「残量が減ったらお知らせが来る。」 お手軽なシステム探していませんか?
在庫・残量の自動管理のシリーズとして、前回は重量センサーによる在庫管理にトライしました。非常に反響をいただきましたので、今回は液体の残量測定による在庫管理へのチャレンジを紹介させていただきます!
ファミレスやカラオケなどの多くの飲食分野では、効率化のためにセルフで飲食物を提供するケースが増えており、提供する飲食物の効率的な在庫管理が求められています。ドリンクなどを最適な量、最適なタイミングで提供することで、少ない人員で顧客の期待に応えながら、収益を最大化する必要があるからです。
しかし現実においては、適切なタイミングでドリンクなどを補充することができず、顧客満足度が低下するケースが多々発生しています。
マクニカでは、これらの課題を解消するべく、ドリンクの自動管理によって効率的な補充がおこなえる「残量センサー」の試作機を開発しました。残量不足の通知などの機能を実店舗で実証可能です。このようなIoT技術の活用により、小売業界はより効率的な店舗運営や顧客体験を実現し、競争力を維持することができます。
IoT残量センサーによる在庫管理とは
残量センサーを用いた在庫管理とは、IoTデバイスを用いてタンクや容器内の残量をリアルタイムに計測し、補充が必要なタイミングを自動検知・通知するシステムのことです。従来の「定期的な巡回確認(TBM)」から、センサーデータに基づく「必要な時だけの補充(CBM)」へ移行することで、以下のメリットを提供します。
- 省人化:目視確認の手間をゼロにし、人員配置を最適化。
- 機会損失の防止:在庫切れ(欠品)による稼働停止や顧客満足度低下を防ぐ。
- データ活用:消費傾向を可視化し、発注精度の向上や予測管理へ応用可能。
課題:定期保全の限界とIoTの必要性
ファミレス・カラオケ店のドリンクサーバーや、カフェのコーヒー/ウォーターサーバーなどでは、顧客がいつでもドリンクを注げるように、適切なタイミングで残量を補充するというオペレーションがおこなわれています。
多くの店舗では、定期的なサイクルで残量をチェックすることによって、補充がおこなわれています。このやり方は、TBM(Time Based Maintenance:定期保全)とも呼ばれています。チェックサイクルが長くなれば運用負荷は下がる一方、必要な飲料を提供できずに顧客の満足度の低下が発生します。だからといって、チェックサイクルを短くすれば、運用負担が高まり、人手不足のなかで従業員に負担を強いることになります。
天候や周辺イベントの影響、取引先の稼働など、外部環境によって在庫状況が変化するため、最適なサイクルで補充をおこなうのは至難の業です。人口減少時代に突入した日本では、あらゆる業界で人員不足が課題とされています。限られた人員で、なおかつ負担をかけることなく収益を最大化するには、デジタル技術やAI・IoT技術の活用が有効です。
従来型管理(TBM)とIoT管理(CBM)の比較
TBMの課題を解消するアプローチに、CBM(Condition Based Maintenance:状態保全、予知保全)があります。これは、設備などの状態を診断して、適切な保全タイミングを見極める方法です。センサーやカメラなどIoT機器・コンピューティングの発展によって、人の負担をなくCBMを実現できるようになっています。
マクニカでは、飲食店などでの在庫・残量管理にCBMを実現するための「残量センサー」の試作機を開発しました。これは、液体残量を計測するセンサーと、一定の閾値を下回った場合にアラームを表示するデバイスで構成されており、店舗運営最適化をサポートするソリューションです。
AIやIoT導入の検討において重要な、従来手法と新手法の比較をまとめました。
| 特徴 | 定期保全(TBM) | 状態保全(CBM)with IoT |
| 管理手法 | 時間・期間ベース(例:1日3回巡回) | 状態ベース(例:残量20%で通知) |
| 補充タイミング | 在庫があっても補充、または欠品発生 | 最適なタイミング(Just in Time) |
| 人的コスト | 高い(巡回・確認工数が必要) | 低い(通知時のみ対応) |
| リスク | 突発的な需要変動に対応できず「欠品」発生 | 閾値設定により「欠品」を未然に防止 |
| 導入技術 | 人力・目視 | 残量センサー、IoT通信、アラートシステム |
導入事例
マクニカでは、虎ノ門に位置するARCH Toranomon Hillsに併設されているカフェで実際にコーヒーサーバーの補充メンテナンスに困っているとの声を耳にし、その課題を解決する残量センサーソリューションを開発しました。以下に事例として紹介します。
ARCH Toranomon Hillsとは
