VCOの周波数可変範囲の選定

VCOの可変周波数範囲の選定に関して、考慮するポイントが幾つかあります。入力周波数安定度が±20ppmだからと言って可変周波数範囲を±20ppmとしてしまうと、以下のばらつきが考慮されていないため、PLLはLock外れを起こします。

 ・初期偏差:±5ppm
 ・周波数温度特性:±15ppm
 ・電源変動:±5ppm
 ・経年変化:±5ppm/年
 ・装置の寿命が10年として考えた場合、
 ・±0.5ppm x 10年=±5ppm

となります。これらの合計は、±30ppmとなり、入力周波数の安定度より大きくなってしまいます。もし、±20ppmの周波数可変範囲のVCOを選定したとすれば、変動要因が可変範囲を超えてしまいPLLはLockすることができないことになります。上記の場合、入力変動を考慮すれば、最低でも±50ppmの可変幅が必要となります。

VCOについて考えてみます。VCOは、周波数を可変できる共振回路になります。L、Cで構成されるVCOは、一般的に数千ppmの可変範囲がありますが、電源の変動で周波数が大きくずれてしまう、電源ノイズで変動しJitterを発生させる、温度安定性が悪い等が考えられます。水晶を使用したVCXOは、百数十ppmの周波数可変範囲となり、VCOと異なり安定度は良くなります。

水晶は、高い周波数を直接発振することができないため、内部に逓倍回路を持っています。逓倍回路を持っているため、位相ノイズは直接発振ができるSAW(表面弾性波)を使用したVCSOには劣ります。また、70℃近辺で安定して動作するため、オーブンを持ったOCXO、Digital回路で温度による周波数変動を補正するTCXO、Chip内のCPUで補正を掛けるMCXOなどがあります。周波数補正を行うので、周波数温度特性に優れていますが、VCXOに比べて高価になってしまいます。

PLLで使用するVCOは、要求される仕様によって、VCO、VCXO、TCXO、OCXO、MCXO、VSCOの中から最適な部品を選択する必要があります。

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