はじめに
そもそもMOSFETって何?、まずMOSFETについて基本的な内容を知りたい方に、MOSFETの基本的な用語や知識について、下記内容をそれぞれ詳しく解説します。
・MOSFETとは
・MOSFETの動作
・MOSFETの中のダイオード
・MOSFETの電子記号
・MOSFETの内部プロセス構造
・MOSFETの使用用途
・MOSFETのオン抵抗
・MOSFETの飽和領域
・MOSFETの寄生容量
・MOSFETの電荷容量
MOSFETとは
金属酸化膜半導体電界効果トランジスター(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)の頭文字を取ったもので、電界効果トランジスター(FET)の一種です。
MOSFETはN型半導体とP型半導体を組み合わせて作られていますが、その構造によってNチャネルMOSFETとPチャネルMOSFETと作り分けることができます。
MOSFETにはドレイン(Drain)、ソース(Source)、ゲート(Gate)、ボディー(Body)の4つの端子が存在しますが、通常、ボディー端子はソース端子とショートされているため、市販のMOSFETはドレイン、ソース、ゲートの3端子になっています。

MOSFETの動作
MOSFETはゲートとボディー間に電圧を印可すると、ゲート直下にP型もしくはN型半導体が反転したチャネルが形成されます。ボディーはソースとショートしているため、ゲートとソース間に電圧を印可することと同意と考えることができます。
これにより、ドレインとソース間が導通し、ドレインからソース、もしくはソースからドレインに電流を流れます。この特徴を活かしてMOSFETは「スイッチ素子」として電子回路部品として使われています。

MOSFETの中のダイオード
MOSFETはソースとボディーをショートさせていることにより内部のPN接合がダイオードとして働いてしまいます。
この寄生的に生成されるダイオードのことを「ボディーダイオード」と呼ばれています。
このボディーダイオードによって、NチャネルMOSFETではソースからドレイン方向に、PチャネルMOSFETではドレインからソース方向にゲート端子への電圧印可状況に関わらず電流が流れてしまうので注意が必要です。

MOSFETの電子記号
MOSFETの電子記号はボディーとソースのショート、ボディーダイオードを含めた次のような電子記号で表現されることがあります。

MOSFETの内部プロセス構造
MOSFETの、特に大電流を扱うパワーMOSFETでは、より損失を押さえるためにプロセス構造の改善が進められています。
以前はウエハーの表面にゲート電極がついているプレーナー型が主流でした。しかし、パワーMOSFETでの損失を押さえるためにゲート電極を埋め込むトレンチ型の製品が登場しました。
その後、そのトレンチ型をベースにさらに損失を押さえるために、シールドゲート型のパワーMOSFETが登場しました。
シールドゲート型MOSFETはトレンチ型MOSFETに比べてオン抵抗が低く、ゲート電荷も小さいという特長を持っています。さらに、寄生的にRCスナバーが内部に形成されるため、MOSFETのスイッチングに発生するリンギングが小さくなる傾向があります。

MOSFETの使用用途
MOSFETはスイッチ素子として働くため、電流のONとOFFを切り替える目的で多く使用されます。
具体的にはDC/DCコンバーター回路やモータードライブ回路のパワースイッチ素子、ロードスイッチ回路などの使用用途で使われています。

MOSFETのオン抵抗

MOSFETはスイッチ素子として使われると説明しましたが、実際にはゲートとソース間の電圧によってドレインとソース間の抵抗値が可変する可変抵抗として考えることができます。
右のグラフはオンセミ社NチャネルMOSFET”NTMFS5C404N”の伝達特性です。このグラフではドレイン-ソース間電圧(VDS)が10Vの時にゲートーソース間電圧(VGS)を変化させるとドレインに流れる電流(ID)も変化することを示しています。
ここで、VDSが固定に対してVGSの変化に伴ってIDが変化していることから、MOSFETのドレイン-ソース間にはゲート-ソース間電圧に依存して変化する可変抵抗が存在していると言えます。このMOSFETにドレイン電流が流れているときのドレイン-ソース間に存在する抵抗をMOSFETのオン抵抗[RDS(on)]と呼びます。
これらのことから、MOSFETはデジタル的にオン・オフしているのではなく、オン抵抗が可変して電流が流れているというイメージを持つ必要があります。
MOSFETの飽和領域

