計測器の要求仕様が上がると、フロントエンドの再設計が必要になりますが、多くの現場ではリソースや時間が限られています。手戻りや失敗を繰り返す余裕がない中で、「最短ルートで再設計を進めたい」とお考えの設計者の方も多いのではないでしょうか。
本記事では、そうした方におすすめの選択肢として、アナログ・デバイセズ (ADI) 社の統合型ΣΔAFEを紹介します。
フロントエンドの性能は、誤差やばらつきの積み重ねで決まる!
分解能だけでは測れない──計測器フロントエンドで本当に効くもの
計測器のフロントエンドの性能は、分解能の数字だけで決まるわけではありません。PGA、フィルター、MUXなど、AD変換を支える要素ごとの誤差やばらつきが積み重なり、最終精度をじわじわと押し下げます。
24bitΣΔADコンバーター「AD4130」「AD4190」は、精度維持に重要な機能を1チップに内蔵することで、性能と実装性を両立。回路の省スペース化と部品点数の削減を同時に狙える選択肢です。
両製品は、狙うアプリケーションに合わせて「低ノイズをどう成立させるか」の設計思想が異なります。
AD4130
バッテリー駆動の計測器向けに設計された超低消費電力製品です。バッテリーの寿命や製品の小型化に貢献する工夫が施されています。
AD4190
低ノイズ性能と高いデータレートを両立した、測定品質を最優先したフロントエンドです。高品質が求められる、デスクトップ型の計測器に最適です。
以下に、AD4130とAD4190をそれぞれ詳しく紹介します。ご自身のアプリケーションに合わせて選んでください。
AD4130:バッテリー駆動の計測を低ノイズのまま長く動かす統合ADコンバーター
AD4130ファミリーは、連続変換モードで32μAという超低消費電力を実現。前世代の「AD7124」と同等の性能を維持しながら、消費電流をわずか1/10まで抑えています。代表製品「AD4130-4」は、高精度な24bitΣΔADを搭載し、計測に必要な周辺機能を1パッケージに統合しています。
統合されている周辺機能
■低ノイズPGA(ゲイン1~128)
■PGAバイパスによるプリチャージバッファー
■クロスポイント・マルチプレクサー
■内蔵リファレンス(1.2Vまたは2.5V。外部リファレンスも利用可能)
■SINCフィルター
■診断機能
■センサーバイアス電圧
■スマートシーケンサー
■FIFO、デューティーサイクリング機能
AD4130ファミリーのラインナップ
AD4130ファミリーには以下のラインナップがあります。
・AD4130:24bit/FIFO内蔵
・AD4129:16bit/FIFO内蔵
・AD4131:16bit/FIFOなし
各型番に、4チャンネル品(4差動または8疑似差動)と8チャンネル品(8差動または16疑似差動)が用意されています。
AD4130ファミリーの利点
AD4130ファミリーを採用することで、以下の利点が得られます。
■ バッテリー寿命の最大化
単電源1.71~3.6Vの低電圧動作に対応。単セルバッテリーの利用時や、電源電圧の低下時にも長く安定して動作し、バッテリー寿命を最大化します。
■ SINCフィルターによるノイズ除去
50Hz/60Hzの商用電源のノイズ成分を除去するSINCフィルターを内蔵。柔軟なフィルター・オプションと、最大2.4kspsの幅広い出力データレートにより、システムの要求速度に合わせたノイズ抑制が可能です。
■ 誤差の積み上げを解消し、部品点数を削減
周辺機能が統合されているため、個別部品の組み合わせで発生する「誤差の積み上げ」を解消。部品点数を削減し、高精度な計測、基板の省スペース化、コスト抑制を同時に実現します。
■ 設計資産の再利用による早期市場投入
多様な機能の集約により、ハードウェアは共通のまま、ソフトウェア制御だけでさまざまな基板に対応。一度の設計を複数の製品ラインナップに展開できるため、開発工数を削減し、新たな製品をいち早く市場に投入できます。
AD4190:高精度・多チャンネルをよどみなく計測する統合ADコンバーター
続いて紹介するAD4190ファミリーは、高速・高精度のデータ測定が可能です。24bitの高精度ΣΔADコンバーターを搭載し、必要な周辺機能を1パッケージに集約。基本的な構成はAD4130ファミリーと共通ですが、測定品質につながるスペックに重点が置かれています。
統合されている周辺機能
■低ノイズPGA(ゲイン0.5~128)
■PGAバイパスによるプリチャージバッファー
■クロスポイント・マルチプレクサー
■内蔵リファレンス(2.5V。外部リファレンスも利用可能)
■SINCフィルター
■診断機能
■チャンネルシーケンサー
AD4190ファミリーのラインナップ
AD4190ファミリーには、「AD4190-4」と「AD4195-4」の2種類があります。
・AD4190:電気的特性をtyp(標準値)で規定
・AD4195:電気的特性をmin(最低値)/max(最大値)で規定
デバイス側で絶対値基準が定義されているため、誤差を正確に把握したい場合は、AD4195がおすすめです。
AD4190ファミリーの利点
AD4190ファミリーを採用することで、以下の利点が得られます。
■ デスクトップ型の測定器に適した電源電圧と、0.5倍からのゲイン設定
電源電圧4.75V~5.25Vに対応。安定した電源供給が可能なデスクトップ型の測定器に適しています。低ノイズPGAは0.5倍から128倍まで設定可能。入力信号に合わせて、より細かく倍率を調整できます。
■ 出力データレート最大62.5kspsで高速・高精度測定