ARCH Toranomon Hillsは、世界で初めて大企業の事業改革や新規事業創出をミッションとする組織に特化して構想されたインキュベーションセンターです。豊富なリソースやネットワークを持つ大企業ならではの可能性と課題にフォーカスし、ハードとソフトの両面から、事業創出をサポートします。
ARCH CAFE & BARとは
ARCH CAFE & BARは開放感あふれるオールデイカフェ&ダイニングです。
洗練された居心地の良い空間で、会員の胃袋を満たす自慢の日替わりランチはもちろん、モーニングから仕事の合間にほっと一息つくコーヒーとスイーツ、本格クラフトビールを楽しめる会社帰りの一杯まで、幅広い用途でご利用いただける空間を提供しています。
また、この空間を活かした貸切のパーティーやイベントでの利用も可能です。
カフェでは以下のような困りごとがありました
同カフェでは、顧客がセルフサービスで利用するコーヒーサーバー(容量約3L)の管理に以下の課題を抱えていました。
- 視認性の悪さ:キッチンカウンターから残量が見えず、目視確認が困難。
- 機会損失:顧客から「空になっている」と指摘されて初めて気づくケースが多発。
- 業務負荷:1日約6回の補充が必要だが、タイミングが読めずスタッフの心理的負担になっていた。
マクニカの残量センサーソリューション導入後
この課題に対し、以下の機能を備えたIoTソリューションを実装しました。
- 非接触/接触型センサー:液体残量を物理的または光学的に計測。
- 閾値判定ロジック:残量が一定値(例:残り2杯分)を下回った瞬間にトリガーを発動。
- 通知デバイス:スタッフから視認しやすい位置に設置したLEDが点灯し、補充タイミングを通知。
ポイントは、新しいセンサーを開発したのではなく、汎用の標準品を組み合わせて成立させたことです。既存のサーバーには一切手を入れておらず、設備の入れ替えも配線工事もありません。「後付けできるかどうか」は、導入可否を分ける最大の分岐点です。設備更新のタイミングを待つ必要がなくなり、駄目だったら外せるため、試すハードルが大きく下がります。
実際の導入事例&お客様の声
ARCH CAFE & BARで働く髙嶋さんにお話を伺いました。
Q1: 以前はどのようなことに困っていましたか?
「こちらのカフェではARCH施設の会員様向けにコーヒーをサーバーにてご自身で注いでいただく形で提供しています。コーヒーサーバーのタンクの容量は約3Lですが、これを一日に6回ほど入れ替えて補充する必要があります。しかしコーヒー残量の表示部分がスタッフのいるキッチンカウンターの中からは見えない位置にあり、タンクが空になる前に交換するということができず、毎回タンクの空に気が付いたお客様にお声がけをいただきタンクを交換するというルーチンを繰り返していました。タンクが空の時にはお客様にすぐコーヒーを提供することができずご迷惑をおかけすることもありました。」
Q2: マクニカの残量センサーを導入していかがでしたか?
「タンクの残量が少なくなると、キッチンカウンターの中から見える補充通知LEDが点灯するようになったので、残量センサーを導入してからは、タンクが空になる前に必ずコーヒーを補充することができるようになりました。センサー部分の取り付け高さを調整することで、補充通知LEDが光るタイミングを自分たちでコントロールできるところも便利に感じています。お客様をお待たせすること無くコーヒーを提供できるようになったことが一番のメリットですね。」
Q3: 予想外だった点はありましたか?
ARCH Toranomon Hillsは日常の「不」から新規事業の種を探している会員さんが多いので、「実はこんなことに困っていたんだね。気づかなかったよ。」とか、シンプルに「なに?これ?便利なの?」など、取り組みきっかけでお声がけいただく機会が多くあり、これは予想外の収穫でした。取り付けられた残量センサーに興味を持たれた方が声をかけてくれ、それをきっかけに今まで以上に普段の会話が増えました。」
※実際にコーヒーサーバーのタンクを交換している様子
※残量センサー単体の画像
運用に入って分かったこと
ここからは設置したあとの話です。方式を正しく選んでも、続くかどうかは別の要因で決まります。カタログには載らない、運用に入ってから見えた4点です。
1. 閾値は「最初に決めて終わり」ではありません
取り付け当初、センサーの高さを下げすぎたことがありました。その結果、タンクにほとんどコーヒーが残っていない状態になるまで「まだある」と判定され続けることになります。このセンサーは取り付け高さがそのまま通知の閾値になるため、逆に言えば現場で自由に調整できます。運用に合わせて後から動かせることを前提に設計しておくほうが、事前に完璧な閾値を計算するより実用的でした。実際、髙嶋さんが「便利に感じている」と挙げてくださったのもこの点です。
2. センサー1台では検知の隙間ができます
