この記事では車載Ethernetの基礎について記載しています。第1話では車載Ethernet PHYについて説明しました。

 

第2話では車載Ethernet Switchについて説明します。

Ethernet Switchとは

Ethernet SwitchとはEthernetを使用してネットワークを構築する際に使用されるデバイスです。複数のポートを持っており、MACフレームの転送を制御する役割があります。Ethernet PHYがOSI参照モデルの1層の役割を担いますが、Ethernet Switchでは主に2層の役割を担っておりLayer2 Switchと呼ばれることもあります。

Ethernet Switchの処理フローについて

Ethrnet SwitchはIngress、Packet Buffer、Egressの大きく3つのブロックにわけられます。MACフレームはこれらのブロックで処理され転送されます。主な機能としては図に示すものがあります。

 

MACフレームについて

Ethernet通信ではMACフレームに従って通信が行われます。MACフレームは図に示すような構成になっています。Ethernet SwitchではMACフレームの中身を参照して転送先を決定します。

Ethernet Switchの転送方式について

Ethernet SwitchにはMACアドレスを管理するテーブルがあり、MACアドレステーブルやARLテーブルと呼ばれます。MACアドレスはあらかじめMACアドレステーブルに登録をしておくか、受信したMACフレームから送信元のMACアドレスを学習する方法があります。車内では接続先ECUが変更されることがないため、あらかじめ登録しておくスタティック方式で使用されることが一般的です。

Broadcast

Broadcastとは同じネットワーク上の同じVLANに属しているノード全てに対して転送を行う方法です。宛先MACアドレスがFF:FF:FF:FF:FF:FFのMACフレームに対してBroadcastがおこなわれます。

Unicast

Unicastとは指定した宛先MACアドレスにのみ転送する方法です。但し、SwitchのMACアドレステーブルに宛先情報が登録されている場合に限ります。宛先が不明な場合はFloodingと呼ばれる動作になり、Broadcastと同じ動作となります。

MACアドレス未登録 or 学習前
MACアドレス登録済み

Multicast

Multicastとは複数の宛先に対して転送する方法です。MACアドレスのbit40が1の場合はマルチキャストアドレスと呼ばれ、Multicastに使用されます。登録済みのマルチキャストアドレスのパケットを受信した場合、指定されている複数ポートにのみ転送がおこなわれます。未登録の場合は機器の仕様に応じてパケットは廃棄またはFloodingされます。

 

VLANについて

 

VLANとはVirtual Local Area Networkの略語です。ネットワークを分ける方法として物理的に接続を分ける方法がありますが、VLANを使用することでSwitch一台で仮想的にネットワークを分けることが可能になります。VLANを使用した場合、同一のVLAN ID内で通信がおこなわれることになります。異なるVLAN IDと通信するためにはIP通信(OSI参照モデルの3層の役割)が必要になります。

QoSについて

QoS(Quality of Service)はパケットの優先度に応じて帯域制御や優先制御を行うための技術です。受信したパケットは送信する前に送信Queueと呼ばれる部分に格納されます。パケットの優先度に応じた送信Queueを使用することで帯域制限や優先制御がおこなわれます。パケットの優先度の指定には、VLANタグのPCPを使用することが一般的となります。その後にShaperやSchedulerによって、帯域制限や優先制御がおこなわれます。

Shaper

ShaperとはEthernet Switchの出力側(Egress)で帯域制限する機能です。制限帯域を超過したパケットはバッファーに一時保持されますが保持しきれないパケットは廃棄されます。

Scheduler

Schedulerの各モードの動作について下記に記載します。

・Strict Priority

 優先順位が高い順に転送されます。

・Round Robin

 各優先度のパケットが1パケットずつ転送されます。

・Weighted Round Robin

 各優先度に対して指定のパケット数ずつ転送されます。

 

Strict Priority
Round Robin
Weighted Round Robin

Policer

Policerは特定のパケットに対しEthernet Switchの入力側(Ingress)で帯域制限する機能です。制限帯域を超過したパケットは廃棄されます。Shaperは送信ポート/Queueごとでの帯域制限に対してPolicerでは特定のパケットに帯域制限をかけられるのが一般的となります。

次回について

第3話ではMedia Converter を使用した評価について記載します。

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