5~62.5kspsという幅広い出力データレートに対応。AD4130ファミリーよりも約30倍も高速で、より高精度な測定を実現します。内蔵SINCフィルターにより、商用電源由来の50Hz/60Hzのノイズを同時に除去します。
もちろん、誤差の積み上げの解消や部品点数の削減、設計資産の再利用による設計工数の削減といった、シグナルチェーンの統合によるメリットも享受できます。
AD4130/AD4190ファミリーと従来品の主要スペック比較
以下は、AD4130およびAD4190ファミリーと、従来品 (AD7124、AD4170) で、主要なスペックを比較した表です。前世代のAD7124と、AD4130/AD4190ファミリーはピン互換のため、既存の設計からの置き換えもご検討いただけます。
|
AD4130シリーズ (DC) |
AD4190シリーズ (DC) |
AD4170シリーズ (AC + DC) |
AD7124シリーズ (DC) |
|
|
サンプリングレート (kSPS) |
0.01 to 2.4 |
0.01 to 62.5 |
0.01 to 500 |
0.01 to 19.2 |
|
消費電流 (mA) |
0.032 |
10 |
12.5 |
0.3/0.4/1 |
|
内蔵電圧リファレンス |
✔ |
✔ |
✔ |
✔ |
|
励起電流, VBIAS |
✔ |
✔ |
✔ |
✔ |
|
フィルター |
Sinc3, sinc4, sinc3 + sinc1, Sinc4 + sinc1 Post filters |
Sinc3, sinc5, Sinc5 + Avg Post filters |
Sinc3, sinc5, sinc5 + Avg Post filters Wideband FIR User Programmable Wideband FIR |
Sinc3, sinc4, Post filters |
便利機能──シーケンサー/FIFO/診断機能をどう使うか
AD4130およびAD4190ファミリーには、システム全体の省電力化と信頼性向上に寄与する、以下の機能が搭載されています。
スマートシーケンサー/チャンネルシーケンサー (AD4130/AD4131)
通常、多チャンネル測定では、ホスト・プロセッサーがSPI経由で「ADCチャンネル切り替え」や「ゲイン設定」などの命令を送る必要があり、消費電力の増大要因となっています。
AD4130に備わっているスマートシーケンサーは、チャンネルごとの測定条件(ゲイン/フィルター/データレートなど)を事前設定し、最大16チャンネルを決めた順番で自動変換できる機能です。これにより、チャンネル切り替えのたびにSPIで設定を書き換える必要が減り、ホスト側の負荷を抑えられます。FIFOと組み合わせることで、マイコンを長時間スリープさせるような「自律計測」にもつなげられます。
*チャネルシーケンサー機能の概要については後述する内容をご参照ください。
チャンネルシーケンサー (AD4190/AD4195)
AD4190ファミリーにはチャンネル(自動)シーケンサー機能が備わっています。これは、チャンネルごとの設定と自動シーケンスで、多チャンネル計測を整理する機能です。最大62.5kspsの広いデータレートやTDM互換のデータストリーミングにも対応し、低ノイズチャンネルを効率よく回す運用に強みがあります。
デューティーサイクルモード (AD4130/AD4131)
AD4130/AD4131にはデューティーサイクルモードがあります。これは、AD変換のときだけアクティブになり、変換と変換の間は低消費電力状態に落として、平均消費電流を小さくする仕組みです。比率1/4や1/16を選ぶことができ、代表値としては連続変換32μA(ゲイン128)に対して、デューティーサイクル比1/16では5μAまで抑えられます。
スマートシーケンサーやFIFO(256サンプル)と組み合わせることで、マイコンの通信や稼働時間を減らし、計測系を自立動作によりシステムとして低消費化につなげられます。
FIFO機能 (AD4130)
AD4130では、FIFOバッファーが内蔵されており、最大256個までのデータを連続的に収集可能です。その間はホスト・プロセッサーをスリープ状態にできるため、システム全体を省電力化できます。柔軟なFIFOモードやスリープ解除条件を備えており、要件に応じた設定が可能です。
堅牢性のための診断機能
AD4130、4190ともに、充実した診断機能が備わっています。堅牢なシステム設計を強力にバックアップします。
・デバイスエラー
・リファレンス検出
・リファレンスの過電圧/低電圧
・変換エラー
・励起電流コンプライアンス (AD4190-4/AD4195-4)
・アナログ入力過電圧/低電圧検出
・バーンアウト電流
・電源モニター
・LDOモニタリング
・SPIインターフェース
アプリケーション
AD4130およびAD4190ファミリーは、主に以下のアプリケーションに採用されています。
AD4130ファミリー:低消費電力が求められるバッテリー駆動のポータブル計測器
AD4190ファミリー:温度計や重量計、流量計、気圧計といった高精度計測器
今回は、ADIの統合型ΣΔAFE「AD4130」「AD4190」を紹介しました。
精度維持に不可欠な機能を1チップに集約し、測定精度と回路設計の簡素化を両立した両ファミリーは、開発リソースや時間が限られている設計現場に最適なソリューションです。
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