SiC MOSFETとは?シリコンの課題とSiCを使用するメリット、特長の紹介!

はじめに

これまでパワー半導体に多く使われてきたSi(シリコン)半導体ですが、近年、性能が限界に達しつつあり、「最終製品を小型化したい」「高耐圧、高速スイッチングへの対応が必要である」といった要望への対応が困難になってきています。

代わりに注目を集めているのが、ワイドバンドギャップ素材のSiC(シリコンカーバイド)を用いたSiCパワー半導体です。
高耐圧、高耐熱、高速スイッチングに対応するSiCパワー半導体で、とくにSiC MOSFETを下記3つのトピックに分けて詳しく説明します。

なぜSiCが注目されているのか?Si(シリコン)とSiCの違い

・Si(シリコン)パワー半導体の課題

・オンセミ社のSiC MOSFET「M1-M3ファミリー」の特長

なぜSiCが注目されているのか?Si(シリコン)とSiCの違い

現在、さまざまな場面やアプリケーションで要求される電力量が飛躍的に大きくなっています。

一方、これまで使われてきたSi(シリコン)パワー半導体は、実性能がシリコンリミットと呼ばれる理論限界に達しつつあり、大幅な改善は望めなくなっています。

図1:理論上の電圧と抵抗限界 (注)


こうした中、需要が伸びているのが、SiC(シリコンカーバイド)をはじめとする新素材を用いたワイドバンドギャップ半導体です。

ワイドバンドギャップ半導体とは、バンドギャップエネルギー、すなわち電子を価電子帯から伝導帯に移動させるために必要なエネルギーが大きい半導体です。
SiCのバンドギャップエネルギーはSiの約3倍で、導体よりも絶縁体に似た挙動を示します。ゆえにSiに比べて高耐圧の製品を作ることができます。


例えば、次のような製品(アプリケーション)向けにSiCパワー半導体の導入が進んでいます。

・トラクションインバーター
・EV高速充電チャージャー
・産業機器用電源装置
・半導体製造装置向け特殊電源
・ソーラーインバーター

Si(シリコン)パワー半導体の課題

上記の製品(アプリケーション)の開発において、これまでシリコンパワー半導体が使われており、次のような課題が生じていました。

課題(1) 高耐圧、高速スイッチングへの対応

製品特性によって、スーパージャンクションMOSFETSJ MOSFET)やIGBTが使い分けられています。
しかし、「スーパージャンクションMOSFETIGBTに比べ大電流に向かない」「IGBTはスイッチングの高速化が難しい」と、高耐圧と大電流、高速スイッチングへの対応が困難となっています。

課題(2) 最終製品の小型化

要求される電力量の増加にともない、最終製品の大型化が顕著になっています。
設置や運搬の都合などから小型化のニーズが高まる一方、シリコンパワー半導体ではスイッチング速度が不足し、部品点数も減らせないため、小型化への対応が難しくなっています。

課題(3) デバイスからの発熱

モーターを駆動する際に問題となるのが発熱です。
シリコンパワー半導体は電力の損失が大きく、発熱も大きいため、煩雑な放熱対策が求められます。



こうした課題をお持ちの方におすすめしたいのが、オンセミ社の豊富なSiCパワー半導体ラインナップです。
低オン抵抗かつ信頼性の高いSiCパワー半導体で、さまざまな製品の高効率化、小型化に貢献します。



オンセミ社のSiC MOSFET「M1-M3ファミリー」の特長



オンセミ社では、ショットキーバリアダイオード、MOSFET、モジュールといったSiCパワー半導体をさまざまなスペックで取りそろえています。
ここではSiC MOSFETを中心に紹介します。その特長は下記の通りです。

特長(1) 主要な耐圧および900V耐圧に対応

オンセミ社では、スーパージャンクションMOSFETからの置き換え需要のある650VIGBTからの置き換え需要のある1200V1700Vに加えて、対応ベンダーが少ない900Vのデバイスをリリースしています。標準的に使われる「TO-247 3pin」「TO-247 4pin」「D2PAK 7pin」といったパッケージを網羅しています。

特長(2) 低オン抵抗のラインナップが充実

競合他社にない、低オン抵抗のデバイスを複数ラインナップしています。

例えば、1200V耐圧D2PAK 7pin14mΩ、650V耐圧TO-247 3pin / D2PAK 7pinのは、他社の同耐圧・同パッケージと比較して、最小のオン抵抗のラインナップです。
さらに、1200V耐圧TO-247 4pin14mΩ、650V耐圧TO-247 4pin12mΩも、MOSFET構造としては最小のオン抵抗のラインナップです。(Vgs=18V時のオン抵抗値で比較)

特長(3) 約2倍の沿面距離を確保

TO-247 4pinパッケージにスリットを設置することで、競合他社の同パッケージ品と比較して約2倍の沿面距離を確保しています。
沿面距離が長いほど高電圧の耐性を高めることができます。一定以上の沿面距離が必要なケースで非常にメリットの大きいパッケージです。

特長(4) 信頼性の高いゲート端子

オンセミ社のデバイスは、ゲート端子の信頼性も優れています。
高温下でゲートに高負荷を与えるストレス試験で、オンセミ社のデバイスはほぼ一定のスレッショルド電圧を保つという結果が出ています。
一方、他社デバイスは時間経過にともないスレッショルド電圧が変化します。

特長(5) 導通損失・スイッチング損失を大幅削減

最新世代のM3ファミリーでは、従来のデバイスに比べて、スイッチング損失を大幅に削減できました。
これにより、さらなる効率向上、発熱抑制を実現しています。
オンセミ社のM1ファミリーや競合他社の同等デバイスと比較しても優れた性能となっています。

下図がターンオン時のスイッチング損失Eonを比較したグラフです。(左:室温、右:150℃)



SiC 製品をお探しの場合は、下記オンセミ社のWebサイトの製品ページをご確認ください。


最後に

SiC MOSFETに関連した下記記事なども、ぜひ参照ください。


(注)参考文献

記事内での"図1:理論上の電圧と抵抗限界"の図については、以下の文献を参照しています。

Comparative Study of Optimally Designed DC-DC Converters with SiC and Si Power Devices

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