デジタルアイソレーター対決(前編):磁気 vs 静電容量

近年、需要が高まっているデジタルアイソレーター。磁気絶縁方式と静電容量方式があることはなんとなく知っていても「違いや特長がよくわからない」「どちらが自社のアプリケーションに適しているのだろうか」と、疑問を抱いている方も多いのではないでしょうか。

 

今回は、デジタルアイソレーターの磁気絶縁方式と静電容量方式について、それぞれの違いや特長を解説してから、前編として、磁気絶縁方式のアナログ・デバイセズ社ラインナップを紹介します。

フォトカプラーに代わる絶縁方式として注目されるデジタルアイソレーター

回路設計では、安全性や品質を高めるために絶縁がおこなわれます。人が直接触れる機器や電流が大きい回路では、絶縁によって静電気や漏電、短絡、機器の故障などを防止することで、安全性を確保できます。また、グラウンド・ループなどからのノイズを切り離すことで、信号伝達品質を向上できます。

 

産業・車載・医療用分野における絶縁技術は、長きにわたりフォトカプラーが唯一の選択肢となってきました。一方、フォトカプラーには次のような欠点があります。

 

<フォトカプラ―の欠点>

・光を使用して絶縁を行うため、多くの電力を消費する

・データレートは通常110Mbps程度であり、伝送速度に限界がある

・発光部分の劣化を補いながらパフォーマンスを保つため、経年にともない、消費電力が増加する

 

そこで近年、フォトカプラーに代わる技術として注目されているのが、デジタルアイソレーターです。デジタルアイソレーターは次のようなメリットを備えており、フォトカプラーの欠点を克服できます。

 

<デジタルアイソレーターのメリット>

・150Mbpsなどの高速データレートが可能で、伝搬遅延が少ない

・消費電力が少なく、経年劣化による増加も起きない

・温度特性、耐圧、CMTI、サージ耐性などに優れ、信頼性が高い

 

こうした特性から、より高い性能・信頼性・堅牢性が要求されるアプリケーションを中心に、デジタルアイソレーターが選ばれることが増えています。

  

デジタルアイソレーターの種類

デジタルアイソレーターには「静電容量方式」「磁気絶縁方式」の2種類があります。アナログ・デバイセズでは、両方のラインナップを持っています。

 

静電容量方式を中心に採用しているのが、アナログ・デバイセズが統合した旧Maxim社のラインナップです。絶縁材にSiO2(二酸化ケイ素)を使用し、エンコーディングはエッジをトリガーにおこないます。

 

磁気絶縁方式を中心に採用しているのが、旧来のアナログ・デバイセズのラインナップです。絶縁材としてポリイミドを使用。エンコーディングはオン・オフ・キーイングが主流となっています。

オン・オフ・キーイングについて、詳しくはこちら

 

下図は、左が旧Maxim、右がアナログ・デバイセズのラインナップのイメージです。

デジタルアイソレーターの種類とそれぞれのメリット(静電容量方式と磁気結合方式)

どちらを選択するべき? ~磁気絶縁 vs 静電容量~

では、どちらを選択するのが賢明なのでしょうか。両者の特長を紹介しながら考えていきましょう。

結合方式と絶縁材による違い

Maxim社ラインナップの静電容量方式は、絶縁材にSiO2を用いており、伝送速度が高速、伝搬遅延が少ない、低スキュー、低ジッターといった特長があります。一方、従来からのアナログ・デバイセズ社ラインナップの磁気絶縁方式は、絶縁材にポリイミドを用いており、高サージ耐圧、高CMTIを特長としています。

結合方式と絶縁材で、どのようなスペックに影響してくるかを表した図

エンコーディングによる違い

Maximのラインナップ(静電容量方式)では、エンコーディングにエッジトリガー方式を採用し、低消費電力を実現しています。一方、旧来のアナログ・デバイセズのラインナップ(磁気絶縁方式)で主流となっているオン・オフ・キーイング方式は、ノイズ耐性の向上、放射EMIの低減に貢献します。

絶縁(アイソレーター)のエンコーディング方式で、どのようなスペックに影響してくるかを表した図

どちらが最適?それぞれのアプリケーション例

このように、両者には異なる特長があります。それぞれの強みを考慮し、自社のアプリケーションに最適な方式を選択することが重要です。以下に、それぞれに適するアプリケーションの例を簡単に紹介します。