先ほど、MOSFETのドレイン電流IDはオン抵抗によって制限されていると説明しましたが、VDSを上昇させていくとIDがそれ以上上昇しない飽和領域に到達します。
MOSFETの出力特性グラフのOhmic領域(線形領域)ではRDS(on)が働き、VDSに対してリニアに電流が増加していますが、Active領域(飽和領域)ではVDSに依存せずほぼ同じIDが流れています。この領域ではMOSFETは定電流源のような動きをすると考えることができます。
線形領域はVGSが高い電圧になるほど広がるため、MOSFETの低オン抵抗動作を求める場合は高いゲート電圧をMOSFETに印可します。
MOSFETを使用するときはこの飽和領域で使用するか、オン抵抗が働く線形領域で使用するかをアプリケーションの要件に合わせて検討する必要があります。
MOSFETの寄生容量
MOSFETにゲート-ドレイン間(CGD)、ゲート-ソース間(CGS)、ドレイン-ソース間(CDS)に寄生容量が存在しています。
これら3つの寄生容量から入力容量(CISS)、出力容量(COSS)、帰還容量(CRSS)は次のように定義されており、これらの特性からMOSFETのスイッチング特性を判断することができます。
具体的には、CISSの大きい・小さいではMOSFETのVGS電圧の傾きに影響を与えるため、MOSFETをオン・オフさせるまでの時間に影響が出ます。
同様にCOSSの大きい・小さいではMOSFETをオフさせたときに残留する電流に影響を与えるため、MOSFETの出力がオフするまでの時間に影響が出ます。
CRSSの大きい・小さいではMOSFETのオン・オフによるVDS電圧の遷移期間にドレイン-ゲート間に流れる電流によりゲート電圧が変化しないプラトー電圧が現れます。これによりMOSFETをオン・オフさせるまでの時間に影響が出ます。
CISS、COSS、CRSSいずれも小さい方がMOSFETのスイッチング特性が良いと考えることができますが、これらの容量特性はMOSFETのオン抵抗とトレードオフの関係にあります。
また、CISS、COSS、CRSSはVDS電圧によって変動するため厳密な計算が難しく、スイッチング損失の見積もりに使用すると実機との差分が大きく出てしまいます


MOSFETの電荷容量
MOSFETのスイッチング特性を見積もる上でCISS、COSS、CRSSの代わりにゲート電荷量QGが用いられます。
ゲート電荷量QGは3つの領域に分類して考えることができます。MOSFETのデータシートに規定されているQG(TOT)はこの3つの領域の総電荷量です。

領域①: QGS領域
ゲート-ソース間電圧(VGS)が0Vからプラトー電圧(VGP)に立ち上がるまでの領域です。この間にゲート電流を使用して入力容量(CISS)を充電します。
領域②: QGD領域
VGSがVGPで維持される領域です。この間にドレイン-ソース間電圧(VDS)はID*RDS(ON)まで低下します。
領域③: 残りの全QG領域
VGSがドライバ電源電圧まで立ち上がる領域です。この間にはIDとVDSの両方が比較的安定した値にとどまり、MOSFETとしてはオン抵抗が働く線形領域で動作します。
QG(TOT)とターゲットとなるゲート電圧の立ち上がり時間(tr)の情報があると、必要なゲートドライブ電流(IG)を次の式で見積もることができます。

さいごに
MOSFETを選定する際のポイントや方法について、まとめた下記記事もぜひ参照ください。
https://www.macnica.co.jp/business/semiconductor/articles/onsemi/142934
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