生成AI市場の拡大で、通信業界における大きな変革が
2024年3月26日~28日 アメリカ San Diego Convention Centerにて、「OFC(The Optical Fiber Communication Conference and Exhibition)2024」が開催されました。
世界最大の光通信関連の展示会といわれている本イベントは、コロナ禍以前と同等規模の83か国・125,000名以上もの方が来場し、出展企業は昨年比23%増の630社にものぼりました。最先端の光通信技術が募るこのイベントに今年も当社社員が参加しましたので、今回は特に展示ブースの様子をお届けします。

会場の雰囲気
前回よりさらに出展社が増えた今回は、日本のイベントの比ではなくやはり圧巻の規模感でした。
今回日本や中国、韓国、ドイツそれぞれのパビリオンとしてエリアが設けられており、その中でもとりわけチャイナパビリオンは大きく展示されていました。400G未満向けのラインナップを多く展開するベンダーが多く、一部800Gの量産や1.6Tのロードマップを展開している企業もありました。
※ジャパンパビリオンの企業:NEC Corporation、ユウエツ精機、ユアサエレクトロニクス、住友大阪セメント、オプトロニクス、湖北工業、デクセリアルズ
また、日本の一般的な大型展示会の雰囲気と違うところの一つに、このような海外の展示会ではブースでもコーヒーやドーナツなどが配布されていることがあり、16時以降はアルコールを配っているところもあるのが驚きでした。
今回のキーワードは「AI」、そして「1.6T」と「LPO」
2023年に感じたテーマとは大きく変わり、なんといっても「AI」が大きなテーマとなっていました。主催社が出しているレポートにも「来場者のほとんどがAIについて、また、それがもたらす光通信業界への変革について話していた」と書かれているほどで、展示内容からも生成AI向けのニーズが急増していることを改めて実感しました。
さらに、この高まる需要に対応するために必要な「1.6T」や「LPO(Liner Pluggable Optics)」の技術なども注目を集めていたように感じました。
今回もCoherent社とMultiLane社ブースでの展示内容をご紹介しながら、これらについても触れていきます。
MultiLane社
Multilane社は7つのテーマで展示されていました。その中から、特に現地で来場者の注目を集めていた2つの展示と、この記事を読んで頂いている皆様に知っていただきたい目玉の展示1つをご紹介します。

【224G信号】
市場としても新しいこの製品は、Eye波形を測定できる電気オシロスコープでした。(対応Bandwidth は 70GHz まで)
右手にある224G信号の信号源であるPCBからAmphenol社のBackplaneを経由し、ML4015E-E-70で信号を測定するデモ系です。オシロスコープのGUIに関して、Gen3というものを使用していました。ソフトウェア(GUI)でフィルターを加えられ、写真中のアイ波形はフィルターを加えています。フィルターを加えないRow Signalではアイ波形が潰れる様子も紹介されていました。

【Nexus Analyzer】
こちらは、マネジメントインターフェースCMISのデバックするツールです。MCB、Loopback、Analyzerの3つの役割を1台で果たすことができるNexus Analyzerの詳細や操作方法については、こちらの記事を是非ご覧ください。
https://www.macnica.co.jp/business/semiconductor/articles/multilane/144353/
現在対応しているForm Factor はQSFP-DD とOSFPだが、2024年4月頃にQSFP28の試作品ができる予定とのことでした。

【Ultimus】
こちらは、オートメーションテストを行うためのスイッチプラットフォームです。
MultiLane社機器のGUIの他にも、他社製装置もAPI連携することでテストフローを本製品で構築できます。また、スイッチに追加されているテスト項目は、ドラッグ操作でテストフローを構築できるため操作性も高いことがPRされていました。
デモでは、MultiLane社の電気/光オシロスコープと組み合わせて、スイッチに接続された光トランシーバーモジュールのオートメーションテストのイメージが展示されていました。
Coherent社
Coherent社のエリアでは5つの展示がされていました。その中でも、特に目玉となっていた展示内容を3つご紹介します。

【DC向けの光スイッチ「Optical Circuit Switch」】
Google社が既に運用しているというこちらの光スイッチは、従来のスイッチで行うE/O変換がない点が一番の特徴とのことでした。使用されるアプリケーションは主にAIや機械学習(ML)とのことでした。デモでは実際にスイッチングし、正面2台のモニターに移す表示を切り替えていました。こちらの動作原理としては、内部の液晶により光信号の進行方向を切り替えているとのことでした。

【LPO】
こちらでは、800G対応のLPO(Liner Pluggable Optics)が展示されていました。LPOのため、DSPが内蔵されておらず、800Gでありながら9W程度の低消費電力を実現することが特長です。こちらもやはり、想定アプリケーションはこちらもAIやMLでした。

【I-temp 100G ZR QSFP28-DCO光トランシーバーモジュール】
100G ZR QSFP28-DCOの I-temp (Industrial Temperature)品を用いて、400G QSFP-DD DCOの100G ZR modeでの低消費電力を実現できることから相互運用性があることをデモにて説明されていました。
QSFP28で100G ZRを提供できるのは、現状Coherent社のみと伺いました。
セミナー
この記事では多くは触れませんが、全体的にAIやMLに関する講義の注目度が高く、ここでもLPOの必要性について触れられていたのが印象的でした。光通信への投資が進められているのだと改めて実感しました。
AIの登場で大きく変化する光通信業界
OFC2024の参加レポートをお届けしました。前回の開催から大きくテーマが変わり、AIやMLへの対応が求められるようになった光通信業界に大きな動きがあったように感じました。来年も2025年3月30日から4月3日に開催されるようです。是非、業界の最先端をリアルに体感できる場へ足を運ばれてみるのはいかがでしょうか。
マクニカでは、本レポートでご紹介したCoherent社やMultiLane社など通信業界における世界最先端の製品を取り扱っております。気になる製品や技術動向などございましたら、お気軽にお問い合わせください。