  

<静電容量方式が適する例>

高速かつ低消費電力が重要なアプリケーションには、静電容量方式を中心とする旧Maximのラインナップがおすすめです。競争力のある価格帯の製品も多く、汎用的に利用できます。

(例)

・ハンディターミナル

・ポータブル計測器

・各種民生機器

 

<磁気絶縁方式が適する例>

堅牢性や信頼性が求められるアプリケーションには、磁気絶縁方式を中心とする、旧来のアナログ・デバイセズのラインナップがおすすめです。ノイズの多い環境でも安定した動作を期待できます。

(例)

・医療系アプリケーション(内視鏡、血液検査装置など)

・車載アプリケーション

・パワーコンディショナー

RF電源

  

用途に応じて、最適なデジタルアイソレーターを選択しましょう。

【ラインナップ紹介・前編】アナログ・デバイセズの磁気絶縁方式

具体的に、どのような製品があるのでしょうか。今回は前編として、磁気絶縁方式による旧アナログ・デバイセズのラインナップを紹介します。

磁気絶縁方式「iCoupler🄬」の技術進歩

アナログ・デバイセズのデジタルアイソレーターは「iCoupler🄬 (アイカプラー)」と呼ばれます。iCoupler🄬ファミリーは、第1世代から高い堅牢性やノイズ耐性で定評を得ており、医療系アプリケーションやパワーコンディショナーなどに多く搭載されてきました。

 

新しい世代の登場にともなって技術革新が重ねられ、最新の第3世代「ADuM34xシリーズ」では、堅牢性、ノイズ耐性、伝送速度など、あらゆる面でさらに優れた性能を実現しています。

iCouplerは、年々スペックが進化している。特に、堅牢性

ピンコンパチで旧世代から置き換えが可能

iCoupler🄬ファミリーの特長の1つが、全世代の製品がピンコンパチブルになっている点です。すでに第1世代や第2世代のiCoupler🄬製品をご使用のお客さまは、チップを置き換えるだけで、第3世代の最新技術を導入できます。

 

医療機器や産業機械は、設計を変えずに10年、20年にわたって使用されることも多くあります。そうしたアプリケーションでも、チップさえ置き換えれば、確実に絶縁性能を向上できます。このメリットを活用しない手はないでしょう。

iCouplerは旧世代から新世代まで、ピンコンパチでラインナップを用意しているので置換えが容易。

第3世代「ADuM34xシリーズ」の優れた性能

各世代の製品性能を比較したのが下の表です。緑色のセルは、世代間の最高性能を表します。ほとんどの項目で第3世代が最も優れており、性能の高さが一目でわかります。

  

特に注目するべきなのは、医療機器や産業機械で要求される、安全性・堅牢性・伝搬遅延に関するパラメーターです。以下の表で背景色がやや濃い青になっている「Isolation  Rating UL1577」「CTI」「Working Voltage (Viorm)」「CMTI (min)」「Prop delay (max)」が該当します。すべてにおいて、第3世代の性能が際立っています。

ADuM1401とADuM141EとADuM341Eの各パラメーター(パッケージ、安全性、堅牢性など)のスペック比較表
第1~3世代のスペック比較

3世代のADuM34xシリーズは、新たにデジタルアイソレーターを採用する方はもちろんのこと、これまで第1世代、第2世代のiCoupler®ファミリー製品を利用してきた方でも、大いにメリットを感じられる性能へと進化を遂げています。

  

あらゆる面がアップデートされた、第3世代のスタンダードデジタルアイソレーター、ADuM34xシリーズ。皆さま、ぜひ積極的に置き換えてご活用ください。

ADuM341EのIC解剖図。磁気絶縁なので、堅牢性が非常に高いことが分かる。

あらゆる面がアップデートされた第3世代のスタンダードデジタルアイソレーターADuM34xシリーズ。
みんなも置き換えよう!

アプリケーション例

・医療機器

・計測機器(ノイズの分離)

内視鏡
オシロスコープ

商品の購入はこちら

メーカーサイト/その他関連リンクはこちら

お問い合わせ

本記事に関してご質問がありましたら、以下よりお問い合わせください。

アナログ・デバイセズ メーカー情報Topへ

アナログ・デバイセズ メーカー情報Topに戻りたい方は以下をクリックしてください。