「重さが変わったらお知らせが来る。」 そんなシステム探していませんか?
小売業、飲食業、そして物流倉庫において、正確な在庫管理は収益最大化の要です。商品を最適な数量、最適なタイミングで提供することで、顧客の期待に応えながら、収益を最大化する必要があるからです。
しかしながら、人手不足が叫ばれる昨今、人間が定期的に見回る「目視チェック」には限界があります。そんなとき、商品棚や保管箱が「もうすぐ空っぽになりますよ」と、自動であなたにメールやLINEで教えてくれるとしたら、業務はどれほど楽になるでしょうか。
本記事では、マクニカが開発した「AIスマート棚」を例に、重量センサーとIoT技術を活用して在庫管理を自動化し、業務効率を劇的に改善する手法について解説します。在庫状況の可視化や、在庫不足の通知などの機能を実店舗で実証可能です。このようなAI・IoT技術の活用により、小売業界はより効率的な店舗運営や顧客体験を実現し、競争力を維持することができます。
重量センサーによる在庫管理システム(IoT)とは
結論:物理的な「重さ」をデータ化し、リアルタイムで在庫・残量を可視化する仕組み
重量センサーを用いた在庫管理(IoT)とは、商品棚や保管場所に設置したセンサーで物品の重量を常時計測し、そのデータをクラウドやアプリへ送信することで、在庫数や残量を自動的に算出・管理する技術です。このシステムは、従来の「人が定期的に見回る」管理手法から脱却し、必要な時に必要なアクションを起こす「データ駆動型」の管理を実現します。
主なメリット
- 在庫確認の自動化:人によるカウント作業が不要。
- 機会損失の防止:欠品(品切れ)をリアルタイムで検知。
- 液体・不定形物の管理:目視では判別しにくい液体(ビール樽など)の残量も正確に把握。
小売店や飲食店、物流倉庫が抱える在庫チェックの課題
小売店の販売フロアやバックヤード、レストランや居酒屋、物流倉庫などでは、顧客に商品を届けるために、棚に商品を陳列・ストックし、必要に応じて補充するというオペレーションがおこなわれています。
多くの店舗では、定期的なサイクルで在庫をチェックすることによって、補充がおこなわれています。このやり方は、TBM(Time Based Maintenance:定期保全)とも呼ばれています。チェックサイクルが長くなれば運用負荷は下がる一方、必要な商品を提供できずに機会損失が発生します。だからといって、チェックサイクルを短くすれば、運用負担が高まり、人手不足のなかで従業員に負担を強いることになります。
天候や周辺イベントの影響、取引先の稼働など、外部環境によって在庫状況が変化するため、最適なサイクルで補充をおこなうのは至難の業です。人口減少時代に突入した日本では、あらゆる業界で人員不足が課題とされています。限られた人員で、なおかつ負担をかけることなく収益を最大化するには、デジタル技術やAI・IoT技術の活用が有効です。
定期保全(TBM)の限界と状態保全(CBM)への移行
TBMの課題を解消するアプローチに、CBM(Condition Based Maintenance:状態保全/予知保全)があります。これは、設備などの状態を診断して、適切な保全タイミングを見極める方法です。センサーやカメラなどIoT機器・コンピューティングの発展によって、人の負担をなくCBMを実現できるようになっています。
| 項目 | TBM(定期保全・従来型) | CBM(状態保全・IoT型) |
| 管理手法 | 決まった時間・頻度で人が巡回確認 | 重量センサー等で常時モニタリング |
| 人件費・工数 | チェック頻度に比例して増大 | 最小限(異常時のみ対応) |
| 欠品リスク | 次の巡回まで欠品に気づけない | 即時検知が可能 |
| 適した環境 | 人員が潤沢、在庫変動が一定 | 人手不足、在庫変動が不規則 |
マクニカのソリューション:「AIスマート棚」の仕組み
マクニカでは、小売店や飲食店での在庫管理にCBMを実現するための「AIスマート棚」の試作機を開発しました。これは、棚に載った商品・アイテムの重量を計測するセンサーと、その情報をBluetooth経由で管理アプリに送信し、数量・残量のモニタリングを可能にすることで、店舗運営最適化をサポートするソリューションです。
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システム構成と動作フロー
- センシング:棚に設置された重量センサー(大小サイズ)が、載せられた商品の総重量を計測。
- データ送信:計測データをBluetooth経由で管理アプリ(ゲートウェイ)へ送信。
- データ処理:アプリ側であらかじめ設定された「商品単体重量」に基づき、個数や残量(%)を算出。
- 通知(アラート):在庫が閾値(例:残り3本)を下回った瞬間、自動で担当者へメール通知。
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活用ユースケース:飲食店における「見えない在庫」の管理
このアイデアは、もともと居酒屋のビールサーバー(樽)の補充の課題から着想されました。ビールサーバーは外見では残量がわからないため、ビールを注いでいる途中でサーバー内のビールがなくなってしまうことがあります。しかもその際にサーバー内に充満したガスが噴出し、お客様に音やビールの飛散で迷惑をかけるなど、取り扱いに注意が必要です。この課題を、ビールサーバーの中身が見えなくても重量を測ることで、ビールがなくなる直前に気付けると考えたのです。
