はじめに

高度な自動運転実現のため、車内のネットワークにEthernetの採用が増加してきています。しかし、今までEthernet製品を使用した開発に携わったことがない方も多いのではないでしょうか?

本記事では、Ethernetを知らない方を対象に車載Ethernet PHY/Switchの基礎について、全3話で紹介します。

Ethernetとは

Ethernetとは家庭やオフィス等で使用されている有線LANの通信規格です。IEEEという団体で様々な通信規格が規定されており、その中のIEEE802.3として規格化されたものがEthernetと呼ばれます。IEEE802.3ではOSI参照モデルのLayer2(データリンク層)とLayer1(物理層)について規定されています。

車載Ethernetの動向について

車業界の今後の動向としてCASEといったキーワードがあります。それぞれ、Connected、Autonomous、Share & Service、Electricを指します。この中のConnected、Autonomousに関連して車載Ethernetへの注目が高まっています。今後、より高度な自動運転を実現するためには、より多くの情報を扱える必要があり、現在の通信環境より広帯域に対応できる必要があります。

その際にEthernetが適していると考えられます。主な理由は下記のとおりです。

・幅広い通信帯域に対応可能
・プロトコルを統一化可能

車載Ethernet規格について

4つのEthernet規格を表に示します。民生向けと車載向けの規格がありますが、車載向けの特長としては1対のツイストペアケーブルで双方向の通信が可能という点です。これによりハーネスの軽量化が可能であり車体重量を削減できるメリットもあります。車載向けでは100Mbpsの通信規格としてIEEE 802.3bw、1Gbpsの通信規格としてIEEE 802.bpとして規定されています。

100BASE-TX 1000BASE-T

       ※オプションで40mサポート

2020年後半には1Gbpsを超える帯域に対応したMulti Gigabit Ethernetの規格(IEEE 802.3ch)も策定され、今後普及されると考えられます。

PHYとは

OSI参照モデルの物理層(Physical Layer)の略であり、物理層の機能を実装するために必要なデバイスのことを指します。PHYの役割は対向装置に正しく信号を送れるように信号変換を行うことで伝送媒体に応じて電気信号や光信号に変換されます。そのため、各規格に準拠したPHYを使用する必要があります。

100BASE-T1 PHYについて

100BASE-T1 PHYではMACから受信したデータに対して以下のような処理がされます。

・4B/3B
・3B2T
・スクランブル

100BASE-T1 PHYでは4B/3Bの符号化がおこなわれます。4B/3BではPHY内部で33.333MHzのクロックでサンプリングされます(図1参照)。その後、生成多項式に従いスクランブルされ、最終的にPAM3と呼ばれる3値の信号へ変換されます。PAM3信号への変換は3B2T mapperに従います(図2参照)。このPAM3信号を使用することにより、66.666MBdのシンボルレートで100Mbpsの通信が実現されています。また、PHYにはハイブリッド回路とエコーキャンセラーが入っており、元々の送信波形と比較することで受信波形と送信波形の分離を行い1対での送受信が可能となっています(図3参照)。

 

図1:4B3B
図2:3B2T mapperとPAM3信号
図3:Echo Canceller

1000BASE-T1 PHYについて

1000BASE-T1 PHYではMACから受信したデータに対して以下のような処理がされます。

・80B/81B
・3B2T
・スクランブル
・RS-FEC符号化

80B/81Bでは8ビットのデータをMACから受け取り、10回のクロックサイクルを得て80ビットとします。残りの1ビットはデータブロックなのか制御ブロックなのかを判別するヘッダが付加されます。80B/81Bブロックは45個集められ、OAMと呼ばれるフィールドが付加されます。

その後、RS-FEC符号化が行われ、誤り訂正のためのRS-FECパリティビットが付加され、スクランブルされます。1000BASE-T1 PHYではIEEEで規定された10^-10未満のビットエラーレートを満たすために、このような処理が必要とされます。最終的には100BASE-T1と同様にPAM3信号に変換され送信がおこなわれます。

 

MIIとは

PHYとMAC間のインターフェースにはMII(Media Independent Interface)が使用されます。PHYの選定時にはサポートしているインターフェースを確認する必要があります。主なインターフェースとしては表に示すものがあります。

MII:Media Independent Interface

RMII:Reduced Media Independent Interface

GMII:Gigabit Media Independent Interface

RGMII:Reduced Gigabit Media Independent Interface

SGMII:Serial Gigabit Media Independent Interface

 

※RvMII(Reversed Media Independent Interface)

 SoCデバイスとSwitchデバイスのようにMACとMACを接続する場合に用いられるインターフェース。SoCデバイスでMIIのみしかサポートされていない場合にSwitchデバイスでRvMIIを選択頂くと、SwitchデバイスからSoCデバイスへクロック供給する事ができ、このような状況下でも接続/通信させる事が可能です。

第2話 車載Ethernet Switchの記事はこちら

第2話はEthernet Switchの基本動作について説明しています。

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