インダクター、コンデンサーは用途に合わせた部品選定が必要です。選定のために考慮が必要なポイントを解説します。
今回の内容は、Part2"インダクターの故障要因"になります。
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インダクターの故障要因
インダクターはICなどに比べて故障することが少なく、長寿命な製品ですが使い方を誤ると故障の原因となります。
インダクターの故障要因として主に以下の3つのことがあります。
1.過電流による内部巻線の断線、はんだ接続箇所の剥離
2.振動、衝撃等によるコアの亀裂などの物理的ダメージ
3.過電圧印加による内部短絡
今回はこの中で3の過電圧印加による内部短絡について解説します。
インダクターの過電圧破壊
インダクターの選定における主な注意点は” LCの選定 ~Part1 パワーインダクターの選定~”に記載しました。
この内容はほとんどの選定のケースで重要となりますが、条件によっては動作電圧の考慮が必要でこれを誤ると故障の要因ともなりえます。
インダクターの動作電圧が許容値を超えるとどうなるでしょうか。内部の絶縁材料が破壊されてしまい短絡しインダクタンス値が低下します。写真1に過電圧印加によって内部巻線が焦げた事例を示します。
写真1:過電圧による内部巻線の損傷
Wurth Elektronik社アプリケーションノートより
インダクターの動作電圧
ICやコンデンサーを使用する際は定格電圧/耐電圧をいつも確認するが、インダクターではあまり気にせず使用されているケースがあります。インダクターの動作電圧はメーカーによっても記載方法異なり、記載がないケースやカタログなどにのみ記載されているケースもあります。
記載されていなくても多くのインダクターの動作電圧は40V以上であり、それ以下で動作するアプリケーションで使用する場合は考慮しなくても問題となることはほとんどありません。ただし、それ以上の電圧が印加されるケースや小型のインダクターを使用する場合は確認する必要があります。
二つのケースで考えてみます。
例1:AC入力ラインで使用する場合
AC入力(85~265V)では整流後で約375Vになります。ここで使用する場合汎用のインダクターを使用することはできず高動作電圧対応の製品を選定する必要があります。Wurth Elektronik社の”WE-PD HVシリーズ”の7687779470の電気的特性を図1に示します。この製品では動作電圧400Vが規定されており、この仕様でも選定することができます。

図1 7687779470電気的特性
7687779470データシートより
例2:高電圧バイアス回路で使用する場合
高電圧でバイアスして使用するセンサーの場合、数10Vを印加して電流はほとんど流れないといった仕様があります。電流が小さいため小型のインダクタンスを選定できると考えられますが、ここでも動作電圧の考慮が必要です。小型のインダクターの中には動作電圧20V程度の製品も少なくありません。Wurth Elektronik社の”WE-LQSH シリーズ”の74405020100の電気的特性を図2に示します。この製品では動作電圧25Vが規定されており、これを超える電圧では使用することはできません。
図2 74405020100電気的特性
74405020100データシートより
このように高電圧動作や小型インダクターの使用を検討する場合は、動作電圧から適用可否を確認する必要があります。
規定値を超えた動作電圧で使用してしまうと、故障の原因になるため注意が必要です。
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