はじめに
スマートフォンや家電製品、車載エンターテイメントシステムなど、スマートエレクトロニクスの機能性に対する消費者の需要は尽きません。
そのため、これまでも、そしてこれからも、設計者にとってストレージデバイスの選択は非常に重要です。
これらのシステムは過去10年間で大変複雑化しており、設計者は次世代の革新的な機能や特長を提供するコードを格納するため、より高容量かつ高速の不揮発メモリーを必要としています。しかし一方で、コストを上げずに高容量化を実現することが課題となります。消費者はより多くの機能や特長を求めますが、そのためにより多くのお金を払うことは望みません。
つまり、不揮発メモリーのメーカーは、自社とユーザーの双方がコストを大幅に増加させることなく、高容量化と高速化を実現し、消費者により良いユーザーエクスペリエンスを提供できるようになることが課題となっています。
組込みシステム向けフラッシュメモリーの市場とアプリケーション
現在、すべての電子システムには何らかのフラッシュメモリーが使用されており、革新的なアプリケーションの出現により、より高性能な製品への需要が飛躍的に高まっています。特に、以下の市場やアプリケーションでは、急速に高度化が進んでおり、より高速な読出し/プログラム/消去動作、およびインスタント起動に対応できる “最新の高機能メモリーサブシステム” が必要となります。
・車載:先進運転支援システム(ADAS)、インスツルメントクラスター、プッシュボタン
・人工知能:トレーニングモデルストレージ、データベースストレージ、自動運転
・OTA (Over-the-Air): コンシューマー、車載、ゲーム
「車載分野」では、フラッシュメモリーを選択する際にスループットが非常に重要になります。
デジタルディスプレイに搭載されるインスツルメントクラスターは、ドライバーが常に総合的かつ確実に情報を得られるように設計されています。
これらのディスプレイには、瞬時に電源が入り、2D/3D画像を迅速かつ正確に表示することが求められます。
昨今、インスツルメントクラスター用にはシリアルNORフラッシュ(Octal SPIまたはQuad SPI)もしくはシリアルNORフラッシュとeMMCの併用が一般的です。しかし、こうした機能や特長はますます高度化しており、コードサイズの増加によって、より高容量が必要となり、コストも増加しています。
また、コードサイズが大きくなっても、起動時間は従来と同じか、それ以上短くする必要があります。
これは車載市場において、ユーザーがボタンを押したときに複数の画面を瞬時に表示する必要があるプッシュボタンのような機能において、非常に重要となります。
コードの更新を目的とする「OTAアプリケーション」は、柔軟性があり使い勝手がよいため、電気自動車や多くのコンシューマー機器において利用されています。これらのデバイスはすべてモバイルであり、重要なアップデートを簡単かつ効率的に受け取ることが必要です。そのため、素早い消去/プログラムが求められ、その速度が重要な要件となります。
他にも、高速動作を必要とするアプリケーションとして、「AIや顔認識」などがあります。
「AIアプリケーション」は一般的に、さまざまなトレーニングモデルを実行して決定を下し、エンドデバイスに何をすべきかを指示する必要があります。そのためには、トレーニングモデルをシステム内部に保存する必要があり、多くの場合、これらは処理を要するとても大きなモデルです。
特に自動運転の場合、極めて短時間(ミリ秒単位)で判断することが求められ、これらのモデルは非常に高いスループットのフラッシュメモリーからRAMにロードされる必要があるほか、歩行者や自動車の回避など、正確な判断が要求されます。ここでは、データスループットが絶対的に重要となり、しかも瞬時でなければなりません。
『次の記事』では、限界を迎えるNOR型とさらに進化中のNAND型フラッシュメモリーについて解説しますので、ぜひご覧ください。
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