宇宙環境は半導体デバイスにとって過酷!?
前回は、宇宙放射線による半導体デバイスへの影響と題し、
「宇宙環境には宇宙放射線が存在し、半導体デバイスにとって過酷な環境であること」を解説しました。
今回は、その中で紹介した“TID”について詳しく紹介します。
TID(トータルドーズ効果)を知ろう。
TID (Total Ionizing Dose effects: トータルドーズ効果)は、半導体デバイスにガンマ線や陽子線、電子線などが多量に入射し、
その電離作用で生じる電荷が、デバイス内の絶縁膜中に蓄積されることによって「電気的な特性劣化を引き起こすこと」を言います。
具体的な現象としては、電源電流やリーク電流の増加、動作タイミングの変化などです。
またTIDは、トータルというその言葉の通り、
「デバイスがどれだけの量の放射線を浴びたか?」という、総ドーズ量に依存します。
このため、TIDによる半導体デバイスへの影響は、
「ミッション期間中にどれだけのドーズ量があるのか?」という予測に基づいて検討する必要があります。
TID(トータルドーズ効果)への耐性を持っているデバイスとは?
Rad-Hard品やRad-Tolerant品と言われるTID耐性を有しているデバイス(宇宙用半導体)は、
メーカーにてTID耐性の確認(試験)が行われています。
一方、それ以外のデバイス(民生部品、車載部品)の場合、
そのほとんどはTID耐性の確認が行われていないため、
必要に応じて耐性評価を独自に行う必要があります。
TID耐性評価として、放射線照射施設におけるTID試験があります。
このTID試験では、評価対象デバイスをガンマ線や電子線などが存在する放射線場にさらして、
「デバイスの持つ特性がどう変化するか」を確かめます。
これら試験で合格した製品については、
宇宙での正常な動作が期待できるデバイスとして宇宙へ打ち上げる機器に採用されます。
ここまでの説明で、TIDとは、「どれだけの量の放射線を浴びたか」に依存すること、
TID耐性を持っているデバイスは、「TID試験に合格し、選び抜かれたものであること」はご理解いただけたでしょうか?
次回以降の記事では、今回ご紹介した「TIDの対策方法」について掘り下げて解説していきます。お楽しみに。
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