こんにちは、太郎 です。
今回は PLL のループ帯域幅と、スペクトラム拡散の関係について説明します。
PLL とスペクトラム拡散については、私が以前書いたコラムを参照して下さい。
今回の記事に関連するページを以下にまとめます。
● 『 バッファについて 』
Zero Delay Buffer と Fanout Buffer の違いが PLL の有無であることについて書きました。
PLL の基本構成についても書きました。
● 『 PLL の分周 / 逓倍(ていばい) 』
PLL による分周 / 逓倍の原理について書きました。
スペクトラム拡散クロックの発生原理は PLL の分周 / 逓倍を応用したものです。
● 『 PLL の応用(スペクトラム拡散でEMI を減らそう!) 』
クロックのスペクトラム拡散の目的と原理、
スペクトラム拡散クロックを利用する上での注意点について書きました。
PLL のループ帯域幅とは何か?
PLL のループ帯域幅は、PLL の構成要素であるループフィルター( LPF )によって決まります。
LPF の正体はローパスフィルターなので、低周波数帯は出力し、高周波数帯はカットします。
LPF が高周波数帯をカットする(利得が -3 dB となる)ところをカットオフ周波数と呼びます。
カットオフ周波数までの周波数帯をループ帯域幅と呼びます。
PLL のループ帯域幅が狭いとき
ループ帯域幅を狭く設定すると、VCO の出力の、PFD / CP に対するレスポンスが遅くなります。
PLL のロック時間 (REF とFB が同期をとるまでの時間) は長くなってしまうのですが、瞬間的な信号の位相 / 周波数の変化を無視することができます。
すなわち、Jitter を圧縮することが出来ます。
Jitter を圧縮させたいときは、ループ帯域幅を狭くする必要があります。
PLL のループ帯域幅が広いとき
ループ帯域幅を広く設定すると、VCO の出力の、PFD / CP に対するレスポンスが速くなります。
そのため、PLL のロック時間は短くなり、周波数の分周 / 逓倍のレスポンスも速くなります。
水晶振動子の出力を REF として使用するクロック・ジェネレーターに搭載されている PLL のループ帯域幅は広く設定しなくてはなりません。
ただし、REF 信号の Jitter 圧縮は望めない為、クロック・ジェネレーターにはできるだけ周波数精度の高い水晶振動子を使用することを推奨します。水晶だけに(笑)。
ループ帯域幅とスペクトラム拡散
前回の記事でご説明した通り、スペクトラム拡散は出力周波数を変えることによって EMI を削減します。
周波数を変える必要性があるため、出力周波数を変える際のレスポンスは速くする必要があります。
すなわち、クロック信号にスペクトラム拡散をかける際は、ループ帯域幅は広くしなければなりません。
このように、スペクトラム拡散をかける際はループ帯域幅にも注意が必要なのです。
スペクトラム拡散をかけたクロック信号を、Zero Dalay Buffer(ZDB) を通して分配させる際は、ZDB 内部の PLL のループ帯域幅に注意しなくてはなりません。
IDT 社の PCI Expless 対応バッファはループ帯域幅をピン入力で広域 / 狭域設定が可能となっていますので、出力 Jitter の削減も、スペクトラム拡散のかかったクロック信号の分配も可能となっています。
さらに、Fanout Mode / ZDB Mode の選択も可能となっていますので、お客様の設計に合わせでお使い頂けます。
その他にも様々な機能 / 特徴を持ったバッファー製品がございますので、ぜひお問い合わせください!