DDSって、なに?

DDSはリファレンスクロックから任意の周波数で信号波形を生成する回路です。ファンクションジェネレーターにも使用される技術とご説明した方が分かりやすいかもしれません。

DDSの動作については省略しますが、回路としては、

  1. 位相アキュムレーター
  2. 波形データが書き込まれたROM
  3. アナログ信号に変換するDAC


から構成されています。

DDSは周波数分解能が高く、サイン波出力が容易で、加えて、周波数の切り替えも瞬時におこなうことができる特長があります。反面、スプリアスが発生しますので、後段にはフィルター回路が必須です。また、DDSはリファレンスクロックより高い周波数を生成することができません。このため、リファレンスクロックより高い周波数を生成させる場合は後段にPLLを組み合わせる必要があります。
DDS回路はFPGAなどを使っても実現することは可能ですが、機能を1chipに集約させたという製品もあります。

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シンプルな構成のAD9834

DDSをもっと理解して頂くために、アナログ・デバイセズ社の中で比較的、機能がシンプルなAD9834を使ってご説明します。

AD9834は、リファレンスクロック75MHz時で、出力周波数37.5MHz未満のサイン波/三角波を生成することができます。主なアプリケーションとしては、波形生成、周波数位相チューニング/変調、ローパワーなRF/通信システム、液体や気体の流量測定、近接、モーション、欠陥検出などのセンサー・アプリ、テスト機器、医療機器とさまざまな用途に使用できます。

構成は下図のようになっています。

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特長は?

AD9834の主な特長を下記に示します。

周波数分解能が高い(数Hz刻みでの周波数変更が可能)
周波数分解能は位相アキュムレーターの分解能が大きく影響が、AD9834は28ビットの位相アキュムレーターを持っていますので、周波数分解能はMCLK/2^28ということになります。
例えば、MCLK=50MHzの場合、50MHz/2^28=0.1862…Hz、約0.2Hzの分解能です。

低周波数の生成が可能
DDSはリファレンスクロック以下の周波数(実際はナイキスト周波数以下)の波形生成が可能です。PLL 方式と異なり、低周波数生成に適した回路と言えます。

周波数の切り替えが瞬時におこなえる
AD9834は周波数レジスタ、位相レジスタをそれぞれ2つずつ用意されており、ピン設定で切り替えることが可能です。この機能を利用することにより、FSKやPSK変調が容易です。

サイン波出力が可能
波形データROM には正弦波のデータが書き込まれていますので、サイン波を出力できます。サイン波に加え、AD9834は三角波、矩形波(内部コンパレーター使用)の出力も可能です。

ここでちょっと実験

DDSは低周波数の生成が可能ということで、アナログ・デバイセズ社のWeb版のデザインツール(ADISIMDDS)を利用して出力周波数と波形をシミュレーションで確認してみます。

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ちなみに、周波数を100kHz、1MHz、10MHzと設定すると出力波形は、だんだん荒くなっていきます。

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試しに、高周波数設定最大の37.5MHzを設定してみました。サイン波というより、ほぼ矩形波です。

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DAC出力のためスプリアスが発生してしまう

次に冒頭でご説明したDDSはスプリアスが発生してしまうという点についてご説明します。
DDS出力は上のシュミレーション結果で示したように、階段状の波形が出力されます。これはDACを通し出力させるため仕方ないことですが、結果としてスプリアスが発生することになります。

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どんなスプリアスが発生するか、ADISIMDDSを使用すればシミュレーションできますので、念のため確認してみます。

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スプリアスが発生するため、DDSの後段にはスプリアス除去のフィルター回路が必要というわけです。
 
次回、スプリアス除去フィルターを使用した場合についてご説明します。

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