最新のFPGAなどの高性能プロセッサーは、電源電圧の要求精度が非常に厳しくなっています。「FPGAの電圧精度要求を満たせる大電流LDOが欲しい」と、お困りの方も多いのではないでしょうか。
今回は、業界屈指の5A出力が可能な大電流LDOを筆頭に、最新の高性能プロセッサーの電源設計で活躍する、旧リニアテクノロジー社の大電流LDOラインナップを紹介します。ご自身の回路に使える製品があるか、ぜひチェックしてみてください。
高性能プロセッサーの電源要件を満たす方法とは?
近年、FPGA、ASIC、DSPなどの高性能プロセッサーは、プロセスの微細化が進み、処理能力が飛躍的に向上しています。それにともない、電源要件が低電圧化するとともに、「電圧精度±1%以下」といった極めて高い精度が要求されるようになっています。一方、消費電力は増加を続けているため、低電圧・大電流を高精度で求められる箇所は今後ますます増える見込みです。

高性能プロセッサーの電源要件を満たすためには、どのような方法があるのでしょうか。その1つがLDO (Low Drop Out) レギュレーターの活用です。DC/DCコンバーターと高性能プロセッサーの間にLDOを置くことで、比較的容易かつ低コストに、電圧の安定化や高精度化を図ることができます。
ところが、一般的なLDOの出力電流には限界があり、残念ながら大電流を要求する高性能プロセッサーには適合しないケースが少なくありません。「もっと大電流のLDOがあれば良いのに」と嘆く声も聞かれます。
実は、高性能プロセッサーの電源で活躍する大電流LDOを、旧リニアテクノロジー(LTC)が提供しています。下記の特長があり、DC/DCコンバーターから渡す電圧の安定化に最適です。
・ドロップの少ない電圧変換が得意
・出力電圧精度が高い
・省スペース、低コスト化に貢献
これまで電流不足でLDOをあきらめてきたケースでも、積極的にご活用いただけます。
また、高性能プロセッサーの電源に使うLDOであれば、次のような機能が求められるケースも多いのではないでしょうか。
・高速過渡応答
・イネーブル機能
・パワーグッド機能
・発熱を抑える機能
今回ご紹介する旧LTCの大電流LDOは、こうした要望を一気に実現します。
大電流LDOのラインナップ紹介
具体的に、製品を紹介していきましょう。
【ラインナップ(1) LT3070/LT3071】超低ドロップアウト、高速過渡応答の5A出力LDO
1つめは、出力電流5Aという業界屈指の大電流を誇る「LT3070/LT3071」です。超低ドロップアウト電圧で、高速過渡応答のLDOです。

・最新プロセッサーに適応した出力
-出力電圧:0.8V~1.8V
-50mV刻みでデジタル設定可能
-出力電流:5A
-複数並列接続が可能(10A以上出力もOK)
・発熱を抑制
-超低ドロップアウト電圧:85mV
-入力電圧トラッキング機能(VOIC)内蔵
-前段電源を制御し損失を最小限にできる
・高速過渡応答
-出力コンデンサーを最小化(最小15μF)
・プロセッサーの立ち上げ/立ち下げに最適化された機能
-イネーブル機能
-パワーグッド
-UVLO
-サーマルシャットダウン
-逆電流保護
・LT3071はアナログ・マージニング機能付き。出力電圧を連続的に可変可能。
【ラインナップ(2) LT3072】2ch各2.5A出力可能。高速過渡応答のLDO
2つめは、「LT3072」です。2チャンネルのLDOで、それぞれ2.5Aの出力が可能となっています。

・最新プロセッサーに適応した出力
-出力電圧:0.6V~2.5V
-50mV刻みでデジタル設定可能
-出力電流:各2.5A
・最新プロセッサーの要求を満たす出力精度
-低出力ノイズ:12μVrms (10Hz~100Hz)
・高速過渡応答
-出力コンデンサーを最小化(最小10μF)
・プロセッサーの立ち上げ/立ち下げに最適化された機能
-イネーブル機能
-パワーグッド
-UVLO
-サーマルシャットダウン
-逆電流保護
【ラインナップ(3) LT3073】超高PSRR、高速過渡応答の3A出力LDO
3つめは「LT3073」です。PSRRが非常に高いLDOです。

