インダクター、コンデンサーは用途に合わせた部品選定が必要です。選定のために考慮が必要なポイントを解説します。
今回の内容は、Part3“インダクターのAC損失”になります。
他の記事もご覧になりたい方はまとめページがありますので、そちらをご覧ください。
無負荷でも発熱する?
これまでもAC損失に触れてきましたが、今回はその考え方について解説しどのようなポイントで選定するべきかを説明します。
電源回路のインダクターや電源モジュールなどでは無負荷でも発熱する場合があります。これはインダクターのAC損失が原因である場合があります。
インダクターの主な損失成分を図1に示します。

図1 インダクターの損失成分
図1の中で鉄損はインダクターに印加される電圧、周波数といったAC成分で決まるため負荷電流による影響をほとんど受けません。
直流抵抗に表皮効果を含めた成分は負荷電流の二乗で増えていきます。
無負荷時でも発熱が大きい場合はこの点を考慮して使用条件や選定部品を考慮する必要があります。

図2 電流と損失の関係
図2は電流値とDC損失、AC損失のイメージ図です。このイメージのケースでは無負荷時でも最大負荷時の1/3の損失が発生しています。
“損失を減らしたい=直流抵抗の小さい製品” とは必ずしもならないことになります。
鉄損とは?
使用している鉄心(コア材)の損失成分である鉄損はヒステリシス損と渦電流損が主たる要因です。
これはLCの選定 ~Part1 パワーインダクターの選定~でも記載しましたが、ユーザー側で計算することは困難であるため、ここではどのような要因で増減するかを解説します。
使用されているコア材の特性は重要な要素ですが、開示されていないケースがほとんどですのでここでは考慮せず、同一のコア材を使用したファミリー製品と仮定します。
鉄損に関係する要因
・インダクタンス
大きくすることで鉄損を減少します。しかしながら直流抵抗は増加するため支配的な損失がどちらか確認して調整する必要があります。
・サイズ(体積)
大きくすることで鉄損を減少します。この場合同じインダクタンスでも線径の太いものを使用できるので直流抵抗も減少し損失は大きく低下します。
アプリケーションで許容できるサイズと損失を考慮して調整する必要があります。
・仕様(印加する電圧×時間)
大きくなると鉄損は増加します。図3を使って説明します。

図3 電圧×時間と損失の関係
図3は印加する電圧×時間と損失の関係を示しています。
ここから、500kHzでは印加する電圧×時間は2倍にすると鉄損は約5倍になることがわかります。。例えば500kHzで5Vから2.5Vを生成する場合と10Vから5Vを生成する場合で同じインダクターを使用すると、鉄損は約5倍になるということです。
これらの要因から電圧が高くなると鉄損が増加しAC損失の比率が増加してくることがわかります。この場合直流抵抗が増加してもインダクタンスの高い製品を選択することで、合計損失を低減できる場合があります。
許容されるならサイズ(体積)の大きい製品を検討することで損失を低減することが可能です。
逆に低電圧であればAC損失の比率は低く、直流抵抗を下げることが損失低減に直結する場合もあります。
表皮効果とは?
表皮効果は、交流電流が導体を流れるとき周波数が高くなるほど電流が表面へ集中して流れ、中心部にはほとんど流れなくなり交流抵抗が高くなる現象です。
図4に表皮効果のイメージ図を示します。赤い部分は電流が流れている部分です。直流では導体に均一に電流が流れますが周波数が増加していくと中心部にはほとんど流れなくなります。

図4 表皮効果
δは表皮深さで表面電流密度の1/e(36.8%)になる深さになります。
銅線の場合この計算式で算出します。
δ=2.09/√f [mm]
大電流を使用する場合には銅線を太くして直流抵抗を下げますが、周波数を高くすると表皮効果によって抵抗値が増加してしまいます。
この要因から大電流を使用する場合は周波数を下げることで損失を低減できる場合があります。
まとめ
インダクターを交流回路で使用する場合、DC損失に加えてAC損失が発生します。今回はAC損失について解説しました。
無負荷やそれに近い状態で発熱している場合、インダクタンスやサイズを大きくすることで軽減できる場合があります。
大電流では表皮効果の影響も考えられるため、周波数を調整することで損失を低減できる場合があります。
AC損失は計算で算出することが困難なため実機での評価に加えてシミュレーション等の活用をお奨めします。
DC損失、AC損失をRedexpertで見積もりたい方は、こちらのLCの選定 ~Part1 パワーインダクターの選定~の記事内の「部品選定時の注意点3」を参考にしてください。
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