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熱上昇を約20%抑制!ウルトエレクトロニクスの熱対策ソリューション (WE-TGFG) 実験レポート

進化する熱対策:設計の限界を超える新たな選択肢

近年、電子機器の高性能化・小型化が進む中で、熱対策は製品設計における重要なテーマとなっています。多くのエンジニアが回路設計やヒートシンクなどの従来手法で放熱に取り組んでいますが、設計の自由度やスペースの制約から、十分な効果を得られないケースも増えています。

こうした課題に対し、グラファイトシートは高い熱伝導率と柔軟性を兼ね備えた新たな選択肢として注目されてきました。私たちもこれまで、ウルトエレクトロニクスの WE-TGFG シリーズをはじめとするグラファイトシートの特長をご紹介してきましたが、「本当に放熱できるのか?」という実際の効果を示すデータが不足していたのも事実です。

そこで今回、実際の筐体を模した環境での放熱実験を実施し、WE-TGFG シリーズがどれほどの熱抑制効果を発揮するのかを検証しました。本記事ではその結果を詳しくご紹介し、最大6℃の温度上昇を抑制できた実験データを通じて、グラファイトシートの実力を明らかにします。

高熱伝導・柔軟性を両立したグラファイト熱シート:WE-TGFGシリーズ

図1:画像上( WE-TGFG シリーズ)、画像下(使用例)

ウルトエレクトロニクスの WE-TGFG シリーズは、グラファイトをベースにした高性能熱伝導シートです。最大 400 W/m・K という高い面内熱伝導率を持ち、電子機器内部の熱を効率よく拡散・放熱することが可能です。

このシリーズの特長は以下の通りです。 
 ・熱伝導率:400 W/(m・K)

 ・電気的絶縁:1kV/mm
 ・Hybrid Solutions:Gap Filler、Heat Spreader として適用可能
 ・幅広いアプリケーションに適用できる 2~20mm の厚みを標準ラインナップ
 ・サイズ、形状などをカスタマイズ可能
 ・従来の放熱用シリコン充填剤への置き換え

これらの特性により、従来のシリコン系放熱材では対応が難しかった複雑な筐体構造や狭いスペースにも柔軟に対応でき、熱拡散と放熱の両立を実現します。また、WE-TGFG シリーズは、発熱部品と筐体の間に挟み込むことで、熱を効率よく拡散・放熱するといった使い方が想定されています。特に、筐体そのものを放熱経路として活用する構成において、その柔軟性と熱伝導性能が大きな効果を発揮します。

今回の実験では、こうした実際の使用環境を模した構成で、WE-TGFGシリーズがどの程度の放熱効果を発揮するのかを検証しました。

筐体を模した環境での放熱性能検証

本実験では、WE-TGFG シリーズのグラファイトシートが実際の筐体構造においてどの程度の放熱効果を発揮するかを検証することを目的としました。

実験の目的

・WE-TGFG を使用することで、筐体を通じた放熱が可能かどうかを確認
・実際の使用環境に近い条件で、温度上昇の抑制効果を定量的に評価

実験環境

・使用したのは、24V 2A 仕様の電源モジュール基板
・発熱源としてこの基板を稼働させ、サーモカメラを用いて温度変化を観測
・実験は、基板に WE-TGFG シートを貼り付けた状態※図2で、その上に金属板を重ねる構成で実施
・基板は固定し、サーモカメラで放熱の様子をリアルタイムで記録※図3

実験は、基板に WE-TGFG シートを貼り付けた状態で、その上に金属板を重ねる構成で実施
図2
基板は固定し、サーモカメラで放熱の様子をリアルタイムで記録
図3

実験方法

・電源モジュールを稼働させ、熱飽和するまで加熱
・WE-TGFGシート + 金属板の有無で温度変化を比較
・各構成での温度上昇を記録・比較

このように、実際の使用シーンを想定したシンプルな構成で、グラファイトシートの放熱効果を明確に可視化することを狙いました。

実験結果:温度上昇の抑制効果を確認

実験の結果、WE-TGFG シリーズを使用した構成では、使用しない場合と比較して約20%の温度上昇を抑制できることが確認されました。

実験の流れと結果

今回の実験では、24V 2A 出力の電源モジュール基板を使用し、サーモカメラで温度変化を観測しました。

■ 熱対策ありの状態
 ・ WE-TGFGを電源モジュールに貼り付け、その上に筐体を模した金属板を輪ゴムで固定
 ・この状態で熱が飽和し、49.8℃で温度上昇が停止

■ 熱対策なしの状態
 ・輪ゴムを切って金属板を取り外し、WE-TGFG の効果を除去
 ・その後、再び温度が上昇し、55.8℃で飽和

この結果、周囲温度 23℃ の条件下で、⊿T(温度上昇量)は 26.8℃ から 32.8℃ へと変化し、約 6℃(約20%)の温度上昇抑制効果が確認されました。また、サーモカメラの映像からは、熱が一点に集中せず、広範囲に拡散している様子も視覚的に確認できました。

実験の様子と温度変化の可視化

今回の実験では、温度センサーによる数値データに加え、サーモカメラを用いた熱分布の可視化も行いました。実際にどのように熱が拡散し、WE-TGFG がどのように機能しているのかを、約 2分の動画でご覧いただけます。

以下の動画では、実験の様子と温度変化のリアルタイムな記録をご紹介しています。熱対策あり/なしの状態での温度変化や、サーモカメラによる熱分布の違いを視覚的に確認いただけます。

まとめ:グラファイトシートによる熱対策の可能性

今回の実験を通じて、ウルトエレクトロニクスのグラファイト熱シート「WE-TGFGシリーズ」が、実際の筐体構造を模した環境においても、約 6℃(約20%)の温度上昇を抑制できることが確認されました。

特に、以下のような点が明らかになりました。

 ・高熱伝導性と柔軟性を活かし、筐体を放熱経路として活用できる
 ・狭小スペースや複雑な構造にも対応可能
 ・従来の放熱対策に追加することで、さらなる温度上昇抑制が期待できる

これにより、回路設計だけでは対応しきれない熱問題に対して、シンプルかつ効果的な補完手段として、グラファイトシートの活用が現実的な選択肢となることが示されました。今後は、より多様な筐体構造や発熱条件においても、WE-TGFG シリーズの効果を検証し、製品設計における熱対策の幅を広げていくことが期待されます。

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