・高速コンバーターやRFICのパフォーマンスを最大化
-超低RMSノイズ:1.2μVRMS (10Hz~100kHz)
-超低スポット・ノイズ:3nV/√Hz (10kHz)
-超低1/fノイズ:7μVP-P (0.1Hz~10Hz)
-高周波PSRR:52dB (1MHz)
-ドロップアウト電圧:45mV
・入力電圧範囲:0.6V~5.5V
・出力電圧範囲:0.5V~4.2V(デジタル設定可能)
・出力電流:3A
-プログラマブルな電流リミット
-電流モニタリング機能
・プロセッサーの立ち上げ/立ち下げに最適化された機能
-イネーブル機能
-パワーグッド
-UVLO
-サーマルシャットダウン
-温度モニタリング機能
【LT307xシリーズ】比較表
ここまで紹介した「LT307xシリーズ」のラインナップについて、特長をまとめてみましょう。3つの製品を比較すると、下図のようになります。特に注目すべきスペックは、出力電流とドロップアウト電圧です。
LT3073 |
LT3070-1/LT3071 |
LT3072 |
|
出力電流とその時のドロップアウト電圧 |
3A, 45mV |
5A, 85mV |
2.5A(2ch), 80mV |
出力電圧マージニング |
デジタル |
LT3070-1:デジタルLT3071:アナログ |
アナログ |
PSRR |
52dB(1MHz時) |
36dB(100kHz時) |
43dB (100kHz時) |
RMSノイズ |
1.2µV (10Hz-100kHz) |
25µV (10Hz-100kHz) |
12µV (10Hz-100kHz) |
前段のDC/DCを制御するVIOC機能 |
Yes |
Yes |
Yes |
なぜ重要?LDOのドロップアウト電圧
なぜ、LDOではドロップアウト電圧が低いことが重要なのでしょうか。
ドロップアウト電圧とは、LDOから想定通りの出力電圧を得るために必要となる、入力電圧と出力電圧の最小差です。例えば、LDOのドロップアウト電圧が200mV (0.2V)であれば、5Vで出力するために5.2V以上の入力電圧が必要になります。
LDOから発生する熱は、「入出力の電圧差×出力電流」によって決まります。入出力の電圧差が大きいと、より多くの熱が発生するため、差をできるだけ小さくすることが設計のポイントの1つです。しかし、その差をどこまで縮小できるかはLDOのドロップアウト電圧の仕様に依存します。LDOのドロップアウト電圧が大きいと、選択の幅が削られてしまうのです。
さらに、発熱には出力電流の大きさも影響します。電圧差の条件が同じでも、出力電流が5倍なら発熱も5倍になる計算です。そのため、大電流LDOでは入出力の電圧差を縮小することがより重要になります。
一般的なLDOのドロップアウト電圧が200mV~500mV前後のところ、LT307xシリーズのドロップアウト電圧は45mV~85mVと非常に低いのが魅力です。入出力の電圧差を大幅に縮小できるため、大電流でもLDOの発熱問題をクリアできるのです。
【ラインナップ(4) LTM4709】モジュールタイプ登場!3ch各3Aの高性能LDO
最後に、モジュールタイプの大電流LDO「LTM4709」を紹介します。出力電流3A、ドロップアウト電圧45mV というLT3073の性能をそのままに、1チップで3チャネルの出力を可能にした製品です。必要な周辺部品もすべて内蔵しています。

・LDOに必要な周辺部品を内蔵
-コンデンサー×3
-抵抗×2
・性能はLT3073のまま、各チャンネル3A出力
-入力電圧範囲:0.6V~5.5V
-出力電圧範囲:0.5V to 4.2V(プログラマブル設定)
-低RMSノイズ:1.3μVRMS (10Hz to 100kHz)
-低スポット・ノイズ:3nV/√Hz (10kHz)
-高周波PSRR:51dB (1MHz)
-ドロップアウト電圧:45mV
-超高速過渡応答
・各保護機能もLT3073をしっかりと踏襲
単一チャンネルのLT3073とモジュールタイプのLTM4709、それぞれを使って、同等の回路を実現する場合を比べてみましょう。LT3073を3個使った回路構成では、周辺部品を含めたトータルサイズは302㎟です。一方、LTM4709は周辺部品も含めて145㎟に収まります。LTM4709を選ぶことで、回路を約50%もサイズダウンできます。

得られるメリットは省スペース化だけにとどまりません。高性能プロセッサーに必要な多電源を1つでまかなえるLTM4709は、設計省力化、部品点数削減、基板コスト削減など、さまざまな面で貢献します。
今回は、最新の高性能プロセッサーの電源設計に役立つ、アナログ・デバイセズ(旧LTC)の大電流LDOを紹介しました。5A出力やモジュールタイプなど、特色あるラインナップを取りそろえています。ぜひ選択肢に加えてみてはいかがでしょうか。
掲載した製品は、いずれも評価ボードをご用意しています。ご興味をお持ちの方は、ぜひお試しください。
ご質問がありましたら、お気軽にお問い合わせください。
アプリケーション例
・高性能プロセッサー
-FPGA
-DSP
-ASIC など

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