第7回 FPGAの電源を選定する場合の注意点についてーその2ー  

第7回は、FPGAの電源を選定する場合の注意点について電源の仕様の観点からご説明させていただきます。
今回もCyclone® V (5CSXFC5D) に対する電源選定を例にご紹介いたします。

 

次の4つの項目について、選定した電源デバイスが対応しているか確認をします。

1. 出力電圧精度

前回のコラムで紹介した電圧精度を満たす電源デバイスの選定をおこなう必要があります。

Cyclone🄬 V SXですと、VCCでは必要電圧が1.1Vで±30mVの範囲が必要です。 

  • VCCの電圧範囲は 1.07V-1.13V、1.1Vをセンターとしたとき±2.72%の変動範囲
  • VCCA_FPLLの電圧範囲は 2.375V-2.625V、2.5Vをセンターとしたとき±5%の変動範囲
  • IO の電圧範囲は1.71V-1.89V、1.8Vをセンターとしたとき±5%の変動範囲

 

Intel Agilex🄬 シリーズの Smart VID に対応するPMBus Interfaceを持った製品LTM4664の出力電圧の精度が図1のデータシートの抜粋になります。通常のDC/DCコンバーターよりも出力電圧の精度が良くするサーボモードがあります。1.0V出力の条件でサーボモードオフの場合の精度は±1.5%以内でサーボモードオンにすると±0.5%以内に収まります。

 

したがって、Cyclone🄬 V SXのVCCの電圧1.1V±30mVは、問題無く対応できる電源デバイスとなります。

図1:LTM4683出力電圧精度
図1:LTM4683出力電圧精度

2. 出力電圧のリップル

FPGAのスペックのAllowable Rippleを満たすような電源製品を選定する必要があります。
前回のコラムでも記載したように、PDNツールのIntroductionシートの各デバイスのAllowable Ripple(今回ですと5%)

図2:PDN Tool画面Allowable Rippleの確認
図2:PDN Tool画面Allowable Rippleの確認

 

FPGAの要求電圧精度としてAllowable Ripple5%と決まっていますので、DC/DCコンバーターのリップル電圧と負荷応答特性性の特性が満足するか確認が必要です。図3の波形は1V出力時のリップル電圧と負荷応答特性になります。どちらも、5%以内に入っているため問題ありません。

図3:リップル電圧と負荷応答特性
図3:リップルと負荷応答特性

3. FPGAの起動シーケンスの確認

今回の VCC と VCCA_PLLが順番に起動するよう電源構成をおこないます(前回のコラムにあるデバイスハンドブック参照)。

 

一般的なDC/DCコンバーターの場合は、PowerGoodとEnableの機能を持った電源ICやモジュールを選定するか、外付けにシーケンサーを使用してFPGAが求めるシーケンス条件を満たす電源設計をおこないます。 

  

LTM4683については、モジュール内部のレジスタにてシーケンスの時間設定をおこなうことができます。また、PowerGoodとEnable (RUN Pin) を持っているので十分条件を満たしています。

4. ソフトスタートの有無

FPGAの立ち上げの規定にtRamp規定(立上げ時間の規定)があり、その範囲に収まるようなスペックの電源を選択する必要があります。

 
立ち上げ時間をデバイス側で固定された製品と外付けのコンデンサー (CSS) で調整できるものがありますので、外付けのコンデンサーで立ち上げの時間を調整できるDC/DCコンバーターを選定することを推奨します。

 

LTM4683については、モジュール内部のレジスタにて立ち上がり時間の設定をおこなうことができます。 

 

以上で、FPGAの要求電源を満たすような電源製品の選定についてご紹介いたしました。
前回のコラムと合わせ確認いただくことでより、より適切なFPGAに対する電源製品が可能となります。

 

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