AIレースカー「JetRacer」をコースで走らせる!ハンズオンイベント

 NTTコム エンジニアリング株式会社で開催された、JetRacerハンズオンイベントに、マクニカは協賛という形で参加させていただきました。本記事ではそのイベントの様子をご紹介します。

JetRacerってなに?

JetRacerとは、NVIDIA Jetson Nanoを搭載したAIレースカーのことです。

 

NVIDIA Jetson Nanoは、小型の最新AIコンピューターとして発表されて以来、AIを活用したデバイスや組み込みシステムの開発を、かつてないスピードと低価格で実現することを可能にしました。Jetson Nano開発者キットは、AI学習教材としても広く使用され、機械学習やディープラーニングに気軽に触れられるようになり、本格的な自律走行ができるAIカーとしてJetBotが登場しました。そこからさらにレースカーとして進化し、オープンソースで組み立て方法が公開されたのが「JetRacer」です。

企業向けハンズオンでJetRacerを取り上げるのは世界初!

2019年12月に全3回で開催された「JetRacerハンズオンイベント」は、NTTコム エンジニアリング様で2019年6月ごろから社内向けの研修として構想・企画され、開催に至りました。100名の定員でしたが想定を超える募集が殺到し、当日も会場には社員のみなさまの熱気があふれていました。

 

企画者である、NTTコム エンジニアリング株式会社 クラウド・アプリケーション&ボイス部 クラウド・アプリケーション部門 テクニカルディレクター 佐々木 淳様の提案からハンズオンが始まりました。

 

これまでスーパーコンピューターの開発に携わられたご経験を持つ佐々木様ご自身が、ディープラーニングを学ぶ際、本での学習ではイメージを持ちづらく苦労されたというご経験があったそうです。「百聞は一見に如かず」という想いを募らせ、弊社も開催に協力したJetBotセミナーを見学いただいたことをきっかけに本イベントの開催を社内で提案されました。

 

NTTコム エンジニアリングで働くエンジニアのみなさまは、ネットワークやクラウドサービスに従事されており日頃からネットワーク機器やサーバーに触れられていますが、AIエンジニアはまだ少ないとのことでした。この機会にディープラーニングを学びAIをツールとして使えるようになってほしいと考えられました。同社のヒューマンリソース部門の方も一緒になり準備をされてきた本ハンズオンでは、社員の育成とその先には「AIの社会実装に貢献したい」という熱い想いを冒頭に語っていただきました。

NTTコム エンジニアリング株式会社 佐々木 淳様がお話される様子

ハンズオンで使用したJetRacerキット

株式会社GClue 代表取締役 佐々木 陽様に今回の講師をお願いするとともに、今回のハンズオン用のJetRacerキットをご用意いただきました。

 

[JetRacerキットの構成]

・JetRacerキット

JetRacerのベースはタミヤ製の1/10スケールのラジコンカーで、Jetson NanoやWiFiルーター、カメラ、モバイルバッテリーが搭載されるデッキが取り付けられています。

・Jetson Nano 開発者キット

・カメラユニット

・WiFiルーター

・大容量・高出力モバイルバッテリー

JetRacerキット

お一人ずつにJetRacerキットのご用意があり、さながらクリスマスプレゼントのようでした。

ハンズオンの流れ

  1. 全体の流れを説明
  2. JetRacerキットの組み立て
  3. JetRacerに搭載のWiFiルーターを介して、ブラウザにてJetson Nanoに接続
  4. データセット作成 JetRacerに搭載されたカメラでコース撮影し進む方向を指定
  5. 学習 作成したデータセットを用いJetson Nano上のPyTouchにより学習させ推論エンジンを作成
  6. 自律走行 作成した推論エンジンによりコースで自律走行のテスト

まずはJetRacerを組み立てよう

午前の部では、JetRacerの組み立てまでを行いました。GClue佐々木様より、JetRacerができるまでの背景や自動運転の最新状況を、初めての皆様にもわかりやすくご説明いただき、いよいよキットを箱から出して組み立て開始です。