「AIスマート棚」の管理アプリでは、扱う商品の単位重量を設定しておけば、棚の上に商品が何個置かれているかを確認できます。ビールサーバーのような、液体の残量も計測・管理できます。そして、残数・残量のアラーム基準値を設定しておけば、それを下回った場合に補充通知のEメールを受信することができます。これにより定期巡回・チェックの必要がなく、在庫・残量不足を起こす前に補充するというCBMが可能となるのです。
デモンストレーション:重量センサーによる可視化の実証
スーパーマーケットなどの小売店や、ビールサーバーを置いた飲食店などにおける、商品棚の在庫・残量管理を最適化する「AIスマート棚」、ここでは試作機のデモの様子をご紹介します。この実証により、固形物(ペットボトル)と液体(水タンク)の双方で、高精度な管理が可能であることが確認されています。実運用のヒントになれば幸いです。
検証1:個数管理(ペットボトル)
動作:ペットボトルを棚から取り出すと、即座にアプリ上の在庫数が減少。
結果:設定した基準値(3本以下)になった瞬間、スマートフォンへ補充要請のアラートメールが着信。
検証2:残量管理(水タンク)
動作:タンクから水が減るにつれ、アプリ上のインジケーター(残量%)がリアルタイムで推移。
結果:目視確認が不要になり、補充タイミングの最適化に成功。
システム構成
・AIスマート棚(重量センサー:大サイズ)
・AIスマート棚(重量センサー:小サイズ)
・モニタリングアプリ(PC:Bluetooth経由)
想定
ペットボトルをお茶飲料、水タンクをビールサーバー(樽)と想定し、デモンストレーションをおこないます。
デモ1:ペットボトルの本数をモニタリング
最初のデモは、ペットボトルの本数をアプリでモニタリングするデモです。
ペットボトルを識別して計測しています。AIスマート棚に載せられたペットボトルの本数が増えるたびに、アプリ内の「お茶」欄の表示数も増えていくことが確認できます。
デモ2:水タンクの残量(重量)をモニタリング
続いてのデモは、水タンクの残量(重量)をアプリでモニタリングするデモです。
水の残量を計測し、Bluetooth経由でアプリに表示させています。AIスマート棚に載せられた水タンク内の水が減るにつれ、アプリ内の「ビール樽」欄の表示も減っていくことが確認できます。
デモ3:商品在庫が一定数を下回った場合にアラートメール
最後のデモは、商品在庫が一定数を下回った場合にアラートメールが送信される機能のデモです。今回はお茶飲料の在庫数が基準値を下回ったケースを紹介します。
アラートメール送信の基準値を3本以下と設定しています。ペットボトルを4本から3本に減らしてみます。
【結果】
モニタリングアプリの表示が3本に減りました。
そして、スマートフォンに在庫の補充を知らせるアラートメールが届きました!
高度なAIによる更にインテリジェントなAIスマート棚の可能性
「AIスマート棚」では、外部データと連携することで、店舗運営をよりスマートにする発展を考えております。例として、店舗に設置したカメラによるデータから来場者の年代・性別、会員情報を判別したり、気象情報や気温、質問、周辺の交通状況データを取得したりして、需要予測をもとにしたより高度な在庫管理に活かしていくというものです。
他にも、天候や気温、イベント情報などから補充のスケジュールを前もって設定したり、在庫状況に応じてタイムセールを柔軟に開催したり、顧客とのコミュニケーション履歴やチラシ・広告と販売実績を分析するなどのスマート管理以外の店舗運営への貢献も期待できます。
重量センサー在庫管理に関するよくある質問(FAQ)
Q1. 重量センサーはどのような商材の管理に向いていますか?
A. 在庫の形状が一定である商品(工業部品、飲料、文具など)や、目視で残量がわかりにくい液体(洗剤、塗料、飲料用樽など)の管理に最適です。特に、1つ1つ数えるのが手間な「小さい部品」の個数管理(重量から個数換算)に威力を発揮します。
Q2. 導入することでどのようなコスト削減効果がありますか?
A. 定期的な在庫チェック巡回にかかる人件費を削減できます。また、過剰在庫の抑制や、欠品による販売機会の損失(売上減)を防ぐ効果も期待できます。
Q3. 将来的にどのような拡張が可能ですか?
A. マクニカでは、単なる在庫管理に留まらず、外部データ(カメラによる属性分析、気象情報、イベント情報)と連携した「需要予測」への発展を見据えています。これにより、在庫が減ってから補充するだけでなく、「売れる前に補充する」高度なサプライチェーン管理が可能になります。
「ウチの現場の、あの在庫管理も自動化できる?」と思ったら
マクニカのものづくりコンサルティングサービス(ものコン®)では、最先端のセンサーなどのデバイスやAIテクノロジーを活用し、あらゆる産業の課題を解決するソリューションの具現化をおこなっております。
今回開発した「AIスマート棚」は、販売フロアやバックヤード、レストランや居酒屋などでの人員不足を補いながら、顧客によりよい価値を提供できるソリューションとなる可能性を秘めています。
センサーの種類やITの仕組みを勉強する必要はありません。「どの棚を」「どう管理したいか」という現場のお悩みだけを持って、ものコン®へご相談ください。構想段階のメモ書きレベルでも大歓迎です。最適な仕組み作りを、私たちがゼロからお手伝いします。
ものづくりコンサルティングサービス
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