図1 は、ごく簡単なシリーズドロップ型レギュレータの回路です。出力電圧 VO を、抵抗 R1 と R2 とで分圧して、基準電圧 VR と比較しています。レギュレータから負荷までには、微小な配線の抵抗が存在します。出力電流 IO が小さな場合にはこの回路で何も問題ありませんが、電流が大きくなると電流 IO と配線抵抗 R による電圧降下が無視できなくなります。

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図1 配線の抵抗による電圧降下

この配線抵抗による電圧降下を無視するには、図2 のように電圧検出点を負荷端にもってきます。GND 側の電圧降下が無視できない場合には、GND 側も検出点を負荷端に移動させます。

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図2 センスする場所を負荷に

この接続方法を、ケルビン接続(Kelvin Connection)といいます。電流の流れる配線をフォース(Force)線といい、電圧を検出する配線をセンス(Sense)線といいます。シリーズドロップ型を例にしましたが、この接続方法は他のレギュレータでも同様です。特に最近では、低電圧大電流の傾向が大きいので、電源の設計では必須の方法といえます。

図3 には、実験で使用する電源の接続方法を示します。簡単な実験や電流が小さな場合には、同図左のようにフォース線とセンス線とを電源の根元で接続しますが、精密な実験や電流が大きな場合には、同図右のようにフォース線とセンス線と別々に配線する必要があります。

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図3 Kelvin 接続

ケルビン接続(正確には、ケルビン・ダブルブリッジ)とは、考案者のケルビン卿ウイリアム・トムソンにちなんで付けられた名称です。ケルビンは、絶対温度(ケルビン温度)にも名前が残っています。

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