーク電力はどれくらいの期間に何 Wになるか?
パッケージサイズはどれくらいにするか?

以下、詳細を解説します。

耐圧の選定

MOSFETをスイッチングさせたときに配線のインダクター成分などの影響により、MOSFETをオフしたときにリンギングが発生することがあります。
MOSFETの耐圧はそのリンギングのピーク電圧よりも高い電圧の製品を選定する必要があります。
まずは、MOSFETのドレイン電圧の2倍の耐圧定格のMOSFET選定から始めて、実機評価結果から更に高い耐圧のMOSFETにするか、低い耐圧のMOSFETにするかを検討すると良いでしょう。

ゲート駆動電圧の選定

MOSFETはゲート電圧が高い方が低いオン抵抗を得ることができます。しかし、基板上では5 V以下の電圧で駆動するICがほとんどだと思います。
そのためMOSFETのゲート駆動用に高い電圧を用意するか、5 V以下のロジックレベルで駆動するかを検討する必要があります。もちろん、ロジックレベルで駆動可能なMOSFETをより高いゲート電圧で駆動することも可能ですが、ゲート閾値が低くなっているためMOSFETの誤オン動作が発生する危険性があります。

オン抵抗の選定

MOSFETのオン抵抗はMOSFETの導通損失に影響するパラメーターです。オン抵抗が低い方がMOSFETの導通損失は小さくなりますが、同じ製品世代のMOSFETではオン抵抗を小さくなるほど一般的にコストが高くなってしまいます。

スイッチング周波数の選定

MOSFETのゲート電圧立ち上がり時間は先述のゲート駆動電流とゲート電荷特性から見積もれます。
これらの関係からゲート駆動電流が高く、ゲート電荷が小さいMOSFETの方が高速にスイッチングできることになります。
ただし、MOSFETのゲート電荷はオン抵抗とトレードオフの関係にあるため、ゲート電荷を小さくするとオン抵抗が大きくなってしまいます。スイッチング損失と導通損失の兼ね合いから最適なゲート電荷、オン抵抗のMOSFETを選定する必要があります。

ドレイン電流の検討

MOSFETをロードスイッチのように常時オン状態で電流を流すような使い方の場合、データシートに規定されている連続ドレイン電流の規定を超えないようにする必要があります。
しかし、MOSFETはスイッチ素子として使われる部品のためオン・オフ動作が発生します。オン・オフ時にはVDSIDの遷移時間が存在し、その間のVDSIDの関係がデータシートに記載されているSOAグラフの安全領域内になるようにしなければなりません。

ピーク電力の検討

MOSFETをスイッチングさせる使用方法の場合には、そのMOSFETの電力パルス幅とそのデューティー比からデータシートに記載されている過渡熱抵抗グラフから使用条件時のジャンクション温度を算出し、定格ジャンクション温度を超えない条件で使用しなければなりません。
また、ピーク温度上昇を計算するには平均電力ではなくパルスのピーク電力を使って計算しなければならない点に注意が必要です。電力パルス波形が台形や三角形パルス、部分正弦波などは同じ総エネルギーの方形パルスに近似して計算することができます。

パッケージサイズの選定

アプリケーションの基板サイズ、放熱制約によってMOSFETのパッケージサイズを選定する必要があります。
最近のMOSFETベンダーからリリースされているシリコンパワーMOSFETのパッケージトレンドでは、150V以下は1cm角以下の表面実装DFNパッケージラインナップが多くリリースされています。
また、SiC MOSFETのような高電力アプリケーション向けMOSFETではTO-247パッケージが多く、一部表面実装タイプのラインナップも増えてきている傾向がみられます。

さいごに

最近では自動車やバイクの電動化が急速に進むと共に、産業分野でも自動搬送ロボット(AGV)などの人間と一緒に働くロボットが登場してきています。これらのアプリケーションで使われているアクチュエーターや高電力電源回路にはMOSFETが数多く使われています。
しかし、これらの回路では扱う電力が高いため損失も大きくなってしまします。結果として部品の発熱が高くなってしまうため、放熱性を高めるために大きいパッケージのMOSFETを選定しなければなりません。
ただし、大きいパッケージのMOSFETでは部品の重量も増え、アプリケーション全体の重量にも悪影響を与えてしまいます。
自動車やバイク、AGVなどは重量が重くなってしまうと燃費も悪化するため小型化、軽量化の需要もあります。
これらの課題を解決するためにはMOSFETの損失とパッケージ形状において最適な部品選定が必要です。最適な部品選定におけるご相談はお気軽に下記お問い合わせよりご相談ください。

またMOSFETについて、基本的な用語や知識について知りたい方は、下記記事を参照ください。
https://www.macnica.co.jp/business/semiconductor/articles/onsemi/142988

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