ソレノイドを使用するアプリケーションの設計において、「配線を減らして基板を小型化したい」「発熱や消費電力を抑えたい」「システムの信頼性を向上させたい」といった課題はありませんか?
今回は、ソレノイド駆動に必要な機能を1チップに集積し、高度な診断機能によって高信頼なシステムを実現できるADI Trinamic™シリーズのソレノイド / モータードライバー
「MAX22216/MAX22217/MAX22216V」を紹介します。
ソレノイドの使用箇所
ソレノイドは、電気信号を機械的な直線運動に変換するアクチュエーターであり、産業機器から自動車まで幅広い分野で使用されています。コイルに電流を流すことでプランジャー(鉄芯)を動作させ、バルブの開閉やロック機構の制御、各種機械動作の駆動をおこないます。
産業機器分野では、空圧・油圧バルブの駆動、製造装置におけるワークの搬送や位置決め、自動ドアや電子錠のロック制御、自動販売機や券売機の機構制御などに利用されています。応答速度が速く、制御回路から直接オン・オフ制御できるため、PLCや産業用コントローラーの代表的な負荷として広く採用されています。
空気、液体、油、蒸気などの流体制御に使用されるソレノイドバルブが代表例
自動車分野では、エンジンやトランスミッション、車体制御システムにおいて重要な役割を担っています。例えば、燃料噴射装置(インジェクター)、オートマチックトランスミッションの油圧制御バルブ、EGR(排気再循環)バルブ、EVAP(燃料蒸発ガス処理)システム、ドアロック機構、電動パーキングブレーキなどで使用されています。また、ハイブリッド車や電気自動車 (EV) では、冷却系統や熱マネジメントシステムのバルブ制御にも活用されています。
このようにソレノイドは、電気信号による確実な機械動作を実現するための重要なアクチュエーターであり、産業機器や車載機器の自動化・高機能化を支えるキーデバイスです。
アプリケーション例
産業オートメーション
酸素濃縮器
農薬散布機
MAX22216 / MAX22217 / MAX22216V
高度な診断機能を備えた4チャンネル・シリアル制御のスマートなソレノイドおよびモータ用ドライバー
特長
・シリアル制御の4チャンネル36Vハーフブリッジ
-1.7A DCおよび3.2Aフルスケール
・車載むけAEC-Q100グレード認定1を取得(MAX22216V)
・低いオン抵抗で高効率
・高い柔軟性
-独立したチャンネル設定
-ハイサイド / ローサイド / ブリッジ接続負荷 / パラレルモード
・高度な制御
-電圧 / 電流駆動
-電流リミッター
-ディザリング機能
-ランプアップ / ダウン機能
-消磁電圧制御
-電流検出機能
・診断機能
-反応時間と動作時間の測定
-プランジャー動作の検出
-開放負荷の検出
-インダクタンス値の測定
-デジタル電流検出
・フルセットの保護機能
-過電流保護
-過熱保護
-低電圧ロックアウト
従来のディスクリート構成に比べて、小型化を実現
MAX22216 / MAX22217 / MAX22216Vは、高度な診断機能や電流制御機能を内蔵した統合型ドライバーソリューションです。従来であれば複数のディスクリート部品で構成していた機能を1チップに集積しているため、部品点数の削減によるBOMコストの低減と実装面積の小型化に貢献します。
さらに、非損失型の電流検出機能を内蔵しているため、外付けの電流検出抵抗(シャント抵抗)が不要です。これにより、部品点数の削減だけでなく、電力損失や発熱の低減にも寄与します。
チップに電流検出機能を内蔵しているため、センサーレスで電流制御が可能
ADI Trinamic™のソレノイドドライバー特長
■ 柔軟な回路構成と駆動方式
ADI Trinamic™のソレノイドドライバーは、さまざまな負荷やアプリケーションに対応できる柔軟な回路構成をサポートしています。ハイサイド駆動やローサイド駆動のシングルエンド構成に加え、ブリッジ接続負荷 (BTL) 構成にも対応しており、ソレノイドやリレー、DCモーターなど幅広い誘導性負荷を駆動できます。
ハイサイド / ローサイド / フルブリッジ構成を自由に選択可能
また、駆動方式としては電圧制御方式(VDRモード)と電流制御方式(CDRモード)、さらにそれらを組み合わせた混合方式をサポートしています。
VDR (Voltage Drive Regulation) モードでは、ハーフブリッジの出力電圧を一定に制御します。電源電圧が変動した場合でも内部で補償を行うため、安定した駆動が可能です。
一方、CDR (Current Drive Regulation) モードでは、ハーフブリッジの出力電流を閉ループで制御します。内部で検出した電流値をフィードバックすることで高精度な電流制御を実現し、ソレノイドや比例バルブの安定した動作に貢献します。さらに、比例ゲイン(Pゲイン)と積分ゲイン(Iゲイン)を設定できるため、応答速度と定常状態の誤差を用途に応じて最適化できます。
駆動方式はユーザーが使いやすい方式で選択可能
■ パラレル出力による高電流駆動に対応
MAX22216 / MAX22217 / MAX22216Vは、複数のハーフブリッジ出力を並列接続して使用することができます。これにより、単一チャンネルでは駆動が難しい大電流のソレノイドやモーターにも対応可能です。
