Cloud Datacenter Interconnect解説(前編)では、2013年にMicrosoft社が公開していた以下のネットワーク構成を一例に、伝送距離が500m以下の接続に対応する光トランシーバーを紹介しました。
今回の記事では伝送距離が500m以上の接続に対応する光トランシーバーを紹介します。

Spine – DCR
まず、スパインとDCR(Data Center Router)間の接続です。スパインと DCR間の最大伝送距離は1,000m以下でありフロア間の接続と考えられます。

この接続では、100G CWDM4、100G FR1。400G DR4+、400GBASE-FR4の光トランシーバーが挙げられます。伝送速度や最大伝送距離が異なるこれらの光トランシーバーの概要を以下に紹介します。
100G CWDM4 / 100G FR1の光トランシーバー
100G CWDM4と100G FR1は伝送速度が100Gbps、最大伝送距離が2kmの光伝送規格です。
100G CWDM4と100G FR1は光信号の波長数が異なります。
CWDM4は、4つの波長とCWDM(Course Wavelength Division Multiplexing)技術 ※1を使用し、100Gbpsを伝送するMSA規格です。
一方、100G FR1は1つの波長で100Gbpsを伝送するMSA規格です。100G FR1は後述するブレイクアウト接続でも使用可能です。
400G DR4+ / 400GBASE-FR4の光トランシーバー
400G DR4+と400GBASE-FR4は伝送速度が400Gbps、最大伝送距離が2kmの光伝送規格です。
400G DR4+と400GBASE-FR4は共に光信号は100G x 4レーンの構成ですが、下記の違いがあります。
光伝送規格 |
光コネクター |
光信号の波長数 |
WDM |
400G DR4+ |
MPO12 |
1 |
なし |
400GBASE-FR4 |
Duplex LC |
4 |
あり |
400GBASE-FR4は、4つの光波長を光トランシーバー内のMux/DeMuxにより合波・分波(WDM)し、2芯の光ファイバーで伝送します(下記イメージ)。そのため、LCコネクター(2芯光ファイバー)を使用します。

一方、400G DR4+は合波・分波しないため、MPO12コネクターとなります。そのため、以下のように100G FR1と組み合わせることでブレイクアウト接続が可能です。

DCR – Metro
続いてDCRとメトロ間の接続です。DCR とメトロ間の最大伝送距離は、10km~100kmであり、Colo(Colocation)間の接続と考えられます。

この接続では100GBASE-LR4、400G LR4、100GBASE-ZR(DCO)、400G ZR/ZR+の光トランシーバーが挙げられます。同様に伝送速度や最大伝送距離が異なるこれらの光トランシーバーの概要を以下に紹介します。
100GBASE LR4 / 400G LR4の光トランシーバー
100GBASE LR4と400G LR4はそれぞれ伝送速度が100Gbps、400Gbpsで最大伝送距離が10kmの光伝送規格です。
400GBASE-FR4同様にいずれの光伝送規格も4つの光波長を光トランシーバー内のMux/DeMuxにより合派・分波(WDM)し光信号を伝送します。そのため、LCコネクター(2芯光ファイバー)を使用します。
100GBASE-ZRの光トランシーバー
100GBASE-ZRは伝送速度が100Gbps、最大伝送距離が80kmの光伝送規格です。
100GBASE-ZRはデジタルコヒーレント技術により1波長で長距離大容量通信が可能となっています。
100GBASE-ZRの光トランシーバーにおいては、データコムで主流なフォームファクターであるQSFP28を採用した製品のリリースが市場で始まっています。また、DWDM(Dense Wavelength Division Multiplexing)※2ネットワークを構築するためC-band Tunableレーザーも搭載されています。
そのため、従来のネットワークではトランスポンダーなどの特別な伝送装置が必要でしたが、以下のようにルーター装置から長距離大容量伝送を行うことが可能です。

400G ZR, 400G ZR+の光トランシーバー
400G ZRと400G ZR+は伝送速度が400Gbpsで長距離伝送に対応した光伝送規格です。
400G ZRの最大伝送距離は光アンプを用いた場合に120km、400G ZR+の最大伝送距離は光アンプを用いた場合に1,000km相当(光ファイバーの分散は20ps/nm/kmとした時)です。
400G ZR、400G ZR+は100GBASE-ZRと同様にデジタルコヒーレント技術により1波長で長距離大容量伝送が可能です。
また、光トランシーバーベンダーによっては”High Power”または”Bright”と表現される400G ZR、400G ZR+の光トランシーバーもリリースされています。通常、-10dBm程度の出力送信光パワーに対して+0dBm程度の出力送信光パワーの光トランシーバーを”High Power”と表現します。
“High Power”の400G ZR、400G ZR+の場合、より長距離または損失の大きい光ファイバーで伝送が可能といったメリットがあります。
製品一覧
製品 |
Coherent社型番 |
光伝送規格・伝送速度 |
光コネクター |
光ファイバー |
最大伝送距離 |
光トランシーバー |
FTLC1159RGPL |
100G CWDM4 |
LC Duplex |
SMF |
2km |
光トランシーバー |
FTLC4353RJPL |
100G FR1 |
LC Duplex |
SMF |
2km |
光トランシーバー |
FTCD4533E3PCL |
400G DR4+ |
MPO12 |
SMF |
2km |
光トランシーバー |
FTCD4313E3PCL |
400GBASE-FR4 |
LC Duplex |
SMF |
2km |
光トランシーバー |
FTLC1156RDPL |
100GBASE LR4 |
LC Duplex |
SMF |
10km |
光トランシーバー |
FTCD4323E3PCL |
400G LR4 |
LC Duplex |
SMF |
10km |
光トランシーバー |
FTLC3351x3PL1 |
100GBASE-ZR |
LC Duplex |
SMF |
80km |
光トランシーバー |
FTLCD3323E1PCL (High Power) |
400G ZR
|
LC Duplex |
SMF |
120km (光アンプあり) |
光トランシーバー |
FTLCD3323R1PCL (High Power) |
400G ZR+ |
LC Duplex |
SMF |
1,000km (光アンプあり) ※光ファイバーの分散は20ps/nm/kmとした時 |
まとめ
以上、ネットワーク構成の一例に500m以上の接続における光トランシーバー製品を紹介しました。
備考)
※1 CWDM:光信号の波長間隔が20nmと比較的広く低密度なWDM(波長分割多重)方式です。
光トランシーバーモジュールの伝送規格 ~100G編~ - 半導体事業 - マクニカ
※2 DWDM:光信号の波長(周波数)間隔を狭くすることで高密度化したWDM方式です。