現場からは「センサー2台体制が望ましい、隙間をなくしたい」という要望をいただきました。1点で有無を判定する方式である以上、その1点を通過してから次の情報が来るまでは何も分かりません。残量を連続量として見たいのか、それとも「そろそろ」の1点だけ分かればよいのか。ここは設計の初期に決めておく必要があります。前者なら超音波式や重量式、後者なら光学式や静電容量式が向きます。
3. 通知は「誰に届くか」で価値が変わります
ホールと調理に1人ずつという体制のため、休憩中で奥にいるスタッフにも見えるように通知を広げてほしいという要望も出ました。LEDの視認範囲は物理的に限られます。運用人数と配置が変われば、通知の届け方も変える必要があります。他には、パトランプの点灯、PC・タブレットへの画面表示、スマートフォンへのチャット通知(Slack/Teams等)など、現場に合わせた通知手段を選べます。他案件でも、管理室から遠隔で残量状況を把握し、チャットで通知する構成が求められていました。
4. 電池交換が増えると、導入効果が相殺されます
これは別の案件で実際に起きたことです。備品残量を検知する仕組みを検討した際、ボタン電池で無線送信する構成にしたところ、使用頻度が高いために電池交換のメンテナンスが発生し、「便利になった分メンテナンスコストが増える」という逆効果になりかけました。だからこそ、コーヒーサーバーの試作機では1分に1回の送信以外はスリープさせ、ボタン電池1個で約1年という設計にしています。残量管理の自動化では、センサーの精度よりも電池寿命と設置の手間のほうが、続くかどうかを左右します。
よくある質問(FAQ)
Q1. どのような液体に対応していますか?
A. 水やコーヒーのような液体だけでなく、センサーの選定(光学式、静電容量式、超音波式、重量式など)により、粘度の高い液体、不透明な液体、粉体、あるいは薬品など、対象物に合わせた最適な検知方法をご提案できます。ただし方式ごとに苦手な条件があるため、実際の液体と容器で確かめることを推奨しています。
Q2. 透明な液体でも検知できますか?
A. 色の差を利用する光学式では困難です。別の案件の検討でも、透明な液体は色ベースの方式では判定できませんでした。透明な液体には、重量式(容器ごと重さを測る)、静電容量式(誘電率の差を読む)、超音波式などが候補になります。
Q3. 既存の設備に後付けできますか?
A. はい、可能です。マクニカの試作機やソリューションは、既存のタンクやサーバーへのレトロフィット(後付け)を前提に設計しています。ARCH CAFE & BAR の事例では、コーヒーサーバーのレベルゲージにシリコンバンドでセンサーを巻き付けただけで、設備側には一切手を入れていません。大規模な設備更新をせずにIoT化を実現できます。
Q4. 電池はどれくらいもちますか? 電池交換の手間が増えませんか?
A. 送信間隔の設計で大きく変わります。コーヒーサーバーの試作機では、1分に1回だけ送信してそれ以外はスリープさせることで、CR2032のボタン電池1個で約1年動作しています。逆に、送信頻度を上げると電池交換の頻度が上がり、省人化の効果が相殺されます。設置台数と交換の手間まで含めて設計することを強く推奨します。
Q5. 通知方法はLED以外にもありますか?
A. はい。現場の運用に合わせて、パトランプの点灯、PC・タブレットへの画面表示、スマートフォンへのチャット通知(Slack/Teams等)、複数拠点をまとめたクラウド上での一元管理など、多様なインターフェースと連携できます。「誰に、どこで気づいてほしいか」から逆算して選ぶのが確実です。
応用事例の提案
本実証実験で使用した技術は、飲食業界に限らず、B2B製造業における様々な「残量管理・在庫管理」に応用可能です。
カラオケ・ファミレスのドリンクサーバーの残量管理
研究施設における試薬の残量管理
飲料メーカーでのタンク残量管理
マクニカは最先端のセンサーやAIテクノロジーを活用し、あらゆる産業の課題を解決するソリューションの具現化を行っています。残量センサー+IoTによる残量の自動管理を応用した活用など、本ソリューションにご関心のある方はぜひお問い合わせください。
ものづくりコンサルティングサービス
マクニカは単なる商社機能にとどまらず、最先端のセンサー技術とAI・IoTを組み合わせた「現場課題を解決するソリューション開発」を得意としています。
「既製品では合わない」「現場特有の制約がある」といった場合でも、試作開発から量産検討まで伴走支援いたします。残量センサーによる在庫管理の自動化、IoT導入をご検討の際は、ぜひご相談ください。
店舗向けDXの他事例のご紹介
実例として、マクニカのオリジナル技術ブランドMpressionでは、重量センサーを使用して在庫・残量チェックを行うことが可能な「AIスマート棚」の試作機を開発しました。動画付きで公開しておりますので、こちらもぜひご覧ください。
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