また、必要な出力電流に応じてチャンネル構成を柔軟に変更できるため、外付けドライバーやMOSFETを追加することなくシステムを構成できます。これにより、回路設計の簡素化や実装面積の削減に貢献します。
一般のドライバーは1chに1デバイス接続となり、チャンネルごとの出力に上限がある
電流が足りないと外付けFETとなり、チャネル数が多いほど面積を食ってしまう
ADI Trinamic™のドライバーは出力チャンネルを組み合わせて大電流に対応できる
例:1.7A×4chハーフブリッジを6.8A×1chハーフブリッジに
1.7A×2ch_ハーフブリッジ+1.7A×1chフルブリッジに
■ コイル診断機能による位置推定と予知保全
MAX22216 / MAX22217 / MAX22216Vは、高度な診断機能を内蔵しており、システムの信頼性向上や予知保全の実現に貢献します。
本デバイスはソレノイドコイルの抵抗値およびインダクタンスを測定でき、コイルの状態変化をリアルタイムで監視できます。これにより、断線や短絡といった故障の検出だけでなく、経年劣化や機械的な異常の兆候を把握することが可能です。
通電時にAC成分を加えることでソレノイドのRとLを測定
さらに、コイル抵抗値の変化からコイル温度を推定できるため、過熱の検知や装置の状態監視にも活用できます。
ソレノイドのLとRは温度依存性を持ち、LとRの閾値を設定することでアラート出力可能
また、インダクタンスの変化からプランジャー位置を推定できるため、追加の位置センサーを使用せずにソレノイドの動作状態を監視できます。
■ DPM機能によるプランジャー動作診断
MAX22216 / MAX22217 / MAX22216Vは、DPM (Detect Plunger Movement) 機能を搭載しており、ソレノイドへの通電だけでなく、プランジャーが実際に動作したかどうかを検出できます。
また、プランジャーの動作時間を測定できるため、ソレノイドの応答速度や動作状態を定量的に監視することが可能です。動作時間の変化は、摩耗や汚れの蓄積、機械的な抵抗増加などの兆候を示す場合があり、設備の予知保全に活用できます。
さらに、SPIインターフェースを介したリアルタイム電流モニタリング機能により、駆動中の電流状態を常時監視できます。これにより、「電流は流れているがプランジャーが動いていない」といった異常状態の検出も可能となり、システム全体の信頼性向上に貢献します。
■ 移動完了後は自動で保持モードへ移行し省エネ化
MAX22216 / MAX22217 / MAX22216Vは、ソレノイドの駆動を最適化するためのさまざまな制御機能を内蔵しています。
代表的な機能として、ソレノイドの動作開始時には大きな電流を供給し、プランジャーの移動完了後は保持に必要な最小限の電流へ自動的に切り替える2レベルシーケンサー機能があります。これにより、消費電力や発熱を大幅に低減できます。
さらに、DPM (Detect Plunger Movement) 機能と組み合わせることで、プランジャーの動作を検出したタイミングで保持電流へ移行することが可能です。必要以上に高い電流を流し続けることがないため、ソレノイドの温度上昇を抑制し、システム全体の省エネルギー化と長寿命化に貢献します。
また、駆動信号を緩やかに変化させてEMIを抑制するランプ制御 (RAMP)、静止摩擦やヒステリシスの影響を低減して比例制御の精度を向上させるディザー機能 (DITH)、およびコイルの磁気エネルギーを素早く放出して応答速度を向上させる高速消磁機能 (DC_H2L) も搭載しています。
これらの機能により、省エネルギー化と高精度制御、さらには高速応答を同時に実現できます。
プランジャーを動かすための電流と保持するための電流は異なる
ADI Trinamic™のソレノイドドライバーは、自動で保持電流へ切り替え省電力に
■ チャンネルごとの保護・フォルト検出機能で信頼性アップ
MAX22216 / MAX22217 / MAX22216Vは、各チャンネルごとに充実した保護機能と診断機能を備えています。過電流保護 (OCP)、過熱保護 (OVT)、低電圧ロックアウト (UVM)、開放負荷検出 (OL)、プランジャー動作検出 (DPM) などを搭載しており、異常発生時には負荷やデバイスを保護します。
また、検出した異常はチャンネル単位で監視できるため、複数のソレノイドやアクチュエーターを制御するシステムにおいても、不具合箇所を迅速に特定できます。フォルト発生時にはフォルトインジケーターピンがアサートされるほか、SPI経由で詳細な故障情報を取得できるため、システムの状態監視や保守性の向上にも貢献します。
これにより、故障によるシステム停止リスクを低減し、高い信頼性が求められる産業機器や車載機器において安心して使用できます。
全体の保護機能 / アラート
・低電圧ロックアウト (UVM)
・過熱保護 (OVT)
・通信エラー (COMER)
チャンネルごとの保護機能 / アラート
・負荷開放検出 (OL)
・過電流保護 (OCP)
・ヒット電流未達アラーム (HHF)
・プランジャー動作異常検出 (DPM)
・抵抗 / インダクタンス値以上アラーム (RES / IND)
■ OTPによるスタンドアローン動作で配線削除と小型化を実現
MAX22216 / MAX22217 / MAX22216Vは、設定情報をワンタイム・プログラマブル (OTP) メモリーに保存することができます。
通常はSPIインターフェース経由で各種パラメーターを設定し、動作中も自由に変更できます。一方、量産品など設定変更が不要な用途では、設定内容をOTPに書き込むことで、電源投入時に自動的に設定をロードできます。
特に、ソレノイドを常に同じ条件・同じ駆動パターンで使用するアプリケーションでは、OTPに設定を保存することでマイコンによる初期設定やSPI通信を必要とせず、スタンドアローンでの動作が可能です。 これにより、制御ソフトウェアの開発負荷を軽減できるだけでなく、SPI配線や周辺回路を削減できるため、システムの小型化やコスト削減にも貢献します。
また、設定内容をデバイス内部に保持できるため、製品ごとの設定管理が容易になり、量産時の設定ミス防止にも役立ちます。
これまでの製品との比較
MAX22216 / MAX22217 / MAX22216Vは、従来製品のMAX22200をベースに、ソレノイド制御の高機能化と診断機能の強化を実現した次世代ソレノイド / モータードライバーです。
従来から搭載されていたDPM(プランジャー動作検出)機能に加え、インダクタンス測定、リアルタイム電流モニタリング、Dither機能、Ramp制御などを新たに搭載しています。また、電流制御はピーク検出方式からPI制御へ進化し、より高精度な電流レギュレーションが可能になりました。
さらに、パラレル接続の自由度向上やDCモーター用途への対応強化により、幅広いアプリケーションで活用できます。
| 機能 | MAX22200 | MAX22216 / MAX22216V / MAX22217 |
|---|---|---|
| 独立ハーフブリッジ数 | 8 | 4 |
| 電流駆動能力 | 1 A | 1.5 A / 0.75 A |
| 並列モード | チャンネルペア | 全ての組み合わせに対応 |
| 電圧モード | Yes(VM補償なし) | Yes(VM補償あり) |
| 電流モード | Yes(ピーク検出) | Yes(PI制御) |
| DPM | Yes | Yes |
| ランプジェネレーター | No | Yes |
| インダクタンス測定 | No | Yes |
| 電流モニター | No | Yes |
| 電流リミッター付きDCモーター対応 | No | Yes |
| BTLモード—高速デマグモード | Yes(ゼロクロス検出なし) | Yes(ゼロクロス検出あり) |
| ディザー | No | Yes |
| 温度グレード | 産業用(−40°C~+85°C) | 車載用まで拡張(−40°C~+125°C) |
MAX22200との機能比較表
GUIによる簡単設定
ADI Trinamic™では、GUIツール「TMCL-IDE」を使用することで、MAX22216 / MAX22217 / MAX22216Vの各種設定を簡単におこなうことができます。画面上の指示に従って動作条件や駆動パラメーターを入力するだけで設定が完了するため、複雑なレジスター設定を意識する必要がありません。
また、実際のソレノイドやモーターの動作を確認しながらパラメーターを調整できるため、最適な駆動条件を短時間で見つけることが可能です。プラグアンドプレイで評価を開始できるため、開発期間の短縮や試作評価の効率化にも貢献します。
評価ボード
MAX22216 / MAX22217 / MAX22216Vは、PCを接続してすぐにソレノイドを駆動・評価ができる評価ボードをご用意しています。
まとめ
MAX22216 / MAX22217 / MAX22216Vは、高度な診断機能、省電力制御、高信頼性を兼ね備えており、ソレノイドやバルブ、リレー、DCモーターなどの誘導性負荷を使用する幅広いアプリケーションで活用できます。
・産業オートメーション
-油圧、動力、制御システム、バルブマニホールド、DCモーター駆動、比例弁、電気機械式ブレーキ、リレー / コンタクター、ヒートポンプ
・自動販売機
・スマートドアロック
・ヘルスケア
-医療機器、透析装置、酸素濃縮器、人工呼吸器
・自動車
-サスペンションシステム、暖房システム、燃料ポンプ
今回は、ソレノイドの用途と、シリアル制御や高度な診断機能によってシステムの信頼性向上を実現するADI Trinamic™のソレノイド / モータードライバー「MAX22216 / MAX22217 / MAX22216V」を紹介しました。
本製品は、ソレノイドやモーターを小型・省エネで駆動したい場合や、予知保全や状態監視によって高信頼なシステムを構築したい場合に最適なソリューションです。また、シリアル通信による柔軟な制御に加え、GUIツール「TMCL-IDE」を活用することで、複雑なソフトウェア開発を抑えながら短期間で評価・開発を進めることができます。
ソレノイドやモーターの制御性能向上、小型化、省エネルギー化、高信頼化を検討されている方は、ぜひMAX22216 / MAX22217 / MAX22216Vをご活用ください。
ご自身のアプリケーションに活用できそうだと感じた方は、まずは評価から始めてみませんか?
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