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【がんばれタネペンズ~若手アナログFAEのサポート日誌~】第3回 ±40V入力できると伝えたが...
【がんばれタネペンズ~若手アナログFAEのサポート日誌~】第3回 ±40V入力できると伝えたが...
【がんばれタネペンズ~若手アナログFAEのサポート日誌~】第3回 ±40V入力できると伝えたが...

私はマクニカに新卒として入社し、まだまだ若手の半導体FAEとして現在活動をしております。

 

私は元々畑違いの分野からの入社ということもあり、アナログ分野の知識をキャッチアップするには苦労する部分が多々あり、サポート業務の中でいくつかの失敗を経験してきました。

 

今回は、その中でもADコンバーターの入力構造に関する失敗談を交えてシングルエンド入力方式 / 疑似差動入力方式 / 差動入力方式の違いについて紹介します。

±40V入力できると伝えたが…

ある時、AD4857 というADコンバーターを使用した設計についてお客様から相談を受けました。

AD4857は広い入力範囲を持ち、soft spanという機能で内部レジスタの設定により入力レンジを変更することが可能という特長を持った製品です。データシートを確認すると、冒頭の特長欄に入力レンジとして ±40V の設定が可能と記載されています。

勘違いを生んだAD4857のデータシートの表紙。入力レンジとして ±40V の設定が可能と記載されている。
図1:AD4857のデータシートの表紙

そこでお客様より±30Vの信号も入力できるかと質問を受け、私は問題ありませんと説明しました。

 

しかし後日、データシートを確認していると大きな勘違いに気づきました。

 

何が問題だったのか?

データシートに記載されていた ±40V入力範囲は「差動入力時」の条件であり、お客様の回路構成は シングルエンド(実質的には疑似差動)入力であり、今回の入力の仕様を満たせないことがわかりました。

つまり私は、ADコンバーターの入力構造を確認せずに、最大入力範囲だけを見て説明するという典型的なミスをしてしまいました。

 

そこで、ここからは入力範囲の考え方を含め、それぞれの構成の違いについて紹介します。

AD4857の電気的特性(電圧範囲)
図2:AD4857の電気的特性(電圧範囲)

シングルエンド入力方式

シングルエンド入力方式ADコンバーターの構成図
図3:シングルエンド入力方式の構成図

ADコンバーターのもっとも基本的な構成がシングルエンド入力方式です。

 

この構成では、入力信号はADコンバーターのGNDを基準として変換されます。つまり、入力電圧の範囲は「GNDに対してどこまで振れるか」という観点で決まります。このため、入力可能な電圧は通常、GNDからリファレンス電圧付近、あるいは電源電圧付近までに制限されます。

 

また、シングルエンド入力は構成がシンプルな点がメリットですが、信号は常にGND基準で評価されるため、GNDノイズや電源リターン電流による電位変動の影響を直接受けます。そのため、ノイズの多い環境や高精度測定用途では性能面の制約が顕在化しやすくなります。

疑似差動入力方式

疑似差動入力方式ADコンバーターの構成図
図4:疑似差動入力方式の構成図

疑似差動入力は、シングルエンドの制約を一部緩和する事が可能です。この方式では、IN+IN-の差分を測定しますが、IN-入力は信号源のGNDに接続されることが一般的です。そのため、測定値は差分として扱われるものの、各入力端子の電圧はシングルエンド同様GNDからリファレンス電圧付近になることが多いです。

 

疑似差動入力はシングルエンド入力方式と比較し、信号源GNDにのったノイズや電位変動を相殺することができるため(コモンモードノイズ除去)、ノイズ耐性が強く実効精度が向上しやすい構成になります。

差動入力方式

差動入力方式ADコンバーターの構成図
図5:差動入力方式の構成図

差動入力では、IN+IN-の両方が信号入力となり、ADコンバーターはその差分電圧を変換します。

 

このとき重要なのは、「入力レンジが各端子の対GND電圧ではなく、IN+IN−の差分で定義される」という点です。つまり、失敗談であった±40Vの差動入力範囲というのは、IN+IN-の電圧差が±40V(例えばIN+ : 20V, IN- : -20V)ということになります。

 

シングルエンドや疑似差動と比べ、差動入力方式では所定の電源およびリファレンスの構成に対して入力範囲を2倍にする能力があり、ダイナミックレンジを広げることができます。

ADコンバーターの差動入力によるダイナミックレンジの拡大
図6:差動入力方式によるダイナミックレンジの拡大

また、差動信号方式ではIN+, IN-両方に信号が入力され、信号源の互いのノイズが相殺されるため、もっともノイズ耐性の強い構成となります。

しがたって、より高精度な変換が求められるアプリケーションで有用な構成です。

まとめ

今回は私の失敗の経験から入力電圧範囲の考え方にフォーカスしてADコンバーターの入力アーキテクチャーの違いについて紹介しました。

 

ADコンバーターを選定するとき、データシートに記載されている最大入力レンジはとても重要な情報です。しかし、その値がどの入力方式を前提にした仕様なのかを確認しないと、実際には想定した電圧を入力できないことがあります。今回の「±40V入力できる」と思い込んでしまった失敗は、まさにその確認が足りなかったことが原因でした。

 

それぞれの入力方式にはメリットと注意点があります。そのため、ADコンバーターを選ぶ際は、最大入力レンジだけでなく、入力方式、各端子の対GND電圧範囲、測定したい信号の基準点まで含めて確認することが大切です。

 

私自身、ADコンバーターの入力方式を整理するうえで、アナログ・デバイセズによる以下の記事を参考にしました。シングルエンド入力、疑似差動入力、差動入力についてさらに詳しく知りたい方は、ぜひ読んでみてください。

SAR ADCの様々なアナログ入力アーキテクチャに関する検討

がんばれタネペンズ~若手アナログFAEのサポート日誌~ 記事一覧

第1回 ADCの分解能、どうやって考える?

第2回 ADCの分解能改善のテク

・第3回 ±40V入力できると伝えたが...

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