まずはベースとなるタミヤ製のラジコンカーにJetson Nano、カメラ、WiFiルーターをネジで取付け、Jetson Nanoとカメラを接続、さらにラジコンカーの制御モジュールとJetson Nanoを接続します。これでJetRacerの組み立ては終了。机の上でJetRacerに電源を入れて、コントローラーでアクセルとハンドルを動かした瞬間、皆さんに笑顔が溢れ、ハンズオンを楽しんでいるようでした。「みなさんいい顔していますね!」とおっしゃる佐々木 淳様の笑顔がとても素敵でした。

株式会社GClue 佐々木 陽様によるハンズオン講義の様子

特設コースでJetRacerを自律走行させよう

午後の部では、学習用データセットの作成し、学習フレームワーク(PyTouch)を使って学習させた推論エンジンにより自律走行を行います。

 

データセットの作成や学習フレームワークはUbuntuが動作するJetson Nano上で行われます。具体的にはノートパソコン上のブラウザでJetson Nano上のJupyter Notebookで動作するプログラムを操作することで行われます。

特設のサーキット上でJetRacerに搭載されたカメラでコースを撮影し、撮影した画像に進むべき方向を指示することでデータセット作成を作成します。カーブで多く撮影される方や直線で多く撮影される方がいて、コースから外れたところやコースのど真ん中など試行錯誤をしながら100枚ほど撮影してデータセットの作成していただきました。

特設コースでJetRacerを自律走行させる様子
JetRacerを制御する様子

作成したデータセットを用いJetson Nano上の学習フレームワーク(PyTouch)を用い学習を行い、自律走行用の推論エンジンを作成します。推論エンジンはカメラの映像に対しハンドルの角度を導き出します。その情報によりJetRacerが自律走行する仕組みです。

 

コースに沿って自律走行するJetRacerもいますが、多くのJetRacerがコースアウトしてしまうようでしたが、うまくいかなくてもみなさまとても笑顔で取り組んでいらっしゃいました。

中心の黄色の線より、外側の白い線に推論が働き誘導される傾向にあり、一度走らせてみてはうまくいかない場所、特に急な曲がり角で写真を撮り直したりと、データセットの作成、学習、試走を繰り返されていました。

決勝大会と今後

この日の研修では、3名がコースを周回させることができました。他の方も惜しいところまでいかれた方もいましたが、ヘアピンコーナーをうまく回れずコースから外れる方が多かったです。ただ、うまく周回された方の様子をみて、会場全体で喜ぶとても楽しい研修でした。

 

今回12月に全3回ハンズオンを実施し計100名の方が受講されました。2020年1月16日には受講者によるJetRacer決勝大会を開催。タイムアタックで同じコースを速く周回した上位数名が、2020年3月にアメリカ サンノゼで開催されるGTCのJetRacerの大会にNTTコム エンジニアリングを代表して参加できるとのことです。

 

社員教育のための単なる教育コンテンツにとどまらず、そこで力を発揮した社員が世界のエンジニアと触れ合える夢の企画となっています。今後もマクニカは、このハンズオンが皆様にとって新しい発見をするきっかけとなるよう、お手伝いさせていただけたらと思います。

まとめ

JetRacerのキットは今回ハンズオン用に特別にご用意したものとなっております。ご自身で組み立てられたい方はJetson Nano開発キットをご購入いただき、その他パーツはNVIDIA GitHubにて公開されている作り方を参考にしていただけます。今すぐJetson Nano開発キットをご購入されたい方はこちらよりお買い求めください。

Jetson 開発者キットの購入はこちら

※開発者キットの販売ページは、スイッチサイエンス社のWEBサイトへ移動します。

 

 今回のハンズオンイベントはNTTコム エンジニアリング様の社内研修として開催しました。同じようにJetRacerハンズオンを自社で実施されたい、とご興味を持っていただいた方はぜひお問